「まだ11月の頭っていうのに真冬並みに寒いよ…」
私は文句を言いながら玄関の扉に手を掛けた。
ドアノブも氷のように冷たくなっていた。
「あれ、鍵空いてるじゃん」
両親も姉も出かけると言っていたのに。
時刻は14時を過ぎたところだ。
私はまだ帰ってきてないだろう、と思っていた。
「ただいま〜、もう冬みたいに寒くて嫌になるね〜」
いつもとは違うくて、返事は返ってこない。
私の家族は二階にいようと''おかえり''くらいは返ってくるものなのに。
「こたつこたつ〜」
すこし疑問に感じたものの、寝てるんだろうという結論に至った私は、寒くて耐えられず居間に向かった。
扉の向こうからは微かに聞こえるテレビの音。
返事も返ってこなかったことから、家族は私が帰ってきていることに気づいていないんだろう。
ふといたずらごころが湧いた。
テレビの前に座っているのは姉だ。
そっと後ろから私は近づき、
「だーれだ!」
声色を少し変え姉の目を塞いだ。
「やだなぁ、やめてよ」
「当てるまで離しません!!」
「冷たいよ、手」
「当てたらいい話だよ」
勿論家族の中でこんなことするのは私くらい。
それは姉も分かっていると思う。
「もう、こんなことするのはーーーー」
「ただいまー、もう外寒すぎ」
え…?
聞き間違えなどではない。
玄関から聞こえた姉の声。
私の目の前にいるのは誰だ?
いますぐこの場から離れたい。
助けて、すらの声も出ない。
静寂の中に、階段を上がっていく姉の足音だけが聞こえる。
「ひっ」
私よりも冷たい、姉のような誰かが私の手を掴む。
「だーれだ
当てるまで、離さない」
作者いかるど
誤字気をつけなきゃ!、