中編5
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祖母

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庭先で鳥がさえずる

窓から少しずつ暖かい光が差し込んでくる

だがまだ空気は少し肌寒い

時刻は午前5時

老婆は目を覚ました

「シズさん、シズさん。ごはんはまだですか?」

リビングから老婆を呼ぶ声が聞こえる

老婆は重たい腰をあげ明るい声で言う

「早いですよ、トシさん。少し待ってくださいね」

そして老婆はキッチンへ向かい、昨晩作った朝食を温めた

温めた朝食を小さめ食器に少し多めに盛った

老婆は1膳をリビングのテーブルに置き、

もう一膳を仏壇お供えし、手を合わせた

仏壇には、5年前に亡くなった夫の遺影が飾ってある

そして老婆は今日も1人で朝食を食べるのだった

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俺の祖母は5年前に突然の脳梗塞で祖父を亡くして以来1人で暮らしている

祖母は82歳だと言うのに今も元気でよく庭先で園芸をしている

祖父が亡くなった時は、父が一緒暮らそうかと提案したのだが祖母は、

「息子の世話んなって老いぼれてくよりかは、1人で元気に生きた方がマシですよ

ただ、孫はたまに顔出しに来なさいよ」

と言って断った

この一言があるため俺は今年高校になったのだが、未だによく祖母の家に泊まりに行く

祖母は何度も言うように1人暮らしなのだが、全くそのような感じがしない

と言うより、祖父が生きていた頃となんら変わらない

この疑問は初めて泊まりに行った時に解けた

まず、祖母の家は祖父の気配がビンビンする

二階でゲームをしている時、後ろに誰かの気配を感じた

俺はすぐに振り返った

だがそこには誰もいない

そんなことがよくあるのだ

次に、トイレだ

俺がトイレの用をたしてる時にコンコンとドアを叩く音が聞こえるのだが、祖母かと思っていそいで出るのだが祖母は出かけており家には誰もいなかった

他にもトイレの水を流す音がよく聞こえるのだが、いくら待っても誰も出てこない

また、トイレの鍵が閉まってて入れないなんてこともよくある

これには随分迷惑した

頻尿だった祖父らしい

そして次に、飯だ

俺が泊まりにきたのでそっちに気をとられ、祖母が仏壇にお供えをするのを忘れた時があった

最初、俺と祖母はそれに気づかずに一緒に夕飯を食べようとした時、

仏壇の方からぱたん と音がした

祖父の遺影が倒れたようだ

慌てて立て直すと遺影の中の祖父は少し不機嫌そうだった

ゾッとした

そうしていると祖母が

「ごめんなさいね。つい忘れちゃって」

と言いながらお供えを持ってきた

その日、夕飯を終えリビングでゆっくりしてる時に俺は祖母にそっと聞いてみた

俺「ねぇ、じいちゃんいない?」

祖母「おまえも気づいたかい。」

俺「さすがに気付くよ!!この家いろいろありすぎるもん!!」

祖母「ははっ、ごめんなさいねぇ」

俺「ばあちゃん、怖くないの?」

祖母「トシさんですもの。怖いことありますか。それにね、あの人ずいぶん昔に言ったのよ。プロポーズの時に、、

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夜も少しふけた頃、少し高めのレストランで少しいい服を着た祖父

