wallpaper:4225
私はまたもや彼から花の夢を聞かされた。
この暑い夏に古めかしい喫茶店に呼び出されたは良いものの、彼は一向に来る気配がない。
メロンソーダを飲みながら待つことにする。
おそらく庭の手入れに夢中なのであろう。
カランカラン...
男は複雑な表情で現れた。
彼はフランジパニー通称プルメリアも育てている。
プルメリアは熱さにとても強い花だ。
プルメリアの花弁は5枚、それぞれ意味を持つらしいがよく聞いておらず割愛させていただこう。
そんな彼は夢について語る。
nextpage
wallpaper:4228
彼はフランジパニーの花が浮かぶ美しい海の浅瀬に立っていた。ここは日本ではない...それ程までに透き通った碧い海だったのだ。
その美しい風景に見とれていると、後ろからゆっくりとではあるが貴婦人の様な上品さを持った日傘をさした女性が歩み寄ってきた。
「あの.....」と声を発する、どうやら内気な女性の様だ。
「はい、何でしょう...?」
もう少しフランジパニーと海を眺めて居たかったが彼は彼女と会話をする事にした。
「私を...差し支えなければ...」
今までの花達と違い、中々本題を切り出さない。
彼は少し気になってこちらから問うことにした。
「差し支えなければ、どうして欲しいのでしょうか...?」
すると彼女は俯き申し訳なさ気に言う。
「私を...あなたの部屋で育てていただけませんか...日本の夏は...あの...湿度が高くて...」
日本とハワイではかなりの湿度差がある。きっと湿度の高さに苦しんでいたのだろう...
「あぁ...申し訳ない。貴方の育った場所は湿度が低かったのですね。気が回らなかった...」
「ご、ごめんなさい...我儘を言って...困らせてしまいました...大切にしてくださっているのに...。」
男性と初めて会話をする様なこの女性...何故こんなにオドオドとしているのだろう、と彼は思ったそうだ。
それを察した様に彼女はこう言った。
「フランジパニーの花言葉は...気品、陽だまり...内気な乙女...恵まれた人...です...。」
(花言葉まで調べた事はなかったな...)
「そうですか!いい勉強になりますよ。少しこの海を眺めませんか?あなたをしっかりと除湿された部屋へ移すのをお約束しますから。」
そこでようやく彼女は柔らかく微笑んだ。
「では...私が...素敵な景色を見せて差し上げます...ささやかなお礼です...目を瞑っていてください。」
彼は目を瞑る。
nextpage
wallpaper:4229
「!?」
彼と彼女は海中にいた。フランジパニーの花が浮かぶ美しい海の中に。
彼女は微笑みながら、夢なのですから息は出来ますよ、と言う。
「それを先に言ってください...息を止めてしまいましたよ。」
彼女はクスッと笑うと水面に浮かぶフランジパニーを見た。
「これは私達の故郷の海の中です。あれは昨年貴方が咲かせて下さったフランジパニー達です。」
何故ここに?と思ったが夢だ、気にすることは無い、と水面を見遣る。
「素敵な景色をありがとう。この夢が覚めた時、鉢をすぐに移すと約束します。」
「好きな女性が出来た時...私の花を満月の夜に摘み取って渡して差し上げてくださいね。」
彼女曰く、フランジパニーの花を好きな異性に渡すと結ばれるそうであるが、彼は気恥ずかしくて出来ないと答えた。
「では...貴方がこれからも恵まれた人であります様に、と願っています。」
と続ける。
花の精に幸運を願って貰えるとは有難い。今はその言葉を大切に、胸にしまった。
nextpage
wallpaper:4225
彼は一気に語った。そしてこうも言った。
「間違えて加湿をしてしまった...少しフランジパニーの元気がないから除湿器が欲しい...」
この夏の熱さは異常である為、彼はクーラーと加湿器を付けて過ごしてしまったそうだ。彼から運が逃げなければ良いが...
作者。❀せらち❀。
お花の夢シリーズ夏です。
今回はプルメリアですがあまり読んでいて、うーん...な内容でしたらコメントでお願いしますm(_ _)m...
話が上手く立てられずプルメリアはちょっと難しいな(⚭-⚭ )...と思いました...