短編1
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防空壕

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母から後に聞いた話です。

幼い頃、家の縁側が私の遊び場でした。

夏の夕暮れ時母が夕飯の準備している音を背に

茜色に染まる空を見ながらおままごとをしていました。

『お母さん、誰かいる』

キッチンに居た母親に急に話し掛けたそうです。

『どんな人~?』

普段からお昼寝の際に天井を指差して『真っ白なおじいちゃんが居るよ』とか壺の中に顔を突っ込み話し掛けてしまうような子供だったそうで母は気にも止めてなかったそうですが…。

『血を流したお兄ちゃんが立ってるよ』

あまりにもしつこく話し掛けて来る娘に渋々夕飯作りを中断し縁側に来てくれました。

『なぁんにもいないよ?』

『こうやってね、消えてっちゃった…』

その時私がしたポーズはまるで…敬礼だったそうです。

母は恐怖を感じカーテンを勢い良く閉めると私をキッチンに連れて行ったそうです。

それから月日が流れ近くに住むおばあちゃんの家を訪ねた時のこと。

おばあちゃんにそんな話をしてみると…。

『あぁ、それは日本兵だろうねぇ。だって稲荷ちゃんの家の下には防空壕があるから』

話を理解出来る歳になっていたので流石にぞくっと来ました。

今では幼い頃の話でその時の状況は思い出せませんがそれが人生で初めて私が霊を見た瞬間でした。

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