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中編4
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ひな人形

先日、祖父(母方)の七回忌があり、先祖代々お世話になっているお寺へ行ってきました。お寺に着くとすぐにご住職から声をかけられました。このご住職には昔お世話になったことがあり、その話を久しぶりにし、当時の事を思い出しので、ちょっと時期はずれではありますが、昔話をここに書かせて頂きたいと思います。

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あれは、私がまだ就学前(何歳かまでは定かではないです)、実家ではもうすぐ雛祭りという事で、雛人形が飾ってありました。

結構豪華な雛人形で、たしか5段飾りだった思います。ただ、私の家は狭く、私と父が寝る部屋に雛人形は飾られていました。

私は雛人形が飾られるのがとても嫌でした。暗闇で見るのが怖い・・・。というのもありましたが、飾られて暫くすると変な夢を見るようになるからです。

小さい時だったので断片的にしか覚えていませんが、夢の中で「これは夢だ」と分かり、場所も実家のままで、隣では父が寝ており、他の部屋に行けば、母、兄姉が寝ています。

ただ周りは灰色で、時間が止まっているかのようで、部屋の扉は開けられるが、それ以外の物を動かそうとしてもピクリとも動きません。

いくら目覚めようと頑張っても、どうする事も出来ず、途方に暮れるしかありませんでした。

その途方に暮れている場所は、何故かいつも雛人形の前でした。

そうしていると、「フフフ」と笑い声が聞こえたり、「お話ししましょう」と声掛けられる事があり、気が付くと目が覚めているのです。

そんな夢が続いたある日、私はどうしても耐えられなくなり、夢から覚めようと、玄関のドアを開けようとしたり、窓を開けようとしましたが、ピクリともせず、いつも雛人形の前で聞こえている声が、部屋全体で聞こえてきたので、私もパニックを起こしてしまい、「ここしかない」とトイレへ逃げ込みました。

家のトイレは2か所あり、一か所は水洗トイレでしたが、もう一か所は古い家でしたので、汲み取り式のもので、私は汲み取り式トイレの中に飛び込みました。

その瞬間

「ダメ!!」という声が頭の中に響き、目が覚めました。

目が覚めると、目の前にお雛様が転がっていました・・・。

驚いた私は、すぐに隣で寝ている父親を起し、状況を説明すると最初は「何言ってるんだ」みたいな顔をしていた父でしたが、お雛様以外まったく動いていないのを見て、母親を起して話してくれました。

母親が田舎の祖母に電話でその事を話すと、「そうかい、そうかい・・・。」と電話越しで祖母が泣いていたそうです。

家にある雛人形はそもそも、祖母の親戚にあった物で、その家の女の子が不慮の事故で亡くなってしまい、家にあると思い出してしまい辛く、丁度、私の姉が生まれたので、嫌でなければ貰ってくれないかという話だったそうです。

そして、その女の子には生まれたばかりの弟がおり、「この子が話せるようになったら、いっぱいお喋りするだ」と、とても楽しみにしていたそうです。

ただ、弟が話せるようになる前に亡くなってしまい、その代り私と話をしたかったのではないかと、祖母が話してくれました。

その後、お盆で田舎に帰る際、お雛様を持ってお寺にも行きました。ご住職に見てもらうと、微かに力を感じるが、悪い感じではないとの事でした。

ご住職にこれまでの事を話すと、「夢の中で何か悪さはされなかっただろ」言われました。

たしかに夢から覚められないこと以外では、「話しましょう」と声をかけられるぐらいであった。

その後親を交えて話していると、まだ私が喃語等を話していた時は、雛人形の前で「だー、だー」等声を出していた事が多かったそうです。

大きくなり、一対一で話せなくなってしまったから、夢で話そうとしたのではないかという事でした。

また夢から覚める際、正しい方法で目覚めないと、危険だとご住職から言われました。私がトイレに飛び降りたのは危ない方法だといい、女の子が力を使い、夢から戻したから、もう人形に力が残っていなかったそうです。

パニックになっている私を笑ったのも、「弟へのちょっかいみたいなものです。」っと住職は笑っていました。

飾ってあげるのが一番の供養と言われ、その後も我が家では飾りつづけ、今は姪っ子がその雛人形を使っています。

その後、何度か話しかけましたが、笑い声は聞こえず。灰色の夢に行く事もなくなりました。

今では、もう少し、もう一人のお姉ちゃんと話したかったと思っています。

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