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中編5
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集合団地の怪

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これは友達から聞いた話です。

その友達を仮に由依(ゆい)ちゃんとします。

由依のお兄さんはある有名宅配業社で働いていました。宅配業もなかなか大変でエリアやノルマもあるらしく朝から晩まで働いていたそうです。

そんなある日先輩が熱中症で倒れ急遽その分の荷物を届けなければならなくなってしまったそうです。

その中のひとつが集合団地のある部屋へ…でした。

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♪ピンポーン

丁度小学生が下校の時間だったのか遠くに元気にはしゃぐ声が聞こえたと言います。

♪ピンポーン

まだまだ残暑が厳しくこの暑さじゃ先輩も熱中症になるなぁ…そうだ、エロ本でも持参して病院にお見舞いでも行くかと考えていたそうです。

♪ピンポーン

暑さのせいなのかなかなか出てこないせいなのか段々とイライラしてきました。

不在票を取り出し書いていると突然ガシャ…と扉が開いたそうです。

その先に居たのはちょっと地味な暗そうな奥さん。

それでもよくよく見ればストレートの髪の毛が美しい目鼻立ちも整った色白の美人でした。

『宅急便です』

そう呟くとその奥さんは何も言わずハンコを取り出しあっという間に荷物を受け取ると扉を閉めてしまったそうです。

“なんだ、もうちょっと何か話したかったな…”

美人な奥さんの顔を思い出しながら考えていたそうです。

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その1週間後…

由依のお兄さんは再びあの団地へ行く事になります。

♪ピンポーン…ガチャ

今日は1回で出てきてくれました。

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『ここにサインかハンコを…』

美人な奥さんは何も言わずに踵を返すとリビングへと姿を消していきました。

しかも今日は玄関の中まで入れたという事もあり、由依のお兄さんは“ちょっとラッキー”と考えていたそうです。

片付けられ髪の毛一本落ちていない空間。

“きっと綺麗好きな奥さんなんだろうな”

その時部屋の奥から奥さんが戻ってきました。

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『う…っ…ううう…うっ…』

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奥さんがリビングへ通じる扉を開けた瞬間、確かにうめき声のようなものが聞こえたそうです。

奥さんは何事もなかったようにハンコを押すと荷物をあっという間に受け取りまた部屋の奥へと消えていきました。

『またよろしくお願いします!!!』

元気よく部屋の奥へと叫ぶと由依のお兄さんはその部屋を後にしたそうです。

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次の日の朝礼前。

復帰した先輩と事務所内であの団地の美人な奥さんの話をしていました。

『いや、マジで美人だったんスよ』

『お前、AVの見過ぎなんじゃねぇのか?』

『朝礼始めるぞ~』

上司が部屋に入ってくる。が、上司の表情が厳しく感じた。

『え~連日お客様から苦情が入っている。荷物が配達されないと。担当が誰だとかそのエリアの奴が誰だとかは言わない。だが、最近この宅配業社での不祥事も増えている。気を付けてくれ』

確かにニュースになるほどその時期は宅配業社で不祥事が多発していた。

その日も気を引き締めて車を出した。

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荷物を見てみるとあの団地の荷物がまた入っていた。ラッキーとまた思いながら思い出されたのはあの謎のうめき声。

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“あの部屋の奥には一体何があるのだろう?”

そう思いながら由依のお兄さんはまたあの団地に向かいました。

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♪ピンポーン…ガチャ

今日も中に入る事が出来た。

やはりいつ見ても綺麗な玄関だった。

余計な物も置いていない。

“この奥さんの旦那さんが羨ましいな”

そう思った。

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今日はリビングへ通じる扉が半開きだった。

ふいにどんな部屋なのかが見たくなった。

その僅かな隙間から何となく想像を膨らませながら見ていると…奇妙なものに出くわした。

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『ヒッ…!!!』

小さな悲鳴を上げてしまった。

小さな手。…なのにしわくちゃでおじいちゃんかおばあちゃんの手にも見えた。

徐々にその姿も露になってくる。

布が擦れる音。

ズズズ…ズズズ…ズズズ…ズズズ…ズズズ…ズズズ…

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気付いた時にはその音を発している者の正体としっかり目が合っていた。

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『うぁぁあああぁぁああ』

大きな叫び声を出しながら外へと走り出していた。

集合団地を見上げるが“あの何者か”が追ってくる事はなかった。

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ほどなくして事務所に呼ばれた。

『この前の朝礼の時に荷物が配達されないって苦情が入ってるって言ったよな?あれ、お前だよ』

上司は声を荒げた。

『一体あの荷物は何処に隠した?』

『隠してないです』

『最近○○団地によく入っていくお前を見掛ける奴がいるんだがあの団地空きも目立ってきた。しかも部屋の鍵は空いてるときたからあの団地の何処かに隠しているんじゃないのか?』

その時思い付いたのはあの美人な奥さんの事だった。

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翌日同じく休みを取っていた先輩に付き添ってもらいあの集合団地に行く事にした。

『本当に美人な奥さんが居たらラッキーだけど居なかったら不気味だよな…』

B棟の403号室…

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♪ピンポーン…♪ピンポーン…♪ピンポーン…

いくらインターホンを鳴らしても誰も出てくる様子はなかった。

今日は不在なのだろうか?

先輩はドアノブを握った。

『先輩!!』

『大丈夫だよ、覗くだけだから…っておい!!!』

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扉を開けるとそこにはなくなった荷物達がご丁寧にも重なって置いてあった。

そして先輩は奥の部屋へと歩いていった。

『なんだよ、これ』

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そこに広がる空間はただただ広くてとてもじゃないが誰かそこに住んでいた形跡はなかった。

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あれから由依のお兄さんはその職場を辞めた。

もちろん彼の不祥事になっているわけだから上司はカンカンで彼は職場を辞めざるを得ない状況になってしまったのだろう。

それから辞める前の日事務のおばさんからあの団地の噂について聞いたのだと言う。

『どの部屋かは知らないけどさ、子供を虐待をしていた母親が居たみたいなの。子供を日常的に殴ったり蹴ったりはもちろんだけど部屋から出られないようにアキレス腱まで切っていたらしいのよ。それだけじゃなくて熱湯をかけたりご飯を与えなくて最後は真夏の日暑い部屋でミイラみたいな感じで死んでいたらしいのよ』

もしかするとあの見た姿は…虐待死した子供の姿だったのかも知れない。

死して尚助けを求め歩けもしないその体を引きずり玄関へ訪ねてくる訪問者に助けを求めていたのだろう。あれからあの団地には行っていないがきっと今もあの部屋から助けを求めているのだろう。

詳しい場所は話せないが…是非皆様には気を付けて頂きたいと思う。

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