山崎:「すみませーん。ハイボール2つ。濃いめで。
すまん、すまん。
で?なんだっけ?」
原田:「お前、声でかいんだよ。
だからぁ、俺たちが小さい頃って、町内に一人は“名物おじさん”だの“名物おばさん”だのいたよなって話し。
そんなのを上げていこうぜ。」
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山崎:「おぉ、いたな。
俺んところは“スキップ兄さん”だな」
大宮:「なに?いつもスキップしてるの?」
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山崎:「うーん…歩くフォームがさ、スローモーションのスキップみたいなんだよ。
踵をゆっくり上げて…
その歩き方で、町中を暑い日も寒い日も、朝から晩まで徘徊してるんだけどね、
毎年3年生位の男子がさ、後ろから真似したり、からかったりしてついて回るんだよ。
普段は、全く無視のお兄さんも、余りにも度が過ぎると、クルッて振り返って追いかけて来るんだ。
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フォームはそのままで、決して走らないんだけど、足が長いからさ、大股で迫ってきたら、めちゃくちゃ早いのよ。
俺、同級生の女子が呆れて見てる前を、半泣きで逃げたもんなぁ…」
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大宮:「お前がアホな小学生だったってのがよく分かったよ」
山崎:「3・4年生の男子なんて、そんなもんだろ」
原田:「他には?
そんなん何かあるだろ?」
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三隅:「俺は、“10円くれくれおばさん”ですね」
大宮:「それは日本中にいた」
三隅:「俺、一人で塾からの帰りにばったり遭遇したんっすよ。
めっちゃ怖くて、親から“パンでも買え”ってもらった100円を投げて逃げたんっすよね…
あん時のおつり、返してくれないかなぁ」
大宮:「…って言うか、日本中の10円おばさんを“100円おばさん”に昇格させたのはお前か!」
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原田:「くだらなすぎてウケるwww」
山崎:「どうした、中野?
お前も何かあるの?」
中野:「俺?
うーん…俺のは夢だからな…」
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大宮:「は?夢?
町内の名物おじさんの夢を見たの?
面白そうじゃん。
話せよ」
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中野:「うーん…
今まで誰にも話したことないし、上手く話せるか分からんぞ?」
原田:「かまわん、かまわん。
どうせくだらん飲みの席だ。
話してみろよ」
中野:「ほんと、夢だからな。オチなんてないぞ」
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「俺の実家の通り一本違うだけの、ほんと近所に、子供に人気のおっちゃんがいたんだよ。
んっと…名前なんだったかな…
何とかのおっちゃん…んー、忘れたな…
とにかく子供好きでな、毎日子供たちがそのおっちゃんちに遊びに行ってたんだ。
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だけど、そういうおっちゃんってさ、子供からは人気があるけど、親たちからは
”あそこの家にいっちゃダメ”
とか言われるじゃん。
いや、今なら分かるよ。
俺だって二人の女の子の親だしな。
得体の知れないおっさんちに、我が子が出入りしてるとか…
ゾッとするしな。
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でも、子どもの頃は、そんなん分かんないじゃん。
なんであんなに優しい人のことを悪く言うんだろう…ってさ。
で、そうなると、子供の行動パターンはいくつかに分かれると思うんだ。
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“親がダメだと言っているんだからと絶対行かないタイプ”
“親の言いつけを守っている訳ではないけど、率先して行かない。
チャンスがあれば、行っちゃうタイプ”
“誰が言おうと関係なく、欲望のままにガンガン行っちゃうタイプ”
俺は2番目な。
興味もあったし、行きたくてたまらなかったけど、きっかけがなかったんだ。
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そんな俺にもチャンス到来。
2年生の頃かな。
俺には“せっちゃん”ていう幼馴染がいたんだ。
小さい頃から、親同士も仲良くて、家族でキャンプなんかも行ってたな。
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その日も、せっちゃんと遊んでいるところに、野球帰りのクラスメート数人に会ったんだ。
んっとな…なんかジャイアンみたいな奴でさ。
いや、いじめっこって言うんじゃなくて、身体が大きくてガサツ者ってとこがね。
そのジャイアンが
“今からおっちゃんちに行くけど、お前らも来ないか?”って。
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この機会は逃せないだろ。
俺は“行く!”って即答した後、せっちゃんを見るとさ、
せっちゃんも“いいよ”って言ってくれたから、ジャイアン達について行ったんだ。
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おっちゃんちは、引き戸の玄関開けると、40センチくらいの昇り口があって、すぐに四畳半くらいの真四角な和室がある。
襖を開けると、卓袱台やテレビが置いてある居間。
奥には左右に引き戸があって、片方の襖を開けると、もう一部屋和室。
反対は磨硝子の引き戸で、板張りの台所。
分かる?
