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中編3
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裁き〜流シリーズ〜

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私の名前は流(ナガレ)。呪い代行屋である。

呪い代行屋であるから、当然私の元にやってくるのは自分の代わりに誰かを呪ってほしいという依頼者が多い。

その日私のもとにやってきた依頼者の事を私は一生忘れる事はないだろう。

その依頼者は陰のある病弱そうな青年だった。

『君が呪い代行屋かな?』

「ええ、私が呪い代行屋です。ここに来られたということは、誰か呪ってほしい人がいるのですね?」

『いや、呪ってほしい訳ではないんだ。』

私のところへ来て、呪ってほしい人間がいる訳ではないとはどういうことだろう

「と、言いますと?」

そう私が尋ねると、

『復讐したい奴がいるんだ。』

と彼は答えた

「なるほど。詳しく聞かせていただけますか?」

私は事情を聞かせてもらうことにした。

『ああ、実はね…。』

青年の名は山下 治というらしい、彼は幼い頃から体が弱く、入退院を繰り返していたとのことだ。

山下青年は両親、姉、自分の4人家族だったらしい。彼が家に居られる時間は長くはなかったが、とても仲の良い家族で幸せな生活を送っていた。だが、その幸せはある日、突然奪われることになる。彼の家に強盗が押し入ったのだ。家族は彼を残し皆強盗に殺された。当時幼かった彼は、テーブルの下に隠れて、強盗に見つからず助かったらしい。

その強盗は間も無く逮捕され、懲役20年の判決が下され、先日出所したらしい。

『お願いだ。今しかないんだ。僕が自由に動けるうちに家族の仇を…。』

そう言った山下青年の声は震えていた。

「なるほど、お話はわかりました。しかし、貴方は先ほど呪ってほしい訳ではないとおっしゃいましたね?では具体的にはどうしたいのでしょう?」

その私の問いに対して、彼は

『僕はこの手で直接復讐がしたいんだ。だから呪殺じゃなく、僕が直接犯人に手を下せるようにしてほしいんだ。できるかな?』

と答えた。

「なるほど。そうですね、その犯人が身につけていた物と貴方が普段から身につけている物があれば、できるかもしれません。」

私がそう言うと

『それなら、ここに犯人が着ていた服のボタンがある。多分僕の父ともみあった時に取れたものだ。あと僕の持ち物は、このハンカチでいいかな?両親からのプレゼントで、いつも持ち歩いてる。』

そう言って彼は、一つのボタンとハンカチを出した。

「ええ、それで問題ありません。では少し失礼します。」

そう言って私はボタンとハンカチに術を施した。

「犯人のボタンと貴方のハンカチの因縁を結びました。この二つを持ち歩いていれば近いうちに犯人が貴方の前に現れるはずです。」

そう言って私は山下青年にボタンとハンカチを返した。

「では呪いが成就したらまたお越しください。」

『わかった。ありがとう。』

そう言って彼は去っていった。

1ヶ月後、山下青年が再び私のもとにやってきた。

『ありがとう、君のおかげで家族の仇を打つことができた。』

彼はそう私に告げた。

「そうですか。ではお代の方ですが、貴方の人並外れた洞察力をいただきます。こちらの契約書にサインを。」

私がそう言って契約書を出すと、彼はサインをし

『これでいいのかな。』

と言った。

「ええ、結構です。ところで、山下さん、貴方はこれからどうなさるおつもりですか?」

私が問うと

『自首するつもりだよ。どんな理由であれ、人を一人殺してしまったからね。家族の仇は討てたから、どんな結果であれ受け入れるよ。』

そう彼は答えた。

「それがいいでしょう。」

私はそう答える。

『ありがとう。えっと…。』

「流です。」

彼が私をなんと呼べばいいのか迷っていることを察した私はそう答えた。

『ありがとう、流さん。』

山下青年は、そういって去っていった。

「家族か…。」

彼が去ったあと私はそう呟いていた。もう家族にはずっとあっていない。私の兄は今頃どこで何をしているのだろう。

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