私は今年26歳になる、
ごくありふれた独身女性です。
現在は実家で、両親と一緒に暮らしてます。
実家はかなり田舎で、
近くにコンビニもありません。
ですので、仕事が休みのときは、
隣県の賑やかな街に出掛けたりしてます。
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この間の休みの日も、
一人でぶらっと遊びに出掛けました
ネットとかでチェックしたオシャレなカフェで
コーヒーを飲んだり、ブティックで洋服とかを
見たりしてました。
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あちらこちら歩いていると、いつの間にか道に迷ってしまったようで、
あ、どうしよう、と、
人通りの少ない路上で一人途方にくれてました。
すると、
白いティーシャツにジーパン姿の男性が
前から歩いてきてます。
年齢も私とあまり違わないようでした。
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彼は右肩に
かなり大きめな黒のトートバッグをかけ、
ゆっくりとした足取りで歩いていました。
私は勇気を出して、彼に声をかけました。
「あの、すみません」
男性は少し驚いた様子で、私を見ました。
「道に迷ってしまったみたいなんです。
大通りに出るには、
どう行ったらいいんでしょうか?」
私は少しどきどきしながら、
一気にしゃべりました。
男性は少し微笑みながら、
丁寧に道を教えてくれました。
私はしっかりとお辞儀をすると、
その道をたどるように歩き始めました。
爽やかでとても素敵な男性だったので、
何かきっかけでも、と思ったりもしたのですが、
躊躇していました。
というのは、
彼に近づき道を聞いているあいだ、
何というか、生ゴミのような
悪臭が漂っていたのです。
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私は男性から言われたとおりに、
狭い道を歩きました。
そして次の角を曲がろう、としたときでした。
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あまり周囲を見ていなかったからか、
私は曲がり角から出てきた通行人に
まともにぶつかってしまったのです。
その拍子でその方はよろめき、
肩にかけていた大きめのトートバッグを
道に落としたのです。
「あ……す、すみません」
私がそう言ってその方を見ると、
それは先ほどの男性でした。
彼が慌てて
トートバッグからぶちまけられた
モノを拾おう、としてたので、
私も一緒になって拾おうと、
落ちたモノの方を見た瞬間、
私の背中に冷たいものが
電気のように走りました。
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それはビニールに入れられていたのですが、
間違いなく人間の手首や足先で、
道路脇まで転んでいったのは、
紛れもない人の首だったのです。
たまたま通りかかった女性の悲鳴で、
辺りは騒然となり、
男性と私の周りに小さな人だかりができました。
男性は通報され、
近くの派出所から来た警察官に
連れて行かれました。
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後から聞いた話では、
男性は近くのアパートに住む者で、
ある女性と同棲していたのですが、
痴話ケンカが発展し激情にかられ、
彼女の首を絞めて殺してしまったそうです。
その後、
バスルームで彼女の遺体をバラバラにし、
押し入れに隠していたのですが、
悪臭に耐えきれず、とうとう、
トートバッグに入れて、
捨て場所を探しに歩き回っていたそうです。
作者ねこじろう
こんにちは、怖い話と猫が大好物な男です
日常の中に潜む恐怖を表現できたら、と思ってます