フローリングじゃなくて、板張りな。
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そこに、真っ黒…
ん?真っ白…
まぁいいや、そんな一匹の猫と住んでたんだよ」
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『おっちゃーん、おっちゃんいる?おっちゃーん』
『おぉぉ、君たちか。
いらっしゃい。おやおや今日は大人数だなぁ。
おっちゃんちに入りきれるかな。
さっ、奥の部屋も開けていいから、中にお入り。
あぁ、君と君はここによく来ているから、台所の色々を知っているだろう。
ジュースとコップをみんなに出してあげて。
ちゃんとみんなに配るんだよ』
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『おっちゃん、このお菓子も出していい?』
『もちろん。全部出しておいで。
さぁ、ジュースをもらっていない子はいないかな?
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おや…?
君たちは初めましてだね?
こんにちは、○○のおっちゃんですよ』
『…こんにちは。
ぼく、ケンジって言います』
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『…』
『…』
『…』
『せっちゃん?どうしたの?
ご挨拶しないの?
あのね、この子はせっちゃん。
いつもはちゃんとご挨拶できるし、うるさいくらい喋るんだけど…』
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『そうかそうか、ケンちゃんとせっちゃんか。
ところで、君たちはすごいな。
この猫が触らせてくれるなんて』
『そうなの?
この猫、ぼく達が入ってきた時からずっとついて来て、座ったらすぐにせっちゃんの膝に乗ったんだよ。
でも、ぼくが抱こうとしたら逃げちゃって、またせっちゃんの膝に戻って来たんだ』
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『うんうん、せっちゃんが気に入ったのかな?
でも、ケンちゃんだって、なでなで出来てるじゃないか。
スゴイことだよ。
ほら、ここに来ているお友達。
みんな毎日のように来ているけど、一度だってこの猫が触らせてくれたことなんてないんだよ。
さっ、お菓子もたくさんあるからね。
遠慮せずに食べて行きなさい』
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『あっ、せっちゃん、あのお菓子があるよ。
ほら、あれでしょ?
いっぱい食べたいのに、ママがちょびっとしか買ってくれないって言ってたの。
あんなに沢山あるよ。
ぼく、取ってきてあげようか?』
『…』
『ねぇ、せっちゃん。聞いてる?せっちゃんってば…
変なせっちゃん』
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『おっちゃん、またこの前の妖怪の話ししてよ』
『えー、妖怪の話しはその前にも聞いただろ。
今日は幽霊の話しがいいよ』
『ばか、お前幽霊の話し聞いた日、一人でトイレ行けなくて母ちゃんに怒られたって言ってたじゃん。
妖怪の話しがいいよ』
『よしよし、分かった分かった。
じゃ、今日は怖い妖怪の話しをしよう。
いいかい?始めるよ。
むかーしむかし、まだ人間と妖怪が共に暮していた頃…』
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中野:「って感じで、その日は3つ4つ怖い話をしてくれて、解散したんだ。
せっちゃんも、帰り道ではいつも通りに戻って、また明日って別れたんだよ」
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原田:「ほぉ…その家、子供にとっちゃパラダイスだな」
中野:「だろ?
