ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・

短編2
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ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・

小さい頃、私の家では家族5人(両親と弟2人と私)が川の字になって皆で寝ていました。

田舎でしたから、家のすぐ裏は田んぼが並んでいる様なところでした。

暑くなってくると、寝室の窓を開けて編み戸で寝ていました。

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その日も、編み戸から流れ入ってくる夜風に涼みながら寝ておりました。

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私は、何やら遠くの方から聞こえてくる「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・」っという謎の音で目を覚ましました。

何故か、蛙の合唱は聞こえず静か過ぎる位でした。

皆は全く気付いてない様子で、すやすや眠っています。私は、音の正体が気になりましたが、1人で確かめるのは怖い。

そこで、隣で寝ている弟を起こそうと揺すりましたが、起きる気配がありません。

おとんも、おかんも、起きてくれません。

その間にも「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・」という音は聞こえていました。

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(仕方がない、怖いけど、確かめてみよう)

音はどうやら、外から聞こえている様でした。

しかもどうやら、どんどん近づいてきているみたいでした。

「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・」

私は布団から出ると、田んぼが望める編み戸の方に四つん這いのままゆっくりと移動しました。

「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・」

音はどんどん大きくなります。

「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ」

と、すぐそこで音が止まりました。

私は恐る恐る、編み戸から外を覗きました。

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(えっ!?)

と思った瞬間、私の全身を恐怖が走り、鳥肌が泡立ちました。

編み戸を挟んだベランダの先。家の直ぐ裏の田んぼに、真っ黒い山の様な半円の何かが、居る。

夜の闇より黒い闇の何かが、すぐそこに、確かに居るんです。

真っ黒い闇の上部辺りには、ぽっかりと白い穴が2つ。目の様な。

私は、恐怖のあまり動けませんでした。

が、その目の様なモノがこちらを向いた瞬間、我にかえった私は震えながらも窓を締め、鍵を掛けて布団に潜りこみました・・・。

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・・・

はっ!!っと、気がつくと外はうっすら明るくなり始めていました。

皆はまだ寝ていました。

(昨夜のあれは、なんやったんやろ、夢やろか??・・・)

なんて事を考えていると、気がつきました。

「ごぉぉぉっ・・・ごぉぉぉっ・・・。」

おとんが大きなイビキをかいて寝ています。

(あぁ!!ありゃあ、おとんのイビキを寝とる間に聞いて、変な夢を見てしもうたんかぁ!!)

私は、おとんのイビキが原因だった事を悟り、安心しました。

悪夢のせいで汗だくになった身体を起こし、窓を開けました。

時計を見やるとまだ早い時間。私は、もう少し寝ることにしました。

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編み戸から流れ入ってくる早朝の風に涼みながら・・・。

Concrete
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