「ちょっと出掛けてくる!
写真たくさん撮ってくるから楽しみにしててよ。
いってきます!」
そう言って出掛けていった息子を、いつものように見送った。
1人の家はとたんに静かになる。
家事を済ませてソファーに座っていると、いつのまにか眠ってしまったようだ。
「母さん、ただいま」
息子に起こされて目を覚ますと、窓からは夕日が差し込んでいた。
「おかえり。早かったね。
すぐご飯の用意するから」
「ご飯は後で良いからさ、一緒に写真撮ろうよ」
「なに、珍しい」
「いくよー!はいチーズ」
息子は写真を確認して満足そうに笑っていた。
「母さん、大好きだよ」
改まって言われると照れるものだ。
「ありがとう。私も大好きよ。
…でも、どうしたの急に」
ジリリリリリリリ…
何かあった?と聞こうとしたところで、けたたましい音を立てて電話が鳴った。
「ちょっと待っててね」
電話は、息子の事故を知らせるものだった。
さっきまで話していたはずの姿はなく、そこには出掛けていった後と同じ静寂があるだけ。
テーブルの上に残ったカメラには、笑顔の息子と私の姿が映し出されていた。
作者榊
思い出と写真はいつまでも。