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短編2
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ビー玉

社会人になって2年。

俺は今日、久しぶりに大学の時の友人Aと会う。

仕事終わりにお互いの職場の近くの居酒屋で会い、上司の愚痴やお互いの近況を話し合った。

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程よく酔いが回ってきた頃、Aがさっきまでの気の良さそうな笑顔から一変。

神妙な面持ちになりながら、俺の耳に顔を近付けてきた。

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「大学の時、同じ授業受けてた奴でCって居ただろ?」

俺は頷く。Aは、周りを警戒しつつ話を進めた。

「風の噂で聞いたんだけど、そいつ昨年の今頃に事故で死んでたんだよ」

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何を言い出すかと思えば。

事故で亡くなるなんて、今時珍しくない。

Aの神妙な表情から期待していたが、俺は拍子抜けして前のめりになっていた体を元に戻そうとした。

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「Cのやつ、死んだ時ビー玉を握ってたらしいぜ」

俺はAの言葉に、再び上体を前のめりにした。

「仕事帰りに、道路に飛び出してトラックに跳ねられて死んだって聞いた。手には真っ赤なビー玉が握られてて、目玉が潰れてたらしい」

俺はCの死に姿を想像して、背筋に冷たいものを感じた。

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Aは上体を戻し、一息つくように酒を口にした。

俺も背もたれに体を預け、酒を喉に流し込む。

「意味分かんない死に方だよな、ビー玉だぜ?」

そうだな、と返事をしながら、俺達の会話はまた上司の愚痴や近況のことに戻っていった。

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会計を済ませ、俺達は店を出た。

目の前の車道を車が走り、風が前髪をさらった。

ふと向こう側の歩道に目を向けると、赤いワンピースを着た少女が1人、何やら物を落としたようで車道の方に身を乗り出していた。

周りに親らしき人も居らず、夜中のビル街に1人きりの少女が妙に気になった。

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俺は、Aに少女がいると声をかけた。

しかし、Aには見えていないようで辺りをキョロキョロ見渡すばかり。

もう一度少女の方を向くと、少女は車道に飛び出していて何かを拾うようにしゃがみ込んでいる。

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俺は思わず少女の元へ駆け出した。

「おい!何してんだ!!」

Aの呼び声も気に止めず俺は少女の所へ走る。

少女と目が会った瞬間、耳を劈くようなクラクションとブレーキ音に我に返った……が、遅かった。

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目が合った時、少女は笑っていた。

新しい獲物が引っかかったのを喜ぶように、両の口角を耳の上まで引き上げ、真っ赤なビー玉のような目でこちらを見つめていた。

きっと、Cが最期に見た景色も同じだったのだろう。

真っ暗な視界の中、掌に小さくて冷たく丸い感覚を憶えながら、俺の意識は遠ざかっていった。

Concrete
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