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これは私と悪友の香菜が小学5年生の時に起こった出来事です。
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夏の事だった。私と香菜ちゃんは暑い暑いと言いながら香菜ちゃんの家の縁側でパッキンアイスを分けっこして食べながら子供用プールに脚を入れ涼をとっていた。
香菜ちゃんは暑さに耐えられず、冷凍庫からこれでもか!という位氷を持って来て子供用プールに投げ入れた。そしてまた脚を入れると一息つき、なんか楽しい事起こらんかねぇ...と呟きハッとした顔をして私の頬をムギュ!!と抓った。
「痛いやん!何しよんか!」
「はるやん、香菜思い付いたんよ!寒くなる方法!!」
目を輝かせながら私にズイズイと近寄ってきた。
「な、なんね...」
「隣町にシル〇ニアファミリーの家あるやん?あそこ行こうや!」
シル〇ニアファミリーの家とは私達の間での通称で、本当に豪華な洋館と呼べる憧れの家だった...噂を除けば...
「嫌やし。はる怖いもん視たないし。ママにもダメち言われようもん。」
「香菜やってじぃじに行ったらいけんち言われようちゃ!ばって夏休みやのになーんもする事ないしつまらんやん?」
それには私も同意であった。弟が産まれて半年で母も疲労が溜まり、父も仕事が忙しくあまり遊んでくれる時間がなかったから。
「香菜ちゃん怖ないの?私オバケおったら置いて帰るきね!」
「私オバケ見たことないき大丈夫っちゃ!塩投げればおらんくなるやろ!」
そうして私達2人は隣町のシル〇ニアファミリーの家へと向かう事になった。
隣町までは自転車で15分程掛かるため母達には隣町の大きい駄菓子屋に行く、と嘘を吐き水筒と帽子を用意して貰い向かった。
「なぁ香菜ちゃん、大きくなったらあんなお洒落な家住みたいよなぁ...」
「そやねぇ。おかんが言う玉このし?になったら住めるんやないと?」
「たまのこし、やろ...んな難しい事出来んわ〜。お嫁さんになれるんかなぁ...」
小学生でありながら少々ませた子供だった私達は道中そんな会話をしながら目的の場所へ辿り着いた。
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まさにシル〇ニアファミリーのウサギ達が住んで居そうな家。本当に誰も住んで居ないのか?という疑問が浮かぶ程に手入れされており、ヒマワリなどの夏の花々が咲き乱れていた。
その家の横にはお爺さんが打ち水をしていて、香菜ちゃんはお爺さんに話しかけた。
「こんにちはー。おいちゃん!この家本当に誰もおらんの??」
「こんにちは。この家見に来たんか?なら今すぐ帰り。」
「なんでなーん!?うちら大人になったらこうゆう家に住みたいけ見に来たん!」
お爺さんは怪訝な顔をしてこう答える。
「.......。そうやな...今は誰も住んどらんよ...あんな立派な家やのに勿体ない事や。お前達、この家はな、猫の怨念があるんや。やけ入らんで帰り。」
お爺さんと話していると後ろから奥さんと思しきお婆さんが出てきた。
「あんた、子供にそげな話したらいかんやろ!余計な話ししよってからに...」
それでも私と香菜ちゃんは負けじと聞く。
「怨念っちなんねー?怖いん??」
お婆さんは優しくも真剣な表情で答えてくれた。
「呪いって分かるか?この家はな、猫に呪われとるんよ。やけ入ったらいけんの。分かったか?」
私と香菜ちゃんは目を合わせ、香菜ちゃんは目で話しかけてきた。
(このお爺ちゃんお婆ちゃんおらんくなったら入ろ!)
香菜ちゃんの事だから多分そんな意味がこもっていたと思う。
「はるやん、怖いけ駄菓子屋行こ。おいちゃん!おばちゃん!ありがとー!ばいばーい!」
そう言うと私達は近所にある駄菓子屋に行き小さなアイスを半分こした。
「はるやん、あのジジババの言う事信じる??うち、嘘やと思う!怖がらせたいだけやもーん。」
「分からんけど...猫の呪いってあんまし怖くなさそやね!大丈夫かも!」
「あとちょっとしたらまた行こ!」
日陰とアイスで涼むとまたシル〇ニアファミリーの家へ向かった。先程の夫婦は居なかったから家の通りの角に自転車を停めるとコッソリ中に入って行った。
「はぁー!やっぱり羨ましかねぇ...はるやん!大人になったら一緒に家買お!」
「お金貯めて買お!」
ヒマワリに隠れながら家へと向かう私達はまさに子供の会話をしながら家に近付いて行った。
(ニャーン...)
