【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

短編2
  • 表示切替
  • 使い方

愛しのイレーナ

「おはよう、レイラちゃん。今日は天気も良いし、ママとお散歩しましょう。」

そう言ってベットから小さい体を抱き上げ、長く細い少しウェーブがかかった赤毛をかき分けて顔を覗く。

「まるでお人形さんの様だわぁ。」

感嘆の声をあげ、深い溜息をつくのは母親のミーナ。

一人娘のレイラを溺愛している。

「さぁ行きましょう‼」

水色のフリルが印象的なドレスを纏い、髪を1つに結ったレイラを、ミーナは抱きかかえて外に出た。

どうやらレイラは歩けないらしい。

それだけではなく喋る事も出来ないようだ。

ミーナがどんなに話かけても、声が返って来る事はない。

周りの人はミーナをいつも怪訝そうな目で見る。

それに気がついても、ミーナはレイラがいつか喋れるようになる為に、話かける事をやめなかった。

そして、いつしかミーナは周りから孤立した存在になっていった。

separator

「やだわぁ…またあの人よ…」

「人形に向かって話続けて気味が悪いわ」

小声で通りすがりの女性が言うのを、木々の間から聞いている男がいた。

男の名前はエリック。

ミーナの夫である。

彼はミーナを見守るしかなかった。

もし、共に歩けば自分も気味悪がられると思ったからだろう。

いつも離れた場所から見ていた。

家に帰る時も、なるたけ人に会わないよう、注意を払った。

しかし、彼女を見捨てる事は出来なかった。

separator

その日の夜。

このままではいけない。彼女のため、ついにエリックは行動に出た。

shake

「キャアアア‼レイラ‼」

「黙れミーナ‼もういい加減にしろ」

「レイラは私の子よ‼返して‼」

「ミーナ、受け入れるんだ。レイラはもう死んでるんだ。」

「そんなはずはないわ‼ちゃんと心臓の音はしている‼生きてるわ‼」

「ああ。確かにこの子は生きている。だが…」

「ほら、生きてるじゃない‼」

叫ぶミーナにエリックは非情の銃口を向ける。

全く状況がわからないミーナ。

いくら叫ぼうとも、エリックの態度が変わる事はない。

「あの世でレイラに会えるといいな」

ミーナに小さな穴が空いた。

転がるミーナを見下ろし、レイラだった少女を抱きながらエリックは言った。

「この子はイレーナ。僕の妹さ、歳をとりづらい病気にかかっているんだよ。レイラは産まれたと同時に死んでしまったんだよ。初めは君を悲しませないようにと思ってたんだが、君が段々おかしくなって周りから変な目で見られ始めた。僕はイレーナまでそんな風に見られるのは嫌だったのさ。」

今まで表情1つ変わらなかったイレーナの口角が上がる。

その頬に口付けをするエリック。

「今度は僕と遊ぼう。愛しのイレーナ。」

Concrete
コメント怖い
0
3
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