「暇だなぁ、、、もう飽きたよこのゲーム」
コントローラーを投げながら、ヒロキは呟いた。
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「もう、ボスもステージも全部クリアしたもんね。」
カツキが答えながら大の字に寝そべった。
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小学生の夏休みも、時間を持て余し過ぎると苦痛にしかならない。
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他の友達は旅行に行ったり、塾に行ったり、それぞれの生活を送っている。
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「新しいゲームを買う金は無いし、みんな旅行や塾だもんなぁ」
ヒロキはゴロゴロしながら扇風機を強にした。
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「なんか、面白い事、、、あっ!!」
何か思いついたのか、ヒロキが声をあげた。
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「なになに?どしたの?」
カツキが問いかける。
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「隣の廃墟さ、表の窓からこの前のぞいた時に、棚にソフトがあったんだよね。」
ヒロキの家の隣、30m程離れた所に廃墟がある。
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住んでいた人は知らないが、家族?一人暮らし? 人が住んでいないと認識して三ヵ月程度経つだろうか。
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「え!?なんのソフト?、中身入ってんの?、取り行こうよ!」
カツキが食いついてきた。
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「よし、行こう!善は急げだ。」
全くもって善ではないが、純粋無垢な小学生には、そんな事は関係ない。
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二人は廃墟への侵入を試みる。
が、案の定玄関は、ドアノブにチェーンが巻かれ、南京錠がかかっていた。
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「カっちゃんカっちゃん!後ろの勝手口開いてるよ!」
目的のソフトがある部屋とは正反対にある勝手口は、正面玄関に比べ、鍵もチェーンもかかっていなかった。
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「ソフト以外も、何かお宝ありそう。」「見つけたら山分けな。」
二人は勝手口から侵入し、土足のまま上に上がった。
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家の中は、家具などがそのままにされており、ペットボトルやインスタント食品の空き箱、
菓子の袋が散乱していた。
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二人は二手に分かれ、ヒロキがゲームソフト、カツキがその他のお宝を求めて、家の中の探索を始めた。 ヒロキはソフトの部屋まで辿り着くと、棚から取り出し、ズボンとパンツの間に挟み込んだ。
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ソフト以外の棚も物色するが、めぼしい物は何もない。
「この様子じゃカっちゃんも収穫無しだろうな、、」
廊下に出て、カツキに会う。
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やはり収穫は無いらしい。「戻ろうか、、早くこのゲームしよう。」
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二人で入ってきた勝手口に戻っていく。
と、その時、ヒロキが足を止めた。
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「ん?どしたん?」カツキが問いかける。
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「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
叫びながらヒロキは駆け出した。
何も分からないままカツキもついて行く。
「ちょっ!?何!?どしたんっ!?」
無我夢中で走りながら、廃墟の前の堤防を駆け上がり地面に突っ伏して
廃墟の方を見据えるヒロキ。
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カツキも何も言わないまま、同じように身を伏せ、廃墟を見据えた。
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たった今二人が出てきた勝手口を見据える。 ドアがギィギィ揺れている。
と、そこに、男が一人出てきた。
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カツキは驚愕する。
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鎌を持っている、男が鎌を持っている。辺りを見回しながら
また、廃墟の中へ入っていった。
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カツキは震えながらヒロキに問う。「誰?あの人誰?」
「知らん!見たこともない!」
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ヒロキが足を止めた時、視線は和室にあった。
和室の押し入れ、 襖がすーーっと開いたのだという。
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顔は見られていない、もう会うこともない、、、、、はず、、、
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あの男は一体何だったのだろうか。
了
作者ヒロキ