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「なぁ、地獄はあると思うか?」
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俺は女に聞いた。
女の名前はマキだっけ?いや、サキだっけ?
「これからセックスしようって時にするような話し?」
赤い口紅で飾られた唇を、女は皮肉っぽく僅かに歪めた。
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安いラブホ。
クラブでナンパした、しょーもない女。
糞な俺には全てがお似合いだ。
見るでもなく付いているテレビからは、ニュースが流れてる
どこぞの政治家の失言とか、芸能人の不倫とか。
俺には関係ないし、
どうでも良い。
タバコを吸いながら、シミのある床を意味なく眺めてた。
湿気たホテルだな。
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「気持ちよくして、天国みせてよ。」
女は俺に背中を向け、服を脱ぎ捨てながら不意に言った。
しょーもない。
俺も服を脱ぎ捨てた。
ベッドに腰掛けて、俺は薬を飲んだ。
MDMAの含まれた錠剤で、いわゆる幻覚剤だ。
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本当に、この世は地獄だ。
その地獄から救ってくれる薬。
有名な逸話に出てくる、お釈迦様が垂らした蜘蛛の糸みたいだ。
女にも口移しで薬をやった。
口紅の赤い色が俺にも移る。
柔らかくて、温かくて。
とても、気持ちがいい。
しばらく、俺は女の身体を貪った。
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どれくらい経ったか。
何時だろう。
鼓動が早い。
身体が熱い。
あれ?
目の前が凄い眩しいな。
壁に穴なんか開いてたっけ?
あ、穴から虫が入ってくる。
虫を殺さなきゃ。
凄い虫が沢山だ。
女の肌の上にも、虫がいる。
怖い。
気持ち悪い。
身体がだるい。
思うように動けない。
虫を殺さなきゃ。
熱い。
俺は必死で虫を殺した。
無我夢中だった。
息が苦しい。
汗が酷く出る。
目の前が霞んできて、段々意識がなくなっていく感じがした。
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ーーー目が覚めた。
ホテルのベッドの上。
ため息を吐いた。
薬を使うと、後がダルいんだ。
女は居ない。
帰ったのか。
タバコに火をつけた。
テレビを付ける。
朝のニュースがやっていた。
俺のいるホテルの外観が一瞬映る。
えっ?
俺は思わず声を上げた。
キャスターが伝える
「先日、若い男女が薬物の中毒症により命を落とすという、痛ましい事件が起きた現場です…」
尚も話しているが、衝撃の余りよく理解できなかった。
床のシミをみて、まさかと思う。
ここは事件の現場?
不吉過ぎるだろう。
やめてくれよ。
何も説明されてないぞ。
クレームつけないと。
部屋代なんか払わないからな。
死んだ奴は、誰なんだ?
迷惑な奴らだ。
その時、テレビに俺の顔が映る。
俺は思い出した。
shake
ーー死んだのは、俺達だ。
shake
フラッシュバックする。
目の前が真っ暗になった。
shake
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「なぁ、地獄はあると思うか?」
俺は女に聞いた。
「気持ちよくして、天国みせてよ。」
作者あお-3