僕の大学はズルい。
1・2年の生徒は必修科目を1限に受けるよう上手く出来ていて、ゆっくり寝たくても寝れない…。
そして歩いて大学に通うとなれば本当に朝が早い。
まあ今頑張れば来年が楽になるから頑張るか…。
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なんとか眠気と戦いながら午前の科目を終わらせ、僕の基本的定位置である食堂の隅で昼食を食べながら、別大学の友人とLI●Eをしていた。
「おーい」
ぼくに声をかけて近づいてくる男子はサークル仲間だった。
「今日はサークルくる?語ろうぜえ~」
「やだよ。僕あんまりお酒の場が好きじゃないから健全そうなサークルに入ったのに、蓋をあけてみれば結局飲みサーだったじゃないか。
それに今月来月お金がないんだ…。しばらくは活動は不参加でお願いするよ。」
「おうおう、つれないねえ。」
友人との付き合いで入ってるだけのサークルで、出費なんて考えられない。
僕は冷たく突き放した。
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とは言ってもコイツの誘いはしつこい。
諦めずに夕方も絶対に誘ってくるだろうと踏んで、僕は講義が終わり次第足早に大学を後にした。
「よし、運動不足解消の為と思って頑張るか。」
昨日と違って晴れ渡った空を見上げ、僕は道のりを歩きだした。
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僕のアパートへの帰り道は何通りかあるが、どれも距離としてはたいして変わらない。
そんな中で、僕は昨日と同じ帰り道を選んだ。
理由はひとつ
あの古物店の前を通りたかったからだ。
中に入ろうとか、なにかしようとか考えてた訳じゃない。
なんとなく、あの青い薔薇の印象的なお店を見てから帰りたいと思っていたからだった。
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お店が見えてくると、扉の前に一つの人影が見えた。
(ん?あの人は…店主さん?)
店主さんは箒を持ち、店先の掃除をしていた。
そして、僕の視線に気が付いたのか、こちらを振り返り目が合う。
彼女は昨日と同じように静かに微笑むと、僕に会釈をした。
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そのまま会釈して去るのもなんだかと思い、道をそれて店主さんの元へと行く。
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。ふふふ、今日はもうお帰りですか?」
「はい、遊ぶお金もないので家に帰って大人しくしていようと…。」
こんな美人と世間話ができるだなんて、リア充みたいだ…。
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店主さんが僕をじっと見つめる。
僕はその見通すような目と、ズボンのポケットに入っているスマホの感覚に、チクリとした罪悪感を覚えた。
まっすぐ見返すことができず、軽く笑いながら目をそらす。
店主さんは箒へ視線を戻し、手を動かし始めた。
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「そういえば、昨日お貸ししたスマホは問題ないですか?」
先ほどの罪悪感のせいか、心臓がドクンと大きくなった気がした。
「あ…、はい。大丈夫でした。おかげで無事レポートもできて…。」
「そうですか、それなら良かったです。」
店主さんの笑顔に、僕はぎこちなく笑い返すとポケットのスマホが見えないように後ずさった。
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「じゃ、じゃあ僕これで!さようなら!」
「はい、帰り道にはお気を付け下さい。」
何かに逃げるように、その場を駆け足で去っていく僕を店主さんは見送ってくれていた。
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箒の手を止め、走り去る背中を見つめる店主の元へ1匹の猫が寄る。
「あれ…昨日の言ってた奴?」
店主に話しかける声は、まぎれもないその猫だった。
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「ええ、そうですよ。」
「約束したんだっけ?守ってるか念を押さなくて良かったのか?」
「構いません、一目瞭然ですから。
だから私は問題ないか聞いたではありませんか。」
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猫がため息をつく。
「その性格、損するぜ?…客の方が。」
「ふふふ、そんなことありませんよ。」
店主は掃除を再開しながら答え、そして静かにつぶやいた。
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「…。
………まずはひとつ。」
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⑤へつづく
作者TYA
③のつづきです。
できれば毎日投稿しようと決めたのですが既に1日サボってます(笑)
夜勤なので許してください。
小分けにするかわりに投稿頻度を毎日にすることで、気軽に(飲み屋でいうメインのつまみの前のお通しのように)読んでもらえるかと思ってやってます。
怖話常連作者様の作品という番組やドラマの、間に流れるCMのような感覚で読んでもらえれば本望です。
ソフトホラーなのでガチ物がいいという方には物足りないかもしれません。三度目です。
(メンタル豆腐です。アンチ嫌いなので防衛線をめちゃくちゃはる人間です。)