日頃、親が制限するお菓子もジュースも無制限、怖い話しだって聞かせてくれる。
ほんと、天国だよ。
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で、翌日学校に行ったら、せっちゃん休みだったんだよ。
具合が悪かったから、おっちゃんちで元気なかったのかな?とか思いつつ。
ただ気になるのは、先生が何にも説明しなかったんだな。
ほら、よく担任がさ
“今日、○○さんは頭が痛いから休むと、お母さんから電話がありました”
とか言うじゃん。
あれがなかったんだけど、まぁ俺が聞き逃したのかな?くらいに思ってて。
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うち、両親共働きだったから、家に帰っても誰もいないし。
放課後、一人で帰りながら
“せっちゃん遊べないなら、今日何しようかな…”
とか考えてたんだけど…
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そこはもっちろんだよな。
もうおっちゃんとは友達になった訳だし。
せっちゃんいない今日なら、あの猫も遊んでくれるかも!とか思ってさ。
ランドセル放り投げたら、すぐおっちゃんちに行ったんだよ。
おっちゃんちは、うちのすぐ近所だったし、家に入ったのは昨日が初めてだったとはいえ、その家の前は何度も通ってたしな。
迷うはずなんてないんだけど…
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おっちゃんち、跡形もなく消えてたんだ。
引っ越しとか、取り壊しとかのレベルじゃなくて。
雑草とか腰まであって、“随分前から空地でした”って感じでさ。
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俺、しばらく呆然としてたんだけど、子供ってさ、そういう時“恐怖”より“発見”って盛り上がらない?
だから、急いでジャイアン達が野球しているであろう広場に行ったんだよ。
メンツは昨日とほぼ同じだったんだけど…
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誰もそんなおっちゃん知らないし、昨日は日が暮れるまで野球してたって言うんだ。
一瞬“俺、いじめられてる?”って思っちゃったけど、そんな雰囲気もない。
そこで、すぐ走ってせっちゃんちに行ったんだ。
せっちゃんなら嘘なんかつかない!って。
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何の病気で学校休んだのか分からないけど、俺ならおばちゃんも会わせてくれるって思って。
玄関出てきたおばちゃんに
“せっちゃんにちょっとだけ会わせて下さい”
って言いながら、靴を脱ごうとしたらさ…
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“僕、だれ?
おうち間違ってない?
うちにはせっちゃんなんて子、いないわよ”
ってさ。
いつもの優しい感じで言うんだよ。
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俺、怖くなっちゃって。
おばちゃんがせっちゃんに何かしたんだ!って思って、すぐ逃げたんだよ。
その時に、チラッと玄関先を見たら、いつも置いてあるせっちゃんの自転車がなかったんだ。
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家に帰って、せっちゃんと写ってると記憶のあるアルバム全部出したけど…
一枚もせっちゃん写ってなかったんだよな。
ただ、一つ不自然なのは…
普通さ、バックによっぽどの何かがない限り、被写体の俺は真ん中にするものだろ?
だけど、どの写真も微妙にずれてるんだよ。
隣に誰かいたら、ばっちり!って感じに。
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でもまぁ、俺のそんな非現実な話より、親父の写真の腕前が悪かったんだと思う方が自然だろ?
その後、クラスの誰もせっちゃんの名前だす奴なんかいなかったしな」
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原田:「なるほどな。
それで夢の話しか。
それにしても、リアルな夢だな」
中野:「まぁな。
家とか未だに鮮明に覚えてるもんな」
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山崎:「……
竹田のおっちゃん…」
原田:「は?どうした?」
中野:「………あっ、そうだよ。竹田のおっちゃんだよ。
あぁ、思い出した、スッキリしたよ。
…え?なんで山崎がおっちゃん知ってんの?」
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山崎:「いや、それがさ。
話し聞くまで、ちょっとの欠片も覚えてなかったんだけど、
中野の話しを聞いてるうちに、段々思い出してきて。
俺のとこにもいたよ。
竹田のおっちゃん。
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そのおっちゃんって、ニット帽…じゃないけど、どんぐりの帽子みたいに、すっぽり被れる帽子をいつも被ってなかった?
それに紐ネクタイっていうの?
ブローチみたいなのに、紐みたいなネクタイ通してる…
そんなのいつも付けてたろ?」
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中野:「そうそう。
それ竹田のおっちゃんだよ。
ん?どういう事?
俺の夢の話だぞ?
