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どのくらい時間がだったのだろう。
ベッドに入ってからずいぶんたった。
全く眠れない。
なぜだろう。
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確かに俺は、横になってから眠りにつくまで長い方だが、今夜は何かが違う気がした。
いや違うって何がだ?
わからない。
今日は何かあったか?
いやいや何かあったら覚てえるだろうしすぐ寝てるか。
一人部屋で考えを巡らせてみる。
...なんだかだんだん馬鹿馬鹿しくなってきた。
とにかくなんか飲んでトイレにいこう。それだけで気分も変わるだろう。
電気のヒモに手を伸ばした。
その途端にあることを思い出した。
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朝、駅の改札でのことだ。
ある一台の改札が避けられていたのだ。故障かと思ったがすぐに違うとわかった。
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その改札の出口に女が立っていた。直立不動でうつむき気味。明らかに異常だった。
しかし通行人はおろか、駅員までもがその存在を無視していた。
不思議に思いつつ、俺は女に声をかけようとした。
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その時、何かを感じた。
この女に声をかけてはいけない。
この女を見てはいけない。
この女のいる場所に、いてはいけない。
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そう思った理由はわからなかった。
ただ、とにかく生命の危機のようなものを感じたのだ。他の人達もおそらくそれを感じたのだろう。
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俺は早足で改札を抜け、この女から逃げようとした。
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なぜこんな不気味な経験を忘れていたのだろう。
改札でのことも、あの女も、そのことをなぜか忘れていた自分も怖くなってきた。
彼女が寝返る。
もう寝よう。
早く寝てしまいたい。
静かに目を閉じた。
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明日には忘れてるさ。
なんだか腑に落ちない。
あの女は何だったんだ。
考えるな。
寒気がする。
寝たい。
目を開くと前にいるんじゃないか。
やめろ。
子どもじゃあるまいし。
寝たい。
考えるな。
考えるな。
考えるほど眠れない。
暑い。
寒気がする。
落ち着け。
彼女だっているんだ。
何も考えるな。
寝よう。
寝よう。
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...彼女...?
自分が今さっき考えていたことの意味がわからない。
彼女だっている...?
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ああ...これはまずい...
...俺に彼女はいないのに...
なら...今隣にいる女...
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誰だよ...
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冷や汗がぶわっと染みだす。
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俺は一人暮らしだから、当然この部屋には俺しかいないはずだ。
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いつの間にかに、そこにいた。
いることになぜか疑問に思わなかったし、彼女だとまで思っていた。
なぜ?
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異様な気配と空気が、部屋を包む。
あいつだ。絶対に。
改札にいたあの女だ。
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俺に何をしたい?
俺が何かしたか?
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わからない。
何が起こっている?
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「何なんだよ...」
恐ろしかったが、同時に理不尽だという怒りも沸いてきた。
もしお前を無視したって言うのなら、他の人達もそうだったじゃないか。
何で俺が...何で俺が...
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「もう消えろよ!」
叫んだ勢いで目を開けてしまった。
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真っ暗だった。何も見えない。
いや、何かの輪郭が見える...?
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違う。
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女の顔で、視界がさえぎられている。
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それほどまでに、女の顔が近い。
その時、障子からうっすら光が射し込んだ。
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女の顔が現れ、息をする間もなく囁いた。
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『オ前モ同ジダ』
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shake
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
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その先の記憶はない。
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後で聞いた話だか、あの日女を見た大勢の人が恐ろしい体験をしたそうだ。
ある心霊研究家は、こんなに大勢の人を巻き込むような霊は非常に稀で、おそらく相当な未練を持った大悪霊だという。
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しかし未だに、女の意図は不明だ。
作者すけひら
彼女だと思い込んでしまったというのは、心や記憶を操られたということだろう。
それほどまで彼女が大きな力を持った悪霊になった理由は分からない。