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…
もう…そんな季節になったんだね…
…
君はセンスが良いから、ツリーの飾り付けがいつもとても綺麗だ…
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…
手作りのリースも、素人の手作りだって言わなければ、誰もが買って来た物と見間違う出来上がりだね。
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このスノードームは、君にプレゼントした物だけど、あれから君は春でも夏でも秋でもずっと…
これをベッドの棚に置きっ放し。
…
そして、時々ネジを回してジングルベルを聴いている…
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…
…
…
そんなに気に入ってくれて、僕は本当に嬉しい。
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君が僕を喜ばせてくれる事に悦びを感じるなら
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僕も君の笑顔を見る事だけが大きな悦びなんだよ。
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生き甲斐と言っても過言ではないほどに……
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それよりも、今夜は凄いご馳走を作ってるんだね!!
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そうだね。
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クリスマスイブだから…
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オーブンからはお肉の焼ける香ばしい良い匂いが漂って来る。
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シャンパングラスも並べ、赤と緑のそれぞれの布に銀色の糸で雪の結晶を刺繍した、君の手作りの、お気に入りのランチョンマットもテーブルの上に用意して…
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…
毎年クリスマスイブのこの日にだけ登場するこのマット…
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気に入ってるのは君だけじゃなくて、僕もとても気に入っているんだ。
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洗面台の横のタオルをしまっている作り付けの棚の5段ある全部に花の刺繍をしたリネンのカーテンを見付けた時は、思わず君らしくて微笑んでしまったよ。
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毎晩遅くまで起きて、何をしてるのかと思ったら……
僕のセーターを編んでくれていたと知った時は、涙が出るほど嬉しかった。
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生成りの、フィッシャーマンセーターなんて…時間がかかっただろうに…
……
所々、編み目が緩かったりキツかったりするのも、君らしくて…
僕の一生の宝物になったんだ。
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特に器用ではないけれど、君はいつも一生懸命で…
君を知っている人から見たら、それぞれの立場から、愛すべき存在の友人、子供、そして女性…と、思っているんだろうね。
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…
いつだったかな?
…
何年か前の同じ季節。
…
君と仕事帰りに待ち合わせをしてレストランで食事をした後、2人でイルミネーションを見に行ったね。
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僕のコートのポケットで君と手を繋いだまま入れて暖めたら、君は僕の顔を見上げ
『寒いけど…
あったかいね!』
頬と鼻を赤らめながら、嬉しそうにそう言ったね。
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だから、僕は意を決して君に伝えた。
『そろそろ籍を入れないか?』って…
…
君は急に立ち止まり、涙を浮かべて
コクリと頷いたね。
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そして、約束のクリスマスイブの日。
……
僕はスノードームと、君に渡す指輪を入れた紙袋を抱え、君との待ち合わせの場所へ走ってたんだ。
…
仕事で同僚がちょっとしたミスをして一緒に修正したりをしていたら、待ち合わせの時間に遅れてしまっていたから…
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…
…
早く君の所へ…
…
…
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…
…
1分でも早く、君の所へ…
……
………
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…
…
君が赤鼻のトナカイになる前に、僕が暖めてあげたかったから……
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……
……
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*********************
もう……
……
泣かないで…
………
良いんだよ?
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僕は君と出会えて幸せだった…
……
もう、十分過ぎる程の幸せを君にもらったよ?
…
だから今度は、君が幸せになる番なんだ。
…
優しい君の事だから、僕に遠慮をしてしまう事が、心配だったんだ…
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君が作った美味しい手料理、きっとその人も喜ぶよ。
…
知ってるかい?
料理って、作った人の想いが一番のスパイスなんだって
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…
美味しく食べさせたいって願いが、料理を美味しくさせるんだよね。
……
君の作る料理には、そんな優しい想いが詰まっているんだもの。
美味しくない訳がないよね?
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…
…
もう、泣かないで良いから…
…
君は、君の幸せの為に、差し伸べられた暖かい手を握り返すだけだよ?
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…
……僕は……
…
いつからこうして君の傍にいるのか…
…
それすら、分からなくなってしまったんだ……
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…
ただ、泣いてる君が心配で…
…
愛する君を一人にしたくなくて…
…
それだけの思いで君の傍で君を見守って来ただけなんだ……
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さぁ、冷たくなった彼を、暖かいこの部屋に入れてあげて
…
そして、暖かい料理で身体の内から暖めてあげて
…
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…
僕は、もう行くね…
…
いつか、又逢えるかもしれない…
…
そう信じて…
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…
…
チラチラと、曇った夜空に小さな雪が舞い落ちて来る。
…
その中から一筋の光が僕に向い差し込んで来る。
僕は眩しい光に両手を伸ばした…
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…
光は静かに
僕の身体を包み込み
…
ゆっくりと、空高くに運んでくれる…
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……
……
……本当はずっと君と居たかった
……
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……
……
……君と笑って居たかった
……
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……
……
……僕が君を、幸せにしたかった……
……
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…
…
光に包まれ、天に昇って行く僕を、ほんの一瞬、君が窓の向こうから見たような気がした…
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……
……
僕の姿が空に吸い込まれる瞬間……
……
……
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……
僕と君の想いの詰まったスノードームが
パリン……
と…
静かに割れた……
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…
…
いつか又逢える時まで……
…
…
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さような…ら…
……
and……
…Merry
…Christmas
………
作者鏡水花
2015年12月に投稿しました作品の、再投稿になります。
色々な想いを経て、この話を書きました。
目の前にいる方を、大切にしてください。
子供でも…
親でも…
奥様でも…
恋人でも…
友達でも…
命は永遠ではないから…。