私は写真に写ったり、鏡に映る自分を見る事が出来ません。
その理由としては以前、人を呪った事があるからです。
人を呪わば穴二つ。本当にその通りです。ただ、私の行った呪いは運よく成功した、と言えるものです。
私にはとある人が憎くて憎くてたまりませんでした。
私の命と引き換えにでも殺してやる、そう思う相手です。
ですが後悔はありません。そんな私の話、もしよろしければお話致します。
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「おい、早く着替えなさい。あと、母さんには言うんじゃないぞ。」
私は放心していた。気持ちが悪かった。父に服を着ろと言われ私はまるで機械の様に下着を身に着け服を着た。
母と父は共働きだ。ただ、時々父が早く帰ってくるときがある。
その時はいつも襲われていた。すごく気持ちが悪かった、嗚咽が止まらない、涙が止まらない、私はとても汚い、なんで、こんな目に合わなくてはいけないのか。助けを求めたくても、友達にも言えない。気持ち悪がられるのではないか、そう思うと自分の中に閉じ込めておくことしか出来なかった。
最初はもちろん抵抗した。だが、そのたびに振るわれる暴力が嫌で、抵抗する事も出来なくなった。
ただ、機械の様にいるだけ。私の心は次第に壊れてきた。
繰り返される父からの性的暴行。それによって私は死にたくても死ねない、そんな気持ちからいつしか自傷行為に走る様になっていた。
腕には無数の傷跡。腕だけでは足りず、足、首にもある。それをみた父が気付いて、やめてくれるのではないかと淡い期待を抱きながら。
期待は無駄だった。お構いなしに繰り返される行動。
私はいつしか、壊れた心の中で父を殺そうと思う気持ちが芽生えた。
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さて、父を殺す方法。それを考えていた時、普通に殺すのは気が晴れない。
何とか苦しめて殺そう。そこでいろんな拷問方法を調べたりした。だが、女と男。力の差は歴然だ。拷問を仕掛ける前に抵抗されてしまう、それでは意味がない。
そこで私は呪いというものに着眼点を置いた。
呪いで在れば、抵抗されずに済む。まして父はリアリスト。心霊等の類は全く信じないので、抵抗する術も知らないだろう。
私はいろんな呪いを調べた。そして片っ端から試した。なのでどれが当たりかはわからない。取り敢えず、効果があればそれでいい。そう思いながら。
中には自分の身体を傷つけながら行う方法等もあったが、私は自傷をしていた為傷つける行為などは容易かった。
そうして色々と試す中、父にある変化が訪れた。
母と父が話しているときだった。
「最近妙に目の端に黒い影がふと見えるときがあるんだ。」
「あら、飛蚊症?一度お医者様に診てもらった方がいいわよ。」
「そうだなぁ・・・。」
もしかしたら、効いてきているのかもしれない。そう思った。
父は後日病院へ行ったが、父の見え方と飛蚊症での見え方が圧倒的に違うので、原因不明との事。やはり呪いか、と私は嬉しくなった。日に日にやつれていく父。最近では襲われる事もなくなった。幻聴が聞こえ始めたとの事でついに父は精神病院で入院する事になった。
入院してからは幻聴の他にも幻覚が見え始めたとのこと。黒い影が迫って夜な夜な首を絞めてくるので追い返してやると、夕飯で使ったフォークを隠し持って立ち向かおうとしたが父が刺したのは自分の腕だったとの事でついには隔離病棟に移された。
その後父は、突然の心臓麻痺で亡くなったと知らせが来た。私は葬式に参列している最中は悲しそうに下をうつむいていた。だが、私の心は生まれて初めてというくらいに晴れやかな気持ちになっていた。
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父が死んでから数か月経った頃、私に異変が訪れた。
何やら時々視界の端に黒い影が見える様になった。私は父が同様のものが見えていた事を思い出してしまった。
だが、呪いには呪詛返しというものがある、私はそれも調べ、万全の体制をとっている。
だが、日に日に見える頻度が増していく事に恐怖を感じた。
なんで?どうして?そう思ったが、いろんな呪いを調べていく中である言葉が書いてあった事を思い出した。
『人を呪わば穴二つ』私は納得した。父を呪った代償か、と。
それからというもの私はその黒い影を毎日見ている。ただそれが見えるのは、以前のように目の端ではない。鏡やカメラで自分の姿が映し出されるとき、になった。真後ろに立っているので目の端には映らないのだ。
そして、その黒い影はずっと私を見ている。その姿は、まぎれもない、父の姿で。
作者アリー
ほんの少しの実話(まぁ、1~2%くらい?ですが。)に約98%~99%のフィクションを織り交ぜた話です。
正直に申し上げると、書いていてとても胸糞悪いと思いました。ですが、浮かんできたのでつい書いてしまいました。
たぶんこのお話でしばらくは読専になるかなと思ってます。
ネタもないですし、飽き性な所があるので・・・。
ネタが思い浮かんだらさっと置いていくかもですが(笑)