育児にも慣れ少し落ち着いたので、またまた体験談を書かせていただきます。
8月末に第1子を無事出産したのですが、産後入院で5日間病院にいた時に体験した話をさせていただきます。
これから出産を控えている方や、妊活中の方を不快にさせてしまうかもしれないので、そういう方は自己責任でお読みくださいm(_ _)m
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私は、39週で妊娠高血圧と診断されてしまったため、検診後そのまま管理入院し、予定日より1週間程早く出産しました。
高血圧の状態だと、普通分娩でいきんだ時に脳の血管が破裂する可能性があるため、途中で帝王切開に変更するかもしれないとも言われていましたが、そんなことも無く普通分娩で安産でした。
産まれてきてくれた子どもも、保育器に入るような事もなく、私の血圧が無事安定すれば5日後に母子ともに退院ということで、入院中に沐浴の仕方や母乳のあげ方を教わりつつ快適に過ごしていました。
お世話になった病院は、1人部屋の個室から6人部屋の大部屋まで多くあり、分娩後選ぶことが出来ます。
私は少しでも入院費を浮かせたかったので、6人の大部屋にしました。
案内された部屋は私以外に4人の方が既にいらっしゃり、それぞれカーテンで仕切られていました。
私は入口から向かって右奥、トイレの真隣で、その隣に1人、1つ空けて3人いらっしゃる状態でした。
入院2日目の夜、消灯時間は22時だったので携帯の明かりを頼りにスリッパを履き、寝る前にトイレに行きました。
戻ってカーテンを閉め、布団に入るとスリッパで摺り足をした時のスー、スーという音と共にうぅ…うぅ…という呻き声がしたので、具合が悪いのかと思い『大丈夫ですか?』と声をかけましたが返事はありません。
産後入院だけでなく、正期産前に妊娠高血圧や妊娠糖尿病などになってしまった方も管理入院しているので、もしかしたら悪阻が酷く返事ができないのかもと思いカーテンを開け声をかけようとしたが、そこには誰もいませんでした。
もしかしたら大部屋の外から聞こえた声だったのかな??とも思いましたが、スリッパ音もはっきり聞こえていたので、嫌な予感がするなと思いつつ眠りにつきました。
朝の5時から3時間おきにベビー室に行き授乳をするのですが、私は血圧を安定させるために23時と夜中2時の授乳は看護師さんにお任せしていました。
入院3日目の朝5時の授乳の時、私の隣の個室の人が
『昨日の消灯時間後、大丈夫ですかって言ってたけど…何かあったんですか?』
と、声をかけてきたので、昨夜の事を話すとスリッパの音は聞こえたけど、呻き声は聞こえなかったと言われました。
スリッパの音は、私がトイレに行った時の音なのか、謎の摺り足の音なのかは分かりませんが、カーテン1枚挟んだお隣さんに聞こえず、私だけに聞こえる呻き声って有り得なくないか…と疑問に思いつつ、私の気のせいだったみたいだと言って、授乳後部屋に戻りました。
その日の夜は消灯前にトイレを済ませ、すぐ眠れるようにしました。
気付いたら寝ていたようで、ふと目が覚めました。
時間を確認すると深夜1時を少し過ぎた頃。
まだこんな時間かと思い、再び寝ようとした時、また摺り足と呻き声が聞こえました。
今回は眠気が勝ったのか、申し訳ないと思いつつそのまま寝ようとしましたが、呻き声だけでなくたまに
『…う……い………ちょ…だ………』
と何と言っているのか分からないけど、声が聞こえました。
部屋に備え付けられた電話の音で目が覚め、電話に出ると『○○(私の名前)さーん、授乳のお時間ですが来れそうですか〜??』と、看護師さんの声。
もうそんな時間かと慌てて時計を確認すると5時15分で、とっくに朝の授乳の時間を過ぎていて、すぐ行きますと言って急いでベビー室に向かいました。
