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中編7
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香織の話①

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今回は以前お書きした香織について書きたいと思います。

6年前の話ですが未だに忘れられません。

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初めて出会ったのは町のメンタルクリニックの喫煙所でした。私はというと重度不眠症として当時お薬をいただいておりました。(後に先天性だと分かりましたが。)

香織はタバコを吸って考え事をしている私に突然

「お姉さん美人っすね、幾つですか?」

と話しかけてきました。その喫煙所はメンタルクリニックに通う喫煙者患者様の井戸端会議の場のようになっており、皆さんそこで類友を見付けては診察待ちの間話に花を咲かせていました。

幼く見える香織に話しかけられて、随分若い子も来ているのだな...と思いつつ

「23ですよ。」

とお答え致しました。なんと香織も同い年でした。

ただそれだけの会話であったのに、香織は私の連絡先を聞いてきたので、アドレスだけ交換しました。

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その後何度かメッセージのやり取りをしていて、この子は優しいから心を病んでしまうタイプなのだな、と思い出来る限り相談に乗っていました。

しかし香織は依存症と診断を受けており、その事を知らず励まし続けてしまった故に私は香織に依存されている事に気付きもしなかったのです。この事が後悔に繋がるとも知らずに...

親しくなるにつれ通院日と時間を合わせ、その後食事やカフェに行き他愛もない話をしていました。

「今日はハルにプレゼントがあるの!」

目を輝かせながら香織は私に紙袋を渡してきました。何か特別な日でもないのに良いのかな...と思い受け取ると

「今日って私達が出会って1ヶ月なんだよ!だからお揃いなの!開けてみて!」

「う、うん。ありがとう!」

(お揃い????)

開けてみると中身は香織と同じ色とストラップの付いた携帯電話でした。

「携帯やん!これ月の料金とか支払いどうすんの!私2台あるし、受け取れないよ!」

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香織はガタッ!!!!!と立ち上がり、突然首元をひっ掴むと

「いいの!受け取って。ねぇ?支払いは私の役目なの。ねぇ?受け取るよね?」

「か、香織...ぐるしぃ...料金払うからそれで良い?」

「私の言った事分かんないの?私が買ったものなの。払うの分かった?」

香織の目は据わっていて、首元も掴まれたままで苦しいので、その場では了承しました。香織にも彼氏が居て夜ご飯の支度をしなきゃ〜♡と言い解散になりました。帰り道に電話帳を見てみると、香織、まさ(香織の彼氏)のみ登録されていました。すると香織からメールが入ってきました。

(旦那の番号なら登録して良いけど他の人間登録したらそいつ殺すから!✨)

どこかで見ていたんじゃないかと思う程のタイミングでした。それに、物騒な内容に少し恐怖も感じました。

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香織は普段明るくてよく笑う良い子でしたが、たまに目が据わり豹変する事以外は特に問題はなかったのです。香織からは毎日メールが来ていましたが、内容も普通の物ばかりでまたいつもの日々に戻ったと思っていました。そんな折

ピロン♪

(ハルに話しておきたい事があるんだよねぇ...時間あったらブクロの焼肉いこー!)

何やら相談事かな?と思って日取りを決め約束をしました。

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「あ、暑い...」

いくら夜と言えど7月の東京は風も少なく暑いものでした。香織は遅刻魔です...。

「し、しぬ...香織はよしろ...」

暑さに耐えかねた私は駅前の巨大チェーン店のハンバーガー屋に避難しました。1時間半...香織は来ません。待たされてもあまり気にしない私も少し不安に思い電話をかけてみました。

♪〜♪♪〜

「ごめん!仕事長引いちゃった!今走ってるとこ!」

香織はこの界隈で働いていたのか...と思いつつ

「心配したやーん。怪我するから歩いてでいいよ。」

直後息を切らした香織が現れました。

「ごめん!仕事入ってさぁ〜。とりまお肉食べよー!」

「うん。でも遅くまで仕事なんやね。」

「あー...その事についても話したくてさ。」

駅近くにあった美味しいと噂の焼肉屋へは入り席に通されると

「ビール!!!!!ハルは?」

「私は酒飲めないから烏龍茶で〜!」

飲み物が届くと香織はビールを一気に飲み干し、おかわりを頼み、一息つくと相談の事話すから聞いて欲しいんだべさ!と言いました。

「私さ〜、バイなんだよね。んで今はブクロのホテヘルで働いてんだよね。ひいた?嫌いになる?」

「バイは良いとしてお金必要なの?引いたりしないし嫌いにならんけど、どうしたの?」

「ハル事務所入ってんじゃん?んで吉原で稼げる店紹介して欲しいのと.....」

「ん?どした?」

「私、ハルの事もまーの事も好きだから。友達とかじゃねくて恋愛の好きなんだよね。」

なんとなく気付いていた事とはいえ何と言ってあげたら良いか分かりませんでした。

「ありがとう...」

ただそれだけで精一杯でした。

「ねぇ?旦那との家庭は壊すつもりないんだ。でも...私の事捨てないでね。」

「捨てないよ...」

それからもう一つの話題へ変わりました。

何故香織がヘルスで働いているのか。

理由は毎日すごい量のアルコールと犬が欲しい事、実家の青森に彼氏を連れて行く旅費が必要なのだと...

