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中編4
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寺川さんとタケルくん

sound:34

いらっしゃいませ おでん屋でございます。

大根、牛すじ、ちくわにはんぺん...各60円で販売しております。

60円がないお客様には特別に、おでん1つにつき怖い話1つで販売しております。

今日は既にほろ酔い状態の寺川さんのお話です。

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一人暮らしを初めて数年 忙しいのと面倒なのとで

お盆にも正月にも実家に帰ってなかったんですけど、

今年は祖父が亡くなってから初めての盆だから、久しぶりに実家に帰ったんです。

葬式にも通夜にも顔出さなくて親カンカンなんでね…。

明るい内に両親と墓参りに行って、そのまま祖母の家に行きました。

普段大して関わりもしない親戚が集まって、薄っぺらい会話。

疲れるだけなのによくやるなーって思ってたら、僕の話題になったんですよ。

大学まで行かせてもらってフリーターだの

いい歳して彼女もいたことないだの

貧相で頼りないだの...まぁ、ボロクソですね。

大人のいる居間は居心地が悪いし

他の部屋や廊下は会ったこともない親戚の子達が走り回ってたんで

気分転換も兼ねて散歩に出かけたんです。

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田舎なんで時間を潰せるような所もなく

錆び臭いブランコと塗装のはげたパンダの乗り物があるだけの小さい公園で、夜ご飯の時間までボーっとしてようと思いました。

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ギィギィうるさい油の足りないブランコを揺らすのにも飽きて

座ったままスマホをいじってました。

連絡を取るような相手もいないですし、

インターネットでどうでもいいニュースを読んでいるだけでしたが

それでも結構な時間を潰せていました。

『ミツケタ』

背後から聞こえた突然の声に、ブランコをギィィと鳴らし驚きました。

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振り返ると小学生くらいの男の子がしゃがんでいました。

僕を見上げてニタニタ笑っていました。

親戚の子かと思い、適当に愛想笑いをして「帰ろうか」と言うと、男の子はニタニタしながらコクリと頷きました。

祖母の家に着くまで少し喋りましたが

あまり会話は弾まず、彼の名前がタケルだということと、カブトムシが好きだという事くらいしかわかりませんでした。

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祖母の家がもう目の前というくらいの頃、

「今日泊まってくの?」

と聞いた時にはタケル君はいませんでした。

いつの間にか先に帰ったのか、はぐれたのか...

どちらにしてもあまり興味はなく、探すこともせず祖母の家へ入りました。

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仏壇に手も合わせず、準備も手伝わず、散歩に出かけた僕に、母は怒り狂っていました。

聞き流しながら用意されたご飯を黙々と食べました。

そんなやかましい空間の中にタケル君は見当たりませんでした。

ご飯を食べてさっさと寝てしまおうと、お風呂にも入らず布団を敷き横になりました。

パリパリ...パリパリ...

眠りについてほんの数秒後、襖の方から小さな音が聞こえました。

パリパリ...パリパリ...

パリ...

パリパリパリパリ...

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布団を出て襖を開けると、そこにはタケル君がいました。

『ミツカッタ』

そう言ってまたニタニタと笑っていました。

「かくれんぼならタクヤ君達としておいで」

と、親戚の中でタケル君と歳の近いタクヤ君に全てを押し付けました。

タケル君はニタニタと笑いながらコクリと頷き、廊下へと走っていきました。

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翌朝、バタバタとうるさい足音で目が覚めました。

タクヤ君がいなくなって、探してるんだとか...。

付き合いが浅いとはいえ、子供がいなくなれば心配にはなりますから

僕も近くの川や空き地に探しに行きました。

背の高い草が生い茂る空き地でタクヤ君を探していると

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『ミツカッタ』

聞き覚えのある声と見覚えのあるニタニタ顔が草の中から出てきました。

「今相手してあげられないから、家に戻ってアスカちゃん達と遊んでてくれる?」

タケル君はニタニタ顔のままコクリと頷き、走っていきました。

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その後もタクヤ君は見つからなかったので1度昼食を食べに祖母の家へ戻りました。

玄関を開けるとすぐに、親戚のおばさんが『アスカがいないの!!』と興奮状態で話しかけてきました。

「タケル君と遊んでるんじゃないですか?」

と言うと、おばさんも母もほかの親戚も不思議な顔で僕を見ました。

『タケル君って誰?近所の子?』

そう聞かれて、初めてタケル君が親戚の子ではないことを知りました。

近所の家...といっても数軒しかないですが、

全てを訪ねて、アスカちゃんとタクヤ君、そしてタケル君を知らないかと聞いて回りました。

しかしどこの家も3人とも知らないという返事しか返ってきませんでした。

タクヤ君もアスカちゃんも、僕がタケル君に遊んでおいでと言った子達なので、偶然だとは思いつつも、変な気持ち悪さは感じていました。

結局夜になっても見つからず、タクヤ君とアスカちゃんの家族以外は祖母の家から帰ることになりました。

交番へ行方不明の届けも出したみたいですが、まだ見つかったという連絡はないんですよね。

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これで死んだじいちゃんの名前がタケルだった...とかならホラーな展開にもなるんですけど、じいちゃんヨシオなんで全然違うんですよねぇ。

まぁまた数年は帰らないだろうし、僕はもう正直どうでもいいんですけどね。

田舎だし神隠しとかかなーなんて思ってるんですよ。

その方がなんかロマンありません?

もうちょっと盛って合コンとかで話したいんですけど

どこをどんな感じにしたら

パリパリ...

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あ、こんな感じの音ですよ!

襖の中からしてた音!

これなんの音ですかね?

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ビールで上機嫌な寺川さんはタケル君おすすめのカブトムシを食べながら、ニタニタと笑いながらどこかへ帰っていきました。

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はじめまして、寺川です

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