「うわぁ!!!!!」
香菜ちゃんは猫の鳴き声に驚き飛び跳ね、その姿がおかしくて私は大笑いをして香菜ちゃんに睨まれてしまった。
「はるやん、笑ったやろ。ばさら笑ったやろ...悔しかー!」
「ブフッ...猫やん...ねっ...猫の鳴き声やん...ブフッ...」
「笑うなやー!あの爺さんが呪いとか言うき驚くやん!」
「大口叩きよったの香菜ちゃんやん!」
香菜ちゃんは私にデコピンをするとちょっと怒りながらドカドカ玄関へ向かったので私も置いていかれないように、と早足で香菜ちゃんの後を追った。
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香菜ちゃんは玄関を開けようとするが開くはずもない。
「開かん。後ろ見て来るけ、はるやんそこ見とって!」
そう言うと家の裏側へと走って行った。待っている間何か見られている気がする...そう感じた私は周りをキョロキョロと見回した。
(なんやろ?なんかいっぱい見られとる...気色悪...)
「香菜ちゃーんまだー?」
香菜ちゃんからの返事はなかった...
次第に視線も怖くなり私も後ろへ行く事にした。
そこには香菜ちゃんの姿があった。が...香菜ちゃんは立ち尽くしていた。
「香菜ちゃん...?」
「はるやん...あのデコボコなんやと思う...?なんや名前書いてある...」
デコボコ?名前?何のことか分からず視線を向けると確かに土が盛ってある場所があり、その土の上には(みーちゃんの〇)(たまの〇)当時の私達にはまだ教えられていない漢字だったから読めない物であった。とりあえずお気に入りのメモ帳にその漢字を書き写す。
「香菜ちゃん...これさ...映画で見たことあるお墓によう似とる...」
「香菜もそう思って怖なった。」
数えてみると、13個の名前が書いてあった。その頃には夕方になり空も赤くなり始めていた。
二人共恐ろしくなり、帰ろう...という時であった...
(ニャー...)
(ニャオーン...)
(フシャー!!!!)
(ニアーーーーオ...)
そこ一帯どころかこの家の敷地内全体から聴こえてくる猫の鳴き声...それにさっきから感じる視線も増えた気がした。
「かっ、香菜ちゃん!なんか見られよう!」
「うん!香菜もそう思った!ここ危ないとこかもしれん!!走れ!」
二人は猛ダッシュで敷地から出ようと走り出すがヒマワリの辺りで身体が痛くなってきた。
引っ掻かれているような痛み、噛みつかれているような痛み...そして体が動かなくなりそうになったその時だった
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「うわああああああああああ!!!!!!!!!!!」
香菜ちゃんが絶叫し始めた。
「香菜ちゃん!どげんしたとね!!」
「うわああああああああああああああああ!!!!」
声を掛けても香菜ちゃんは叫び続け、どうしよう、どうしよう...と香菜ちゃんを見ていると
香菜ちゃんの足元には(ねねの〇)と書かれた盛り土があり香菜ちゃんはそれを踏んでいた。
(これや!これ踏んだから怖い思いしてるんや!!)
子供心にそれを踏んではいけない!と思い香菜ちゃんを突き飛ばした。
「はるやん!!おらんくなった!?」
「なんがよ!!」
「おったやん!猫みたいなでっかいおばけ!!」
「おらんて!香菜ちゃん足元見てみ!」
香菜ちゃんはそれを見ると私の手をバシっと掴むと一目散に出口まで走った。そうして私達二人は道路にへたり込むとワーワー泣き出し、恥ずかしい事にお漏らしをしてしまった。
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「どうしたん二人共!」と先程のお婆さんが出てきた。
泣きながら話すとお爺さんまで出てきて私達は拳骨をもらった...