入院4日目には翌日の退院に向けての準備や退院後の過ごし方、1ヶ月検診に必要なもの等の説明があり、なかなか部屋でゆっくりする時間がなかったのですが、20時の授乳も終わり、今日は最後だから23時と夜中2時の授乳も行こうかなと思い、アラーム(音は出さずバイブのみ)をかけて仮眠をしました。
23時の授乳に行き、部屋に戻ると後ろからあの摺り足と呻き声が聞こえました。
早足で自分の場所まで行き、頭から布団をかぶりました。
音と声が聞こえなくなったので、そっと布団から顔を出すと突然金縛りに。
目線は仕切りのカーテン。
シャーっと静かにゆっくり開いていくのです。
来るな来るなと心の中で願うも虚しく、胸の辺りまで伸びた黒髪に、病院から貸し出されているピンクの肌着姿の女性と目が合ってしまいました。
同じ肌着を着ていても、その人が生きている人ではないと直感的に理解しました。
その瞬間、頭の中にその女性が病院に搬送され、床に伏せて泣きじゃくる映像が流れてきました。
何故だか分かりませんが、私も泣いていました。
そっとお腹を摩る女性。
何らかの理由で母子もしくは、母親だけ亡くなってしまったのかなと思ったその時、女性が私の腕をこれでもかというくらい握り締め、ものすごい勢いで振りながらものすごい形相で
ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!ちょうだい!
そう叫ばれ、何度か心霊体験しているとはいえ、流石にこれは怖く、私も叫びました。
その声で、看護師さんと同室の方が来たようで、気付けばその女性は消えていました。
叫ぶに至った経緯を話しても信じてもらえず、当然のことながら、2時の授乳は来なくていいからしっかり寝なさいと言われ、その後寝ることも出来ずに5時の授乳時間を迎えました。
授乳後、血圧を測り、数値はまだ少し高いけど様子見との事で子どもと共に退院、送りの車を待っている間、主人に子どもを預け、ベテラン看護師さんに昨日の話をしてみました。
看護師さんの話によると、その女性はある雨の日、検診に行く道中で酔っ払った男性に絡まれ、雨で滑りやすい足元、階段から誤って転落し病院に搬送された。
また、お腹の子は37週に入った頃で助からず死産。
幸いにも女性は助かったが、心待ちにしていた我が子が助からなかったと知り、病院の窓から飛び降り自殺したとの事。
その時、女性がいたのが私が案内された場所(部屋)だったという。
しかも、飛び降りたのは私が入院する1ヶ月前。
何でそんな所に案内したのかと聞く前に看護師さんから、8月末は出産ラッシュで人手が足りず、6人部屋の1つ空いていた所は私が移動してくる日に退院された方がいた場所で、まだ片付けが出来ていなかったため、仕方なく例の場所に通したという事らしい。
何度も謝罪はされましたが、私はともかく子どもには何も無かったので良かったと言い、送りの車に乗って里帰り先の叔母の家に行きました。
怖い体験はしましたが、その女性の心中を思うと胸が痛みます。
今思うと、うぅ…という声は呻き声ではなく、すすり泣くような声にも嗚咽のようにも捉えられます。
もっと妊婦さんに優しい世の中になれば良いなと思うとともに、その女性とお子さんのご冥福をお祈りします。
ただ1つだけ不安なのは、掴まれた腕に日に日に濃くなる痣(掴んだ時の指の跡のようなもの)が2ヶ月経った今でも残っているということくらいです。
作者恣邪
私は無事出産することが出来ましたが、今回の件で流産や死産の確率は低くないと知り、子どもを産めるのは奇跡なんだと思いました。
自分がどんなに気をつけていても、周りが気を付けてくれなければ、今回のような悲しい事件が起きてしまうのだと、ただただ悲しくなりました。
供養にはならないかもしれないけれど、その女性の分も子どもを愛し、育てていきたいと強く思いました。