あれ?話したことあった?」
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大宮:「あの…さ…
実は俺も竹田のおっちゃん知ってるんだよな。
知ってるって言うか、今思い出した。
めちゃめちゃ鮮明に。
“記憶の扉が開かれたぁ”って感じで。」
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山崎:「そうそう、俺も。
途中から自分の思い出話されてるみたいな感覚でいたんだよ」
大宮:「だよな?扉がパッカーンと。
……それと…
俺のとこには…
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せっちゃん…もいた」
「「「はぁ???」」」
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原田:「…大宮、それはダメだって。
聞いてて分かるだろう?
中野は夢だって思い込もうとしてるだけで、せっちゃんは中野の初恋だぞ。
いくらお前でも、それは冗談が過ぎるぞ」
大宮:「違う、違うって。
さすがの俺でも、そんな質の悪い冗談は言わないって。
本当にいたんだよ、せっちゃん」
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原田:「じゃ、特徴言ってみろよ。
鮮明に思い出したんだろ?」
大宮:「思い出してるよ。
何なら、今朝の会議よりばっちり覚えてるよ」
原田:「それはそれで問題大ありなんだよ」
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大宮:「ん~…特徴ってなぁ…
あっ、スカート。
黄色地にチェックのスカートで、そのスカートと同じ生地の吊りがついてて…
ほら、“ちびまるこちゃん”が着てるような。
分かる?」
原田:「あぁ、はいはい。
いや、分かるけどさ。
あの頃の女子は、みんなあんなの着てただろ」
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大宮:「そのスカートにボタンが付いてたんだ。
キラキラ宝石みたいなの。
せっちゃんは、その宝石みたいなスカートのボタンと、お揃いの髪留めしててさ。
いっつもそこに遊びに来てる女子が
“いいな、いいな”
って言ってたんだよ。
女子ってあんな小さいモンまで気づくのかぁって、関心してたんだ。
どうよ?」
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中野:「せっちゃんだ…」
原田:「まじで!?」
中野:「そのスカートと髪留め、せっちゃんのお母さんの手作りなんだよ。
確かに、クラスでも女子たちから羨ましがられていたな…
それに、せっちゃんと最後にあった日…
おっちゃんちに行った日もその服着てた…」
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三隅:「あのぉ…俺もいいですか?」
山崎:「は?良い訳ないだろ」
原田:「なにお前まで入って来ようとしてんの?」
三隅:「いやいや、俺だけアタリが強いっす。
俺のところにも、おっちゃんとせっちゃんいました。」
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原田:「はぁ…じゃぁほれ、特徴は?」
三隅:「はい…うーん…スカートはもう出ちゃったし…
確かに、あのスカートと髪留めは、めちゃめちゃ印象的でしたもんね」
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原田:「ほれ特徴だよ。
二番煎じはダメだからな」
三隅:「分かってますって。
目の下…目じりって言うんですか?この頬っぺたの上の方。
そこに斜めに並んで、3つのほくろがありました。
少し前、若い子が付けぼくろしてるみたいな可愛い感じの」
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中・大:「「…せっちゃんだ…」」
原田:「せっちゃんなのかよ…」
三隅:「それと…
…俺んとこには”だいちゃん”っていう男の子もいました」
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原田:「はぁ!?
お前、なに登場人物増やしてんだよ。」
三隅:「いやいや、マジで。
年は、俺やせっちゃんと同じくらいで。
双子なのかな?とか。
もっと言うなら、この二人、何で同じ小学校じゃないのかな?とか不思議だったんっすよ。
今みたいに“私立の小学校”とか多くあった訳ではないし、そんな存在、俺知らなかったし…」
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原田:「じゃ、なにか?
その竹田のおっちゃんは、まず仙台の山崎の所に行って、長崎の中野んとこでせっちゃん拐って、山口の大宮んとこ行って、どっかでだいちゃん拐って、名古屋の三隅の所に行ったっての?
家もそのままに?
なんだよ、それ?
もうその竹田のおっちゃんが妖怪じゃん」
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「「「…………」」」
原田:「いやいや、やっぱり信じられないって。
お前ら、俺と村本をはめようとしてるだろ?」
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山崎:「なんでだよ。
もともと、この話をし始めたのはお前だろ?」
原田:「でも信じられんだろ…
お前ら、中野の話をちょっと聞いただけで、30年くらい前の話を思い出したって言ってるんだろ?
