「母さん俺だよ。ヤバイことになってさぁ....。」
休日の朝、自宅のベッドでゴロゴロしていた吉村さんが知らない番号の電話に出ると、相手の男は話し始めた。
吉村さんは男で、まだ独り者である。
ましてや電話に出た時、「もしもし」と地声で言っている。
...どんだけピヨってんだこいつ...
電話口で吹き出しそうになるのをこらえながら、吉村さんは状況を整理した。
...オレオレ詐欺かぁ。家の電話にかけないと成功率低いんじゃねえの?
そう思いつつ吉村さんは、相手の矛盾点をついてからかうことにした。要するに暇だったのだ。
「もしもーし、俺はおめぇのお母さんじゃねえぞー。」
「ヤバイよ母さん早く逃げてスギウラはしんでなかったんだあんだけ母さんとオレで刺して刺して刺して刺して刺して刺して刺してでも全然死んでなかったんだ母さんの方に行くっていってたから俺はもうダメだけど母さんは逃げ」
吉村さんは通話を切り上げスマートフォンを枕の横に置いた。
...なんだよ。気持ち悪いな。
スマートフォンがまた震えだしたので、吉村さんは液晶を確認した。先程の番号からの再着信だった。…このまま出ないと負けた感じがする。せっかくの休みなのにビビらされて1日モヤモヤするのは嫌だ。
意を決した吉村さんは通話ボタンを押した。
「お前しつけぇよボケェ!殺すぞ?!」
「スギウラいったよおおおぉぉおおぉおおおぉ」
ドンドンドンドン!!
玄関ドアを叩く音。電話は切れている。
ドンドンドンドン!!
負けを認めた吉村さんは、ノックが収まるまで布団に潜り込むことに決めた。
作者津軽
久しぶりに更新。