聞き終わった私はこう言いました。

「まー君は出してくれんの?」

「稼ぎ少なくてさー!仕方ないから出してあげて、マスオさんになってもらうつもり!」

「私んとこ風俗経営したりする事務所じゃないし、香織の事心配だから紹介とか出来るかも分らんし本気で働くの??」

香織は力強く頷きますと

「半年!!半年って約束するからお願い!!」

と頭を下げて頼むので仕方なくマネージャーに相談する事となりました。

その後高級店と呼ばれるお店で香織は働く様になり、精神も更に病んでいく事になりました。

今でも何故香織に紹介してしまったのか...と後悔しております。

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1ヶ月後、香織からメールが来ました。

(助けて辛い死ぬかもしれない。助けて助けて助けて)

何事かと思いすぐに電話をすると異様にテンションの高い声で

(今やっばい死ぬかも!ねぇねぇ!!聞いて!まさが私のお願い聞かないで仕事行った!今日は行かないでって言ったのに!!)

少し呆れ、まー君だって仕事せんと香織と暮らしていけんから仕事行ったんやろ?と諭しましたが聞き入れず

(違う!!!!!私のお願い聞かないとかあり得ない!彼氏なのに!!!!!)

この状態の香織に何を言っても話にならないので香織の家にいく事にしました。

30分程電車に揺られ最寄駅に着くと香織が嬉しそうに駆け寄ってきて、ハルなら来てくれると信じてた!と言いました。周りがチラチラと香織を見るので恥ずかしくなり、

「暑いから案内してー」

と言いました。香織はこんな暑い日にも拘らず長袖のパーカーを着ていたので暑くないの?と聞くと、日焼けこわーい♡などとふざけて返してきました。10分程歩いた所に無縁墓地に隣接したアパートに到着しました。

「香織...よくこの家にしたね...私怖くて無理やなぁ。」

「え?クーラーなくても涼しくて良いんだよ?家賃も23区なのに激安!」

そりゃそうでしょう。なんていったって無縁墓地なぞの真横なのですから...

「まぁ!入って!汚いけど!」

「お邪魔しま.........」

絶句しました。汚いなんてレベルではありません。アルコール類の瓶や缶がそこらじゅうに転がり、ごみ袋も捨てる事を忘れられて何か月そこに放置されているのか分からない、足の踏み場さえほとんどないのです。

「香織よ...」

「んー?」

「ゴミ.........」

「あはっ!やばいよねー!明日ゴミの日だから捨てるわ!」

「そうゆう問題じゃなくて...ここゴミステーションあるん?」

「あるよー。いつでも捨てられると思うといつでもいいって思っちゃってー!」

「捨てに行かんと帰る。手伝うから行くよ!!」

面倒臭そうにする香織と共に大量のゴミ袋を持って地下のゴミステーションへ4往復しました。

ゴミが無くなった部屋はスッキリとして明るく家具も少ないので広くなりました。

そうするとテコテコと白い物体が歩いてきます。

「え?あれって...」

「うん!犬!」

こんな部屋で飼われていたせいか白くてフワフワの犬もオドオドと部屋を見回しながら歩いてきます。きっと来た時からゴミ屋敷であったのでしょう...

「もう物は捨てる!分かった!?」

初めて香織を叱りつけました。精神衛生的にも犬にも良くないので...

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話が少し逸れてしまいましたが、その後香織の部屋へと通されました。

そこはとても片付いており今までのゴミはなんだったのか?と思う程でした。

「で?死ぬって何だったん?」

「いやさぁー、今日寂しいから仕事行かないでって言ったのに仕事行ったじゃん?だからさ...」

香織は来ていたパーカーを脱ぎ...

「見て!嫌がらせその1!!」

香織の両腕には肌色がないくらいに紅い切り傷だらけでまだ血も滲んでいました...

「切りまくった!あいつこれすると泣くから!」

リストカット...度を越したリストカットでした...

何で...何で...どうしてする前に言ってくれなかったのか悲しくなりました...

「キレイだべ?」

とニコッと笑う香織の笑顔に少し恐怖を覚えました。

病院には行かないと言うので消毒液を風呂場で2本程浴びせ、薬局に行き包帯も買いグルグル巻きにしました。

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リアルさが伝わって来ます。
最後の描写はゾッとしました。
続きが気になります。

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続き早く見たいですー!

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