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中編3
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エンキリサマ

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初めに断っておくが、この話には幽霊や妖怪は出てこない。

所謂、ヒトコワの話し。

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人の悪意は怖い。

誰から悪意を向けられているか、貴方は考えた事が有るだろうか? 

俺自身、誰から悪く思われているか。。。

想像すると、嫌な気分になる。

『人の悪意』を俺自身が実感したのは、5年前のある出来事がきっかけだった。

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ーー5年前の夏。

高校生2年、もう少しで夏休みという7月の半ばの事。

「エンキリサマ?」

友人Aから面白そうな噂を聞いた。

人との悪縁を断ち切るおまじないのようなモノ。

エンキリサマ。

例えば

浮気をする恋人と縁を切って別れたい

イジメっ子との縁を断ち切りたい

などのお願いを叶えてくれるらしい。 

その方法は簡単で、願い事を書いた紙をとある神社の御神木に開いた穴に入れるだけ。

但し、他の人に紙を見せてはいけない事と、穴に紙を入れる姿を見られてはいけないらしい。

Aがエンキリサマにお願いしたところ、縁を切りたい相手が転校したとか。。。

まあ、転校云々は偶然だろう。

ただ、話しに興味を持った俺は、早速試してみる事にした。

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器の小さい話しではあるが、ゲームソフトを借りパクした知り合いとのエンキリをやってみる事にした。

バイトして貯めた金で買ったゲームを借りパクして、涼しい顔をしている奴にむかついていたからだ。

夜中の2時。

俺は神社に向かった。

ザク

ザク

ザク

ザク

神社の境内を歩く足音が、ヤケに大きく思えた。

暑い。

じっとりと、汗が出る。

御神木が見えた。

携帯のライトを御神木に向けると、穴があった。

地獄の入口のような、漆黒の穴。

割と穴は深そうだ。

紙を入れた。

さて、帰ろうとした、その時

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shake

ガサガサ

shake

ガサガサ

shake

ガサガサ

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誰かが来た!

俺は身を隠した。

隙間から覗いた俺は、やって来た人物の正体に驚きを隠せなかった。

それは、神社の宮司だった。

宮司は、穴に手を突っ込んだ。

そして、穴に入っていた紙を取り出す。

紙は思ったより、多かった。

俺は宮司が紙を処分するものかと思ったが、事実は違った。

宮司は紙を読み始めた。

懐中電灯で照らしながら

ニヤリ

懐中電灯で薄暗く照らされた宮司の唇は、醜い笑みを浮かべていた。

時折、

クッ

クッ

と、くぐもった、忍び笑う声が聞こえる。

一通り紙を読み終え満足した宮司は、境内の社務所の方へ消えて行った。

「エンキリサマ」への願い事を書いた紙を持ったまま。

宮司の姿が見えなくなったのを確認すると、その場から走って逃げ出した。

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ーーそして、数日後。

俺はゲームを借りパクした奴と些細な事から喧嘩になり、相手から一方的に絶縁を言い渡された。

好きなアニメを奴が批判した事で、俺がキレたのが原因だ。

ゲームソフトは返ってこないだろう。

エンキリ出来た訳だ。

俺は色々な事が怖くなった。

人の不幸を笑って楽しむような人物が神職に就いている事。

「エンキリサマ」への願い事が叶った事。

そして、

エンキリサマへの、願い事をする人の多さに。

人は少なからず、悪意を向けられながら生きている。

但し、それを意識するか、しないかの違いなのだ。

俺は自分自身に向けられるている悪意を想像して、怖くなった。

そう。

俺も誰かに「エンキリ」されているかもしれないのだ。

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珍味様

初めまして。
コメントありがとうございます。

お褒め頂き、本当に、本当に、ありがとうございます。

お読み頂き、ありがとうございました。

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