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私の楽しみと言えば専ら廃墟探訪。
大学で知り合った友達と行く事になりました。
そこは廃墟マニアの間ではとても有名なレジャー施設跡地でまた心霊スポットとしても有名でした。
友達も怖いものなどにはあまりおくさないタイプでその話を持ちかけた時から乗り気でした。
車は私が出すことになりました。
大学の近くにあったという事もあり私的にはずっと目をつけていた場所でした。
憧れも憧れの場所に行けるとあって当日私はとても興奮ぎみでした。しかし周りには民家もありあまりに騒いでいると通報をされてしまうのでその興奮を抑えつつ元レジャー施設の門をくぐりました。
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門をくぐると友達が立ち止まりました。
『どうしたの?』
『涼しいね』
真夏の昼間。私が暑がりの汗っかきという事もあり涼しさなど感じてはいませんでした。
更にこの後友達の奇行は止まりませんでした。
建物の入り口までのスロープはとても長くやっとの思いで建物の入り口までたどり着きました。
『凄い雰囲気だね』
『うん』
退廃してしまっているその雰囲気に私はウズウズくるものがありひとりで興奮をしていました。
1階部分はロビーやエントランスがありました。
大して目ぼしいものもなく2階へ行く事になりました。
『ここら2階に行けるみたいだね』
『う…うん…』
『どうかした?』
『う、うん…稲荷ちゃんひとりで行ってきて?』
『大丈夫?』
明らかに友達の様子は変でした。
『わ…わかった…』
外で待つという友達を見送ると私は2階へと上がっていきました。2階部分には大浴場や大広間がありました。やはり目ぼしいものもなく1階部分へと戻ってきました。
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するとそこには外へ出たはずの友達が口を半開きにしながら天井を見るように上を見ながら立っていたのです。
『ど…どうしたの?』
2、3回声を掛けたところでようやく友達は私を見ました。
『あれ?稲荷ちゃん今、何処から降りてきた?』
『え?いや、この階段からだけど?』
2階へ上がる階段は間違いなく私が2階へ上がった階段ひとつしかありませんでした。
『意味が分からないよ…』
ようやく友達の異変に気付き急いで友達を車に乗せ近くのコンビニに辿り着きました。
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『大丈夫?』
友達の肩を揺らすとようやく友達は我に返ったようでした。
その後友達に廃墟内での出来事を聞いても“覚えていない”の一点張り。
ただ唯一覚えていることと言えば…
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背の高い女が天井から現れたということだけ。
だそうです。
作者稲荷