中編3
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花をアナタに②

これで真奈美と亮太くんと会うことはなくなるんだ。

でも寂しくはない。

私がいない方があの人たちにとっては都合が良いのだから。

引っ越す前日まで、真奈美からは大量のメッセージと着信があった。

それでも関わりたくない一心で返事はしなかった。

引っ越しの当日、荷物は業者に任せ、自分達は父の運転する車で新天地へと向かうため車に乗り込もうとした時、真奈美が来た。

あの日のこと、どうしても謝りたいって。

また友達になりたいって。

「もう戻れないよ。」

私はそう言って車に乗りこんだ。

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新しい環境にも慣れ、そこそこ友達もできた。

何人かの男子から告白もされたけれど全て断った。

また、あんな思いをするのは嫌だから…。

引っ越し前、あれだけ来ていた真奈美からのLINEも電話ももう来ない。

LINEはブロック、電話は着拒したから。

過去のことは全て忘れて、また1からやり直そうって決めたから。

何事もなく、穏便に過ごした新しい高校もあと数日で卒業。

進路はもう決まっていた。

やりたい事はまだ見つかっていないけど、大学に入ってからゆっくり決めればいいという両親の言葉で、とりあえず4年制の大学に進学。

4年制だから短大や専門学校よりは休みが多いし、時間にも余裕がありそうだからバイトしたいなと思っていたところ、近所の花屋がバイトを募集していたので応募してみた。

花は好き。

母の趣味がガーデニングという事もあって、花に囲また環境で育った。

最近では生け花の教室に通っているらしい。

バイトの面接も無事受かり、明日からさっそく働けることになった。

最初は店内の掃除や水やり。

水やりの時に花の名前を覚えた。

花に水をあげている時、花が「ありがとう」と言っているようにも思え、嬉しい気持ちになった。

大学で友達と話すのも楽しいけれど、バイト先で花と話すのも楽しかった。

ある日、友達数人と彼氏から貰う誕生日プレゼントは何がいいかという話になった。

経緯はある子がこのご時世、彼氏から花束を貰ったという事から。

「ドライフラワーの小さなブーケだったんだけど、正直プレゼントが花か〜って思った(笑)」

「プロポーズかよ(笑)」

「でも、何の花だったの??」

「私は見たことない花だったんだけど、彼氏に聞いたらセンニチコウ??って言ってたかな〜?」

「あー、ドライフラワーでよく見る小さい花のやつ??ってか、どうせなら薔薇にしろよな(笑)」

「でも見て!!花言葉調べたら《色褪せぬ愛》だってぇ〜!!!」

「結婚するわけでもないのに何か恥ずかしいなぁ‪‪〜(笑)でも、どうせならあれが良かった!!えっと、なんて言ったっけ〜。瓶の中に液体と花入れるやつ。」

「ハーバリウムでしょ??あれ綺麗だよね〜」

終始花の話題で盛り上がっていたが、私が気になったのは【花言葉】

その日のバイトは休みだったため、駅前の本屋で花言葉辞典を買い家で読み耽った。

「花って見た目はどれも可愛くて綺麗だけど、怖い意味のもあるんだ。」

花言葉の奥深さに嵌っていった。

次の日、学校終わりにバイトに向かうと、店長から私宛にと手紙を渡された。

「昨日、杏花ちゃんの友達だっていう女の人が杏花ちゃんいますかーって訪ねてきたんだけど、出勤日じゃないよって伝えたら、これだけ渡しておいてくれって。」

封筒に宛名はなく、少し厚みのある手紙だった。

「友達だって言ってたけど、もしその手紙が変なモノだったら、警察に連絡するんだよ!」

店長にそう言われ、分かりましたと笑顔で答えた。

出勤時間になるため、手紙は家に帰ってから読もうと思いカバンにしまった。

その日のバイト中は、花に水をやりながらこの子の花言葉は確か…と、思い浮かべながらした。

家に帰りさっそく手紙の封を切る。

そこには1枚のハガキと何枚かの便箋が入っていた。

ハガキを見ると『WEDDING』と書かれている。

(もう誰か結婚するのかしら。)

心の中で少しワクワクしながら読み進めると一転、黒いモノが沸沸と湧き上がるような感情に変化した。

結婚した相手、この手紙の差出人は真奈美だった。

続く

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