これからお話する物語はある女の子と過ごしたお話です。
誰かの記憶に残っていただければと思い、今ここで語らせて頂きたいと思います。
それでは、宜しくお願い致します。
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「あら、知らない顔ね。こんにちは。」
私は道に迷い、森の奥へ来た。そこにはセーラー服を着た女の子がいた。
私は恐る恐るこんにちは、と挨拶をした。
「ここ私の秘密基地なの。だから誰にも言わないでね。」と女の子ははにかみながら言った。
私はこくりと頷いた。それにしても不思議だった。
こんな森の奥に小さいながらも小屋があるとは。
この町に住んで結構経っていたのでそこそこいろんな場所を知っていると思っていた。
この女の子も不思議な感じがあるのだ。話し方は少しぶっきらぼうな感じがあるがどこか遠くを見ているような、はかない感じがした。話し方と対象的な雰囲気がある、まぁそんな感じだった。
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「私に何かついている?」突然の問いかけに私は驚いた。
いいえ、違うわ。と私は返事をした。
「変な子ね、あなた。」くすくすと笑う女の子を見ていると少しほっとした。
何故私はほっとしたのだろう。不思議だったがまぁ、いいかと思った。
「ねぇ、ここで会ったのも何かの縁だし明日も来てよ。私の話し相手になって欲しいの。
私いつも一人で退屈していたのよ。友達っていうの?が居ないのよ。だから、お願い。」
そういって女の子は私の目の前で両手を合わせてきた。私は断る理由もないので快く了承した。それに私もこの子の事が気になっていたので丁度良かったのだ。
私はそろそろ帰ろうと思い、女の子にお別れを言ってその場を去った。
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翌日、私は昨日行った小屋を訪ねた。
女の子は既に居た。入ってきた私に「やっと来た。待ちくたびれたよ。今日はクッキー持ってきたの。」
確かに昨日はなかった少しいい匂いがした。私は女の子からクッキーを貰い喜んで食べた。
「喜んで貰えて良かった。」そう言ってにっこり笑った。昨日のぶっきらぼうさは少しも感じられなかった。どこか上機嫌だったのだ。
「ふふふ、今日いい事があったの。私の描いた絵に賞がついたの。頑張った甲斐があったわ。」そう言いながら嬉しそうに頬を緩めていた。その様子を見て私も嬉しくなった。
「私嬉しいわ。こうして嬉しいことを共有できるなんて。ね、明日も来るでしょう?来るよね!決定ね。明日もここに来てね。」
何だか無理矢理決まってしまったが、こうしておいしいクッキーも頂いているので了承した。
それにこの子の笑顔がもっと見たいな、と思ってしまったから。
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私たちは何度も森の奥にある小屋で会ってその日あった事の話をした。
そんな日々が続き、半月たった頃だった。
「こんばんは。」女の子はどこか覇気のない声だった。
私が首をかしげてどうしたのか問いかけた。
「なんでもないよ。大丈夫。」女の子は苦しそうな笑顔を浮かべた。
私は深く問いかける事が出来なかった。
「ごめんね、来てくれたばかりだけど、今日はもう帰ったほうがいいよ。雨、降りそうだから。」女の子はそう言って私を帰る様に促した。私は渋々帰った。
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次の日私は小屋に向かった。「待ってたよ。」そう言った女の子はやはり昨日と同じく覇気がなかった。
だが、いつもと変りなく私たちは日常の話をしていた。
お菓子がなかったのは少し物足りなかったが。
ある日の事だった。
「あのね、最近変な人達がここを出入りしているの。ここって実は心霊スポットみたいなの。それで少し荒らされていったりして、なんだかいやだわ。私とあなただけの秘密基地だったのにね。」
私もその話を最近小耳にはさんでいたので確かにいい気はしなかった。
「変な紙貼っていくし、もうそろそろなのかな。」
泣き出すのを我慢しているような声でそう言った女の子に私は何も言ってあげれなかった。
「って、もう帰るよね、ごめんね、またね!」そう言って女の子は私を以前の様に帰す様に促した。私も促されたまま帰った。
その時とても小さい声で「さよなら。」と聞こえた。
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翌日私はとある話を耳にはさんだ。
『ねぇ、森の奥にある小屋、やっとお祓いされたみたいよ。一年前に自殺した女の子の霊が居るって言われてたからね。』
ああ、そうか、あの子はもうすでにいなかったんだ。
でも私は話した。お菓子も食べた。はずだ。なんでだろう、私の記憶は正しいのか?
何を見ていた?何をしていた?あの子は、どこにいるの?
そう考えながら鳴いた。あの子にもう会えない事に嘆いて鳴いた。
『にゃああ…にゃああ…』
作者アリー
怖いお話じゃなく、少し悲しいけど、一応幽霊は出る、というお話を書きたかったので、一曲の歌を聴きながら書きました。
しかしながら、駄文で本当に申し訳ないです。精進あるのみですね。