じゃ、翌日に話を聞いたせっちゃんのお母さんやジャイアンは?
せっちゃんにスカート作ったりするほど、良い母親だったんだろ?
翌日に名前出されて、思い出さないわけないだろ?」
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大宮:「まぁ…確かにそれは言えるか…」
三隅:「それなんですけど…
俺、一つ心当たりがあるんですけど、いいですか?」
原田:「またお前かよ?
お前は一発一発でかいんだよ。
あぁもう!なんだよ?」
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三隅:「皆さん、記憶の扉が…と仰ってたじゃないですか?」
大野:「おうおう。話し聞いてる内に“パッカーン”とな」
三隅:「俺も正にそんな感じで思い出したんですけど…
俺の記憶の扉の鍵って言うんですかね。
きっかけは…“猫”だったんですよ」
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中野:「猫?あの猫?」
三隅:「そうです。
その猫って、全身は雪のように真っ白で。
片耳…んっと、左耳だけが真っ黒で。
両目の色がガラス玉のような、緑色じゃなかったです?」
山崎:「あっ、そうそう。
なんか、おっちゃんちには不似合いな高級感ある外国の猫って感じのな。」
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三隅:「そうです、そうです。
どうですか?
皆さん、その猫になつかれてませんでした?
俺、めちゃくちゃなつかれてたんですよ。その猫に。
いっつも遊びに行くと、俺の隣に来て…
そこに来てる女子が触ろうとすると、スルッと逃げるんですよ。
で、また俺の横に戻って来る…
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俺、動物苦手なんで、触ろうとはしなかったんですけどね。
余りにも俺の所に来るんで、勇気だして抱いてみようとしたんですよ。
そしたら…
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せっちゃんに
“抱いちゃダメ!”
ってでっかい声で怒鳴られて…
もう俺、半泣きですよ。
振り絞った勇気だったのに…
そしたら、せっちゃんが…
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“帰れなくなっちゃうよ”
って言ったんですよね。
多分、それ以降のおっちゃんちの思い出はないと思います。
つまり…その次の日には、俺たちの町や記憶から消えたんだと思います」
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原田:「はっ?じゃなに?
おっちゃんの記憶のない俺や本村の所にも、おっちゃん来てはいたけど、猫に気に入られなかったから、今思い出せないだけってことか?」
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三隅:「いや…真相は分からないっすけど…」
大宮:「ダメだ…
酔っぱらった脳みそでは理解できん」
山崎:「シラフでも無理だろ、こんな話し」
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本村:「あの…俺からもいいっすか?」
原田:「なに?
まさかお前まで思い出したとか言い出すの?」
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本村:「いえいえ、おっちゃんと会ってないのか、猫に気に入られなかったのかは分かりませんが、
俺は原田さんと一緒です。
そんなおっちゃん知らないです。
ただ一つ、気になることが…
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皆さんは、大学出の同期入社ですから、年齢も同じですよね?
一年を通してと考えれば、不可能ではないと思うんですが…
三隅、お前中野さんたちと何歳違うんだよ?
お前、俺より大分下だろ?」
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三隅:「あっ、俺、中野さんたちとちょうど10歳違いっす。
この前の飲み会で、その話ししたんで…
あれ?」
本村:「な?
中野さんところから消えた時のせっちゃんが8歳として、三隅のところに現れるなら
せっちゃん18歳になってるはずなんですよ。
“ちびまるこちゃん”のスカートを履く歳ではないはずなんですよ」
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中野:「じゃあ…せっちゃんは…
どこに連れて行かれて、どこを彷徨ってるんだよ…」
作者mami-2
一緒に居酒屋で飲んでいる気持ちになっていただけたら…と、会話のみのお話しに仕上げてみました。
「かえって読みにくかったわ!」などありましたら、申し訳ありません。
今回のお話しは“昭和40~50年初め”を舞台としております。
お若い方は、想像しづらかったかも…
コメントなどいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。