ひょんな事から、好きが嫌いになる事ってありますよね。
今回はそんなお話です。あまり怖くないかもしれませんね。体験した人ではないと感じない怖さ、というのもあるかと思うので。いえ、きっとほとんどがそれに当たるかと思います。
ですが、ちょっとでも怖さを共感してくれる方が居れば、という思いでお話しさせて頂きますね。
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「来たなぁ・・・ついに・・・‼」浮かれた気分で、私は歩いていた。自分でもなんて安易な考えだろうと思ったが、来てしまったものは仕方ない。
私は無類の抹茶好きだった。が、旬は調べたものの、産地等は調べず来てしまったこのお茶で有名な所に。抹茶といえばお茶になる。お茶と言えば・・・あそこかな‼という考えで今茶畑が見えるこの田舎に来ている。
運良ければいい抹茶に会えるかも・・・という淡い期待をしながら。
それにしても、旬がいまいち曖昧な抹茶。春であったり、調べによると6月から7月上旬にとれる抹茶の茶葉、春に摘んだ抹茶は11月頃に味わえる等・・・。
取り敢えず私は11月、ここに来ている。春に摘んだ抹茶を味わえるかな、というまたしても安易な考えでだ。
だからと言ってこんな田舎行かなくてもよかったかもな、と今更後悔しているのだが、道を歩いているとふと目に入った無人販売の店。
「うわぁ、初めて見た。本当に人いないや。大丈夫なのかな。」
私は心の中でこんなにも他人を信用している販売方法に驚いた。見ず知らずの人をここまで信用できるとは、世の中捨てたもんじゃないね、と我ながら阿保らしい考えをしながらこの無人販売の店に近づいた。
「おお、流石お茶の名産地。いっぱいあるなぁ。山菜もある。おいしそう・・・」
私は店頭に置いてある品物に目をやりながらふと気になる袋を手に取った。
「え、抹茶?こんなところで?」
目的のものを見つけてはいるが驚きで本当なのかと疑っていると人の声がした。
「あら。お客さんかい?」
私は気配を感じてなかった為、肩を上げ驚いてしまった。
「ごめんなさいね、驚かせてしまって。たまに暇なときに様子を見に来ているのよ。ゆっくり見て行ってね。」
クスクスと笑っているおばあさんにすみません、吃驚してしまって、と謝った。おばあさんはとても優しい感じの方で私にいいえ、と言いしばらく店の整理をしていた。
「あの、すみません。これは抹茶ですよね?」と私は率直に疑問を店主に言った。
「ええ。抹茶よ。あなた、抹茶好きなの?」という答えと問いに私は抹茶好きなことを言った。
「なら、私の畑に来るかい?抹茶がどういう感じで作られているか、知るっていうのも味わうにあたって勉強になるわよ。」にっこりとほほ笑むおばあさんに私は興味もあったので見せて貰う事にした。
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「うわぁ、広いですね・・・凄いや。」私はいつも語彙力の無い感想を声にだしていた。
「そうでしょう。」おばあさんは私の発言が面白いのだろう、クスクスと笑っている。
おばあさんは私に茶畑の中の方まで連れて行ってくれた。その時私は少し異臭がする事に気が付いた。腐ったような、堆肥等とは違う臭い。私は思わず少し鼻を手で覆っていた。
「そのうちこの臭いにはなれるはずよ。とても栄養になる肥料なんだけど、臭いがどうしてもするのよね。でもここのお茶の葉で作った抹茶はとても甘いのよ。最高の肥料を使っているんですもの。私はとてもわが子の様に愛でているわ。」私はそう話すおばあさんの表情に少し冷や汗をかいた。
おばあさんはお面をしているかのように張り付いた笑顔だったのだ。
「そ、そうですか。ごめんなさい。抹茶、家に帰って飲むの楽しみです。」私は上手くはないが、精一杯作り笑顔で答えた。
「いいえ。大丈夫よ。気にしてないわ。」まだあの笑顔だ。正直このおばあさんが少し恐ろしく思えてきたその時、私は何かに躓いた。転びはしなかったが、地面が見えた時、私は更に恐ろしくなった。一瞬でもわかる、骨。少し薄汚れているそれには微妙に肉と思われるものがついている。
私は思わず「ひっ・・・‼」と悲鳴を上げてしまった。
その声に気付いたおばあさんが「あら、ちゃんと埋めたのに。」と足で出ている骨を地面に押し付けた。「貴女の肉付きも丁度良いのよね、良かったわぁ。」と私を見ながらにっこりと笑った。
私は恐ろしさがピークに達し、今まで来た道を自分でも今まで出したことのない速さで戻った。待ちなさい‼という声がしていたので、追いかけているのは何となくわかった。
だが怖さで振り返れない。私は、あの無人販売の店も過ぎたころに息を整える為に休んだ。
そこで初めて後ろを振り向いた。
どうやら撒けたみたいだった。それから私は持っていたあの無人販売で売っていた抹茶を罰当たりながらもその辺に投げ捨てた。そして私は駅へと戻り帰る事にした。
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無事、家に帰ってからは私は自宅にある抹茶を作る道具を一切合切捨ててしまった。
正直もう二度と飲む気にはなれないからだ。
もし、あの時私は躓いていないであのおばあさんの目的に気付いてなかったら、と思うといまだに冷や汗が出る。一体あそこには何人の人が埋まっているのだろう。
あそこにはあのおばあさん以外、人を見かけなかったのでもしかしたら・・・。
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これが私が怖かった体験です。おかげで今でも抹茶は飲めないです。
作者アリー
フィクションです。
そして調べも浅いので、おかしいところ、あるかもしれません。
その時は教えて頂ければ、嬉しいです。
また、誤字脱字もあるかもしれません。そちらも教えて下さい・・・‼