「お母さん達に電話しよな?番号分かるか?」
ブンブンと首を縦にふる私達を見て各家へと連絡してくれた。お漏らしが分からない様にと水まで浴びせられた。
10分程すると香菜ちゃんのお母さんが迎えに来た。
「はるちゃんのママは赤ちゃんおるからおばちゃんが来たけね。」
そういって香菜ちゃんのお母さんはお爺さんとお婆さんに謝り事の経緯を聞くと黙って後部座席にビニールシートを敷いて私達を乗せて帰った。自転車も積んでくれた。
車内で香菜ちゃんのお母さんが話してくれた事...
私達が生まれるずっと前、あそこには子供のできない夫婦が住んでいた。そこは昔から動物のお墓が作られていた場所であったがその夫婦は知らずにそこへ家を建てた。子供が出来ない事を嘆くでもなく幸せそうに暮らしていた様に思っていたが、その家の旦那は仕事がうまく行かずノイローゼ気味だったそうだ。妻はそれを心配して可愛らしい猫を飼い始めると旦那も少し元気になったが...程無くしてその猫は死んでしまったそうだ。悲しむ旦那に妻はまた猫を貰ってきたが1年足らずで病死した...それでも今度こそは!と妻は同じことを繰り返したそうだったが...隣のお爺さんは見てしまったそうだ。猫を生き埋めにしている旦那の姿を...
「猫は楽でいいよな...猫は楽でいいよな...」と何度も同じ言葉を繰り返し猫の口を何かで塞ぎ猫を埋めていた。お爺さんは旦那が居なくなるとすぐに掘り返して猫を助けようとしたが、猫の喉奥深くまで丸められたパンらしきものが詰められていた為に猫は冷たくなってしまっていたそうだ。その後、あれだけ猫を貰い受けていた妻も猫の口を塞いで手足を縛り、猫の尻尾を掴み、無表情で叩き付けて埋めている姿を老夫婦は見てしまい、その家とは関わらない様にし、猫が死んでしまったと嘆く妻の嘘を聞く度せめて成仏できるように祈っていたそうだ。
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話を聞き終えた私達は子供が聞いても悲しく怖い話であったためにたくさん泣いた。
「ねこちゃん可哀想...」
「なんで猫ちゃんにそんな酷いことするん...」
泣きながら家路についた。
香菜ちゃんの家から私の家まで歩いて3分程であったので香菜ちゃんのお母さんが送ってくれた。
「香菜ちゃんママごめんなさいね...はるも謝りんさい!!」
「香菜ちゃんのお母さん、ごめんなさい。」
「もういいばい!やけどね?ああいう場所に行ったらいけんよ?」
「分かった!行かない!」
こうして香菜ちゃんのお母さんは帰っていった。ここからが私にとって恐ろしい説教タイムである。家の中に入れて貰えなかった。
「はる!あんたなんで行ったらいけん所行ったん?お姉ちゃんでも行かんよ?あんたがした事は...あそこで静かに寝たかった猫ちゃん達を無理矢理起こした事ぞ?分かるか?はるが無理矢理知らん人に起こされたら嫌やろ!!」
「された事ないから分からん...」
「こんの...馬鹿たれ!!!!!!」
私は母に思いっきり頬を張られまた泣いた。そうしてブツブツと何かを言いながら塩とお祈りをされ、やっと家に入れてもらえた。父が帰ってきた後には目の前に星が出るくらいの拳骨をもらった。
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その後私と香菜ちゃんは高熱を出し、私は1日で引いたが香菜ちゃんはお墓を踏んでしまったからなのか三日三晩苦しんで謎の発疹が身体に出て辛かったそうだ。そして香菜ちゃんは猫アレルギーになり、何もない私の代わりに、話せる様になった弟が熱を出した時いつも(ねこちゃん...ねこちゃん怖いよぅ...ねこちゃんやだよう...)と悪夢を見る事になってしまった。
動物霊って特に猫って怖いな、と思い出した今日この頃でした。
作者。❀せらち❀。
最初で最後の心霊スポット?探検です。
猫にこんな酷い事をしたのには場所が関係するのかな、なんて今は思っています。
さくらさんと雛は死ぬまで大切に育てて行こうと思います。
なんでこんな昔の話を思い出したのだろう...?