「久しぶり!元気ー?」
ある日、中学の時仲の良かった友人からメールがきた。
最後に連絡を取り合ったのは、高校の時だったか。
もう何年も前の事だった。
「今度ご飯食べに行こうよ」
久々の友人に話したい事は沢山あり、私はすぐに快諾した。
会う日、当日。
友人は少し遅れてやって来た。
友人は中学の時と殆ど変わっておらず、変わったのは髪型と髪色位だった。
明るい性格はそのままで、中学の時の思い出話から、互いの近況報告まで、楽しく会話をした。
とても楽しい時間だったが、私には1つだけ気になる事があった。
それは、話している最中、友人が目を合わせてくれない事。
まったく目が合わないという事ではないが、目が合おうとすると、素早く反らされたり、殆どが目が泳いでおり、私ではないどこかを見て、話している事が多かった。
中学の時の友人は、人の目を真っ直ぐ見て話す人だったので、この友人の変化に、私は不審に思ってしまった。
「まるで、隠し事をされてるみたい」
そうは思ったものの、私は聞けなかった。
とても楽しいはずの時間の中、心ではもやもやとしながら、私は過ごした。
友人と久々に再会した、数日後。
「相談したい事があるから、会える日あるかな?」
友人からメールが届き、またも、私は快諾した。
とあるファミレスで会う約束をし、着くと、友人と黒いスーツを着た男性が待っていた。
友人から何も聞かされていなかった私は、驚き、戸惑った。
その様を見て、男性は自己紹介をしてくれた。
どうやら、友人の仕事の上司であるらしい。
席に着くと、どんな仕事をやっているかを男性と友人から聞かされた。
上手くオブラートに包み、良い仕事のように話していたが、結論を言うと、ねずみ講だった。
「完璧にサポートするから、それくらいの覚悟を持って、貴方に会いに来ました」
「最初の出資は直ぐに回収できます。これほど儲かる仕事は今だけ」
「急かしているわけじゃないけど、一緒にやりたい」
「不安かもしれないけど、私達が支えるから、安心して」
など、様々な事を言われた。
「考えさせて欲しい」
と言ったものの、
「思いきりが大事だ」
と言われ、勝手に契約書を準備された。
仕方なく、最初の出資金はかなり高額だったので、お金を借りにいく振りをして、逃げ出した。
友人との連絡先を全て削除し、変わってしまった友人を思い、一人泣いた。
悲しみが薄れ、心の傷が癒え始めた頃、何となく寝付けずに夜更かしをしていた。
時刻は午前二時を過ぎ、家族は皆寝ていた。
「そろそろ寝ないと」
そう思い寝転がるが、なかなか寝付けない。
何度目かの寝返りをした時、
「ピンポーン」
という音が、寝静まった我が家に響いた。
「聞き間違えかな」
と、思ったのも束の間、
「ピンポーン」
と、再度響いた。
どうやら、聞き間違いではなさそうだ。
しかし、こんな深夜に訪れる人は、まずいない。
非常識にも程がある。
「酔っ払いが間違えてるのかな」
仕方なくベッドから出て、一階へと向かう。
インターホンを見ると、画面が光っており、来客を知らせていた。
画面を見ると、真っ先に目に入ったのは、茶髪。
別れてしまった友人が染めていたような、明るい茶色の髪が、右へ左へゆらゆらと揺れていた。
肝心の顔や身体は、ノイズが掛かったようにざらついており、見えない。
通話ボタンを押し、
「家、間違えてますよ」
そう一言いい、終了を押した。
部屋へ戻ろうと、踵を返した瞬間、
「ピンポーン」
と鳴り、インターホンが光った。
画面には、先程と同じ、茶髪とノイズ掛かった人が、ゆらゆら揺れていた。
軽くため息を漏らし、
「間違えてますよ」
と、もう一度言った。
しかし、聞こえているのか、いないのか、返事をする事なく、ゆらゆらと揺れ続けている。
「何時までも付き合ってられない」
と思い、終了ボタンを押そうとした時、
「ぁあああああああぁぁぁぁっはっはっはっはぁぁぁぁぁ!」
女性の叫び声のような、笑い声が家中に響き渡った。
驚きの余り手を引っ込め、ただただインターホンと、揺れ続けている人を見つめ、響き渡る叫び声のような笑い声を聞いていると、当然、家族が起きてきた。
「近所迷惑だ」
と若干怒りながら、親が玄関を開け放つと、今まで響いていた叫び声のような笑い声が掻き消えた。
そして、インターホンに映っていた茶髪の揺れていた人は、何処にもいなかった。
作者セラ
詐欺等、お気をつけ下さい。
毎回の事ながら、誤字、脱字あったらごめんなさいm(__)m