顔は緊張で強張っている

それに対して立派な着物を着た祖母は強張った祖父の顔を見てニコニコしている

一通り料理を食べ終え、話がひと段落したところで

祖父が手元のワインをぐっと一気に飲み込み言った

「僕はあなたの側にずっといます」

祖母はクスッ笑い言った

「なんですかそれは。怖いですよ」

祖父はあたふたしながら説明し出した

祖母はそれを見てさらに笑った

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、、、トシさんはあの時の約束をまだ守ってるのよ。

私が逝くまでね。」

そう言う祖母の顔は少し寂しそうだった

そして次の瞬間またぱたんと音がした

またもや遺影が倒れたらしい

「あらまぁ、昔の話をしたもんだから怒られちゃったわね」

そう言いながら祖母は祖父の遺影を立て直す

今度の遺影の祖父は少し顔を赤くしていた

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ある日、祖母が倒れた

何回電話してもとらない父が不安になり、祖母の家を訪ねるとそこには祖母が倒れていた

慌てた父が救急車を呼ぼうとすると祖母が腕を掴み呼ぶなと訴えた

なんでも、これが寿命なんだから早く祖父と一緒に逝きたいと言ってきたらしい

父は気迫におされ結局布団で寝かせてそっとしておくことにしたらしい

母はこんなことを言った

「お義父さんが待ちきれなくなったんだわ!」

俺はすぐに言い返した

「じいちゃんはそんなことしない!!」

しかし、祖父の遺影を見に行くと顔が少し険しかった

俺は少し不安になった

祖母はずっと寝込んでいる

俺は仏壇に手を合わせ必死に願った

(じいちゃん待ってよ!もうちょっとでいいから!ばあちゃんともっと一緒に生きたい!!)

あとから聞いた話なのだが、俺はこのとき終始半泣きだったらしい

その後、両親は明日に仕事がひかえていたので先に帰宅した

俺は翌日学校休むことにし、泊まり込みで祖母の看病をすることにした

祖母は少し苦しそうな顔をしている

祖母の手を掴みこれまでのことを話した

気づいたら俺は号泣していた

「ばあちゃん、、、」

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鳥のさえずりが聞こえる

朝だ!!

いつの間にか俺は寝ていた

すぐさま祖母の顔を見ると少し安らかそうに寝ていた

そして、祖母の隣に祖父がいた

祖父は俺と目があうやいなやいそいで消えてった

仏壇を見ると遺影の祖父は少し疲れたようだった

俺は仏壇に手を合わせて言った

「お疲れ様。ありがとね!じいちゃん!

今度じいちゃんが好きだった団子たらふく買ってくるよ」

そうしていると祖母が起きた

「おはようさん。迷惑かけたねぇ」

そう言って笑いかけてきた

俺はあえて多くを語らず、

「元気になってよかったよ」

とだけ言った

そして朝食をさっと作り食卓と仏壇に並べた

『いただきます』

いつもは賑やかな食卓に沈黙が流れている

だがそれは、祖母がそっと破った

「倒れたあとね、ずっとトシさんと一緒にいたのよ。いろんなこと話したわ。本当に幸せだったわ。でもね、話していたら後ろからあなたの声が聞こえてきたの。もっとばあちゃんと生きたいんだって叫んでたでしょ。そしたらトシさんは、行って来なさい、僕はずっと待ってるからって言って手を降ってくれたわ。少し寂しかったけどね、あなたが待ってると思うといてもたってもいられなくて戻ってきちゃったわ。もう!私の余生、充実させなさいよ」

祖母は目には涙を浮かべながら笑いかけてきた

俺はまたもや号泣し祖母に抱きついた

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10年後、祖母は老衰で亡くなった

92歳だった

祖母の最後はとても豊かだったらしい

いつも通りの夜を過ごし朝には息を引き取っていたという

棺桶の中の祖母の顔はとても幸せそうな顔をしていた

優しい笑顔で笑う祖母の遺影を仏壇に置いたときは俺はあることに気づいた

祖父も祖母に負けないくらい優しい笑顔を浮かべていた

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立派なドレスを着た淑女は軽い足取りで歩いて行く

その先には少し高めの服を着た紳士が待っていた

「待ちました?」

「だいぶね。でも、幸せそうな君を見れたからいいさ」

「そんなこと言って、少しは妬いてたんじゃないの?」

「!!!

そ、そんなことあるわけないだろう!!」

「顔赤くなってますよ」

「さっ!行くぞ!!」

「まぁまぁ」

2人は手をしっかり繋ぎ、仲良く歩いて逝った

END

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わたし、ホラーサイトとかで感動系ってほんっと大嫌いなはずだったのに…泣いちゃいましたあ(´Д` )最高でした!ジーちゃんみたいな男と結婚したいな〜

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流れ人さま
とてもいいお話で胸が暖かくなり、そしてじわーっと涙が出ました。こんな夫婦のかたち、とても理想的で素敵ですね。いいお話を有り難うございました。

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何て良いお話(´っω・`。)

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