帰宅する頃には日も山に沈んで雨は小ぶりとなり、先ほどまでの周囲の喧騒も郊外のアパートに着けば静かなものだった。
建物と建物間にひっそりと構える小さな2階建てのアパート。
1階手前の和室六畳一間が僕の部屋だ。
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「足が棒の様だ…。運動不足が祟ったな…。」
引きずるように部屋にはいり部屋の電気を付けると、敷きっぱなしの布団に倒れこむように腰を下ろした。
一呼吸おいて、2台のスマホを取り出し見つめる。
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SIMカードを割れた携帯から取り出し、古物店で手に入れたスマホに差し込もうとしたとき、ふと店主の約束が頭をよぎった。
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(いわくつきか…。でも詳しくは教えてもらえなかったし、返すときに本体データの履歴をリセットすればバレないよね!)
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僕は躊躇うことなくSIMカードを差込み、電源ボタンを長押しする。
スマホは、なんの問題もなく立ちあがった。
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「電波も3本ちゃんと立ってるし…、電話帳やSDカードのデータも壊れてない…と。なんだ、普通に使えるじゃないか。」
警戒して損した。あの店主さん、美人だけどちょっと変な人だっなぁ。
スマホに充電器を差し布団の上に寝そべりながら、そんなことを考えていた。
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shake
ヴーッ ヴーッ
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「うわっ!」
突然の振動音に僕は飛び起きると、新しい方のスマホが鳴っている。
おそるおそる画面を覗き込むと…
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…母親からの電話だった。
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(なんだ…び、びっくりしたなぁ。)
安堵の溜息を洩らしながら応答ボタンをおす。
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「はい、もしも…」
「ああもしもし?やっと繋がったよ。ずっと電源落としてたでしょ。まったく。」
どうやら今日に限って親から日中電話があったみたいだ。
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「ごめん、スマホ壊しちゃって。ついさっき代替機にしたとこだったんだ。」
「そうなの?まったく、そんな金あるなら光熱費払いなさい!先月の電気代がなんでこんなに高いの?家も裕福じゃないのよ?」
やばい…一晩中電気つけっぱなしで寝ちゃう日がけっこうあったかも…
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「ごめんって。今月カツカツなんだ。気を付けるから許してよ。それにこの代替機だって500円だったからお金があって払ったんじゃないし…。」
「500円?あんたそれ大丈夫なの?」
「青薔薇古物店っていうお店で売ってた中古品を1か月だけ借りたんだ。まったく問題なく動くよ。」
「そう。とにかく電気代は来月の仕送りから少し引くからね!これ以上無駄遣いしたら光熱費は今後自分で払いなさい。」
「…気を付ける。」
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通話が終わり、また仰向けになり目を閉じる。
(来月の仕送り少ないのか…。自業自得とはいえキツいなぁ…)
時間は19時になろうとしていた。
空腹ではあったが何よりも疲労感が勝り、僕はそのままうつらうつらと夢の世界へと落ちていった。
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~~~
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肌寒さを感じ目を覚ますと、窓の外は真っ暗になっていた。
「…やば、怒られたそばから電気つけっぱなしで寝てた。」
今何時なのだろう…。
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時間を確認するために、スマホへ手を伸ばすとスマホの着信ランプが点滅していた。
「ん?メールがきてる。」
スマホアプリによるチャットが主流のこの時代で、メールでやりとりする友人などいない。
迷惑メールかなにかかと、メールを開いてみる。
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「シリョウヲテンプシマシタ。
ゴカクニンノホドヨロシクオネガイシマス。」
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資料?添付フォルダを見てみる。
中身は一面真っ黒な画像が1枚あるだけだった。
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「…なんだこれ?」
眠気と空腹で頭が働かない。どうせ新手の迷惑メールの一種だろう。
カップ麺でも食べてシャワー浴びてもう一度寝よう…明日も1限から講義なのだから…。
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僕はスマホを布団に置き、台所へと向かった。
スマホのホーム画面の時間は、0時34分を表示していた。
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④へつづく
作者TYA
②のつづきです。
電気つけっぱなしの外出・就寝は控えましょう。
家計に大打撃です。
ちなみに一人暮らしで今現在一番出費が痛いのは食費です(おい)
花見酒の春(宅飲み)、甘味の夏(アイス最高)、食欲の秋(もうご飯が旨い)、味覚の冬(御節万歳)
年中無休で食が進みます(笑)