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短編2
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蜘蛛の糸

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「なぁ、地獄はあると思うか?」

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俺は女に聞いた。

女の名前はマキだっけ?いや、サキだっけ?

「これからセックスしようって時にするような話し?」

赤い口紅で飾られた唇を、女は皮肉っぽく僅かに歪めた。

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安いラブホ。

クラブでナンパした、しょーもない女。

糞な俺には全てがお似合いだ。

見るでもなく付いているテレビからは、ニュースが流れてる

どこぞの政治家の失言とか、芸能人の不倫とか。

俺には関係ないし、

どうでも良い。

タバコを吸いながら、シミのある床を意味なく眺めてた。

湿気たホテルだな。

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「気持ちよくして、天国みせてよ。」

女は俺に背中を向け、服を脱ぎ捨てながら不意に言った。

しょーもない。

俺も服を脱ぎ捨てた。

ベッドに腰掛けて、俺は薬を飲んだ。

MDMAの含まれた錠剤で、いわゆる幻覚剤だ。

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本当に、この世は地獄だ。

その地獄から救ってくれる薬。

有名な逸話に出てくる、お釈迦様が垂らした蜘蛛の糸みたいだ。

女にも口移しで薬をやった。

口紅の赤い色が俺にも移る。

柔らかくて、温かくて。

とても、気持ちがいい。

しばらく、俺は女の身体を貪った。

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どれくらい経ったか。

何時だろう。

鼓動が早い。

身体が熱い。

あれ?

目の前が凄い眩しいな。

壁に穴なんか開いてたっけ?

あ、穴から虫が入ってくる。

虫を殺さなきゃ。

凄い虫が沢山だ。

女の肌の上にも、虫がいる。

怖い。

気持ち悪い。

身体がだるい。

思うように動けない。

虫を殺さなきゃ。

熱い。

俺は必死で虫を殺した。

無我夢中だった。

息が苦しい。

汗が酷く出る。

目の前が霞んできて、段々意識がなくなっていく感じがした。

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ーーー目が覚めた。

ホテルのベッドの上。

ため息を吐いた。

薬を使うと、後がダルいんだ。

女は居ない。

帰ったのか。

タバコに火をつけた。

テレビを付ける。

朝のニュースがやっていた。

俺のいるホテルの外観が一瞬映る。

えっ?

俺は思わず声を上げた。

キャスターが伝える

「先日、若い男女が薬物の中毒症により命を落とすという、痛ましい事件が起きた現場です…」

尚も話しているが、衝撃の余りよく理解できなかった。

床のシミをみて、まさかと思う。

ここは事件の現場?

不吉過ぎるだろう。

やめてくれよ。

何も説明されてないぞ。

クレームつけないと。

部屋代なんか払わないからな。

死んだ奴は、誰なんだ?

迷惑な奴らだ。

その時、テレビに俺の顔が映る。

俺は思い出した。

shake

ーー死んだのは、俺達だ。

shake

フラッシュバックする。

目の前が真っ暗になった。

shake

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「なぁ、地獄はあると思うか?」

俺は女に聞いた。

「気持ちよくして、天国みせてよ。」

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