中編3
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中田くんと僕

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僕と、友人の中田くんのお話。

何年か前の話。

大学に入ったばっかりだった。

その春、カニバリズムに関する洋画が流行っていた。

早速、僕は映画に影響を受けていた。

友人3人との宅飲みで、映画についての私見を暑苦しく語っていた時だった。

友人の一人、中田くんがポツリと漏らした

「日本にも、割と食人に関する文献はあるよ。」

そう言って、彼は手酌でビールを呷る。

僕はと言うと、酎ハイやらビールやらを散々チャンポンし、フワフワした心持ちで話を聞いていた。

僕は安ワインを呷った。

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ガタンという音で、僕の意識は覚醒した。

酔って、ウトウトしていたのだろう。

目をあけようとする。

目に光は届かない。

目隠しされてる?

悪戯?

なんで?

僕は混乱した。

shake

手足も縛られているようで、目隠しは外せない。

shake

友人に助けを求めようとしたが、口にも布が噛ませられていた。

悪ふざけにしては、たちが悪い。

shake

とにかく、遮二無二もがいたが、拘束は解けなかった。

辺りに友人達の気配はなかった。

ふざけるな!

心の中で、友人達を罵倒した。

有らん限りを心の中でぶちまけ、少し冷静になった。

しばらくすると、足音がした。

コツコツと、固い床を歩く音。

僕の家はクッションフロアだから、こんな音しないはずだ。

じゃあ、拉致された?

他の3人は?

悪戯ではなく、犯罪に巻き込まれた?

shake

僕はまたパニックになり、とにかくもがいた。

しかし、拘束は解ける気配はない。 

誰かが近づく。

指がゆっくりと、頬をなでる。

無言。

荒い息遣いだけを感じる。

頬を撫でる手とは、別に硬く冷たいものが腹部にあたる。

刃物を想像して、背筋が凍る。

刺される?

そして、ゆっくりと冷たいモノは横に動いた。

鈍い痛みを感じた。

傷はごく浅いと思われた。

僕を撫でていた手が、目隠しと口枷を外す。

男がいた。

黒い。

黒以外、なにも男についてはわからない。

そして、僕の腹部には、血の赤があった。

声は出なかった。

口元に指と思われるモノが押し当てられる。

僕の血が付いていた。

口腔内に無理やり押し込まれる。

クチュリ

僕は指を舐めた。

生臭く、独特の匂い。

生きてる味がした。

今度は太ももを軽く斬られる。

「んっ。」

少し痛くて、声が出た。

また、男は血の付いた指を、僕に舐めさせる。

そして、男も僕の血を舐めた。

クチュリ

クチュリ

僕と男の息遣いが、どんどん混ざる。

僕の命が浸食されていく感覚。

徐々に、食べられてる感覚。

補食され、逃げられない。

男は暫く、楽しんだ後

刃物を僕の胸に深く突き立てた。

僕は、感じる。

僕は

心臓も

眼も

食べられてる。

男の血肉になっていく。

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パリンという音がして、僕は再び覚醒した。

生きてる?

今度は、電気のついた明るい、僕の自室だった。

僕は酔っ払って、居眠りしたようだ。

指先に、鋭い刺激を感じた。

先ほどの音は、ワイングラスが割れた音だったようだ。

破片で、指が切れていた。

少しだけ、血が滲む。

ただ、傷は指のそれだけだった。

「あぁ。」 

先程のが夢だと分かり、安堵の息をもらす。

中田くんが、僕を見ている。

僕は何故か、怪我した指を差し出した。

中田くんは指を口に含むと、血を舐めとった。

クチュリ

僕の鼓動は、はちきれそうになる。

僕の頬を、軽く中田くんの指先が掠めた。 

僕の身体は、軽く震えた。 

予感。

中田くんの白い指先が、僕の腹部と太ももを軽くなぞった。

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私は好きです。ロマンチックなお話だと思うなー。

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正直よくわからないジャンルではあるけど…
まあ、怖いというよりは気持ち悪い…

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