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中編4
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「眼」最終章上

繁華街で靄を見てから2日後、僕は自分のベットでゆっくりと目を覚ました。

あの夜、自宅に帰ってから直ぐに部屋のベッドに横たわり、今に至る。

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眼の変調の“悪化”を実感して尚、自分自身の身体と心の疲労を取る事を優先した。

丸2日、貪る様に眠りに落ちていた。

身体の疲れは取れた。

しかし眼の症状はまったく変わらず、白い靄の中に僕はいた。

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窓枠に張り付いた白い塊をを見て、外の世界は雪が降っている事が分かった。

(何とかしないと、、な。)

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僕は直ぐに眼科に行く支度を始めた。

医者に罹れば、万事上手く事が運ぶ様な気がしていた。

意気揚々と出かけるも、当然付き添いがいる。

母親に頭を下げ、車での送迎と付き添いをお願いする。

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眼科で再度診察を受ける。

僕の眼の状態は、目玉を一刀両断した様だった。

眼の白い部分が横に一閃、線の様な赤い充血があった。

検査室兼診察室の様な薄暗い部屋で、30代くらいの男性担当医と二人きりになる。

顕微鏡の様なもので、眼を見られる。

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(!?)

先生が明らかな反応を示した。

「先生、何か分かりました?」

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僕の不安な気持ちが、自然と口をついて出ていた。

先生は徐に小さなメモ紙を取り出し、其処へ

〈××う×炎〉

という文字を記した。

「あなたの疾患名です。」

先生は、冷静で淡々と、しかし少し深刻な様子で診断を下した。

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「眼、見えないでしょ?白く靄がかかった様に。

かなり炎症を起こしてます。

しかし、おかしな事に○○さんには時々当院へお越しいただき、何度も診察を重ねてきましたが、所見はみられなかった。

こんな急に進行するケースは初めてです。」

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先生は首を傾げている。

「あ、あの、治るんですかね?」

不安と緊張で押し潰されそうになりながら絞り出した僕の声に先生は、聞こえているのかいないのかわからない様な態度だった。

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長い沈黙の後、先生は、

「大丈夫ですよ。

定期的な検査と点眼治療で治ります。」

そう話す先生の笑顔は、

(神様ってこんな顔なのかな、、)

と思わせる程、僕の世界に安寧をもたらした。

安心感に浸っていると、“但し”と先生は付け加えた。

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「この病気は合併症がある場合、難病として完治が難しくなります。

その可能性は低そうですが、念のため検査が必要です。

感染症の場合は、再燃が無ければ完治となります。

点眼薬を処方しますので、暫く様子を見ましょう。」

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その後、毎日の点眼と定期的な受診で、僕の眼は劇的に回復した。

1ヶ月程で、痛みと白い靄などの症状は消え去った。

眼が治ってからというもの、“変なもの”を見る事は殆ど無くなった様に思えた。

そう思いたかった。

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休んでいた携帯電話販売員のアルバイトを、久しぶりに再開した。

このバイトは、眼の不安を感じてから、客と長時間話す内容の仕事のため、事情を話し休みをもらっていた。

「いらっしゃいませ!」

多少のブランクも考え、平日にシフトを入れた。

平日は客足も少なく、相方、同期の男性スタッフと二人だけで対応している。

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今まで見たものを、ふと思い出す。

最初は“白い人”、次は“赤い女”、その次は“黒い子供”、、、

それぞれの事象に何か共通点が有るのだろうか?

異世界を見たり、人ならざる者との対面をしたり、気のせいとは言い難い現象の数々に、何か意図や法則がある様に考えてしまう。

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何かきっかけがあったはず、、

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昨年の夏、プール監視員のアルバイトから、異常は始まった。

その前、大学2年の春にこの携帯販売員の仕事に就いた。

きっかけがあるとすれば、今まさに働いているこのバイトという事になる。

一体何があった、、、?

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「おい。どした?神妙な顔しちゃって。」

同期の男(E田)が見かねて声を掛けてくれた。

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僕「え!?あごめん。

ちょっと考え事してた、、、そうだ!

E田は昨年の春、此処で働いていたよな?

当時何かおかしな事はなかった?」

E田「急にどうしたんだよ?www

昨年か、、、おかしな事っていうか、、

そう言えばあの時、お前どっかの旅行行って土産かなんか持って来なかったっけ?」

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思い出した。

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3月に友達と沖縄へ行った。

1週間程の旅行になったが、とても楽しい思い出だ。

お土産も沢山買ったが、その中に木彫りの人形が紛れていた。

買った覚えがなかったが、気づいたのは自宅に帰って荷物を整理していた時だった。

(ノリで買っちゃったかな?)

とは思ったが、正直その人形を持て余していた。

直径約20センチの細長い棒に、人の輪郭が彫り込まれた人形型の置物。

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まじまじと見ていると、吸い込まれそうな神秘的な感覚と共に、気持ちが悪くなる程の禍々しい雰囲気を醸し出している。

置物、インテリアとしても今ひとつであった。

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各バイト先に、変わった置物買ったよ!という様なネタで、何処かに置かせて貰えないかという浅はかな考えがあった。

しかしどのバイト先でも、その木彫り人形はネタどころか奇異の目で見られた。

話題にはなったが、“何か良くないもの”というイメージが強くなっていくだけだった。

お土産の引き取り手は見つからず、結局木彫りの人形は僕の部屋のクローゼットへ眠る事になった。

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捨てるのも可哀想な気がした。

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今思えばその置物を部屋に置いてから、金縛りに初めてあい、誰かの声が聴えたり部屋の中で変なものを見ている。

それまで全く起こらなかった事が、ある事をきっかけに急に起こり始める。

そんな感覚が昨年の春からを考えると、ピタリと当てはまった。

続く、、

Concrete
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