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短編2
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公家みたいな声

 大学二年の時にバイトしていたコンビニの店長の奥さんから聞いた話。

 奥さんのお母さんはかなり強い霊感の持ち主らしい。

 それを引き継いで奥さんも霊感があり霊体験を何度かしているとのこと。

 特に奥さんの実家は奥さんのお母さんがいたせいかいろいろあったらしい。

 その奥さんの少女時代の話。

 奥さんのお父さんは霊感ゼロで幽霊の存在を信じてなかった。

 ある時、仕事でまとまった休みが取れたので奥さんのお母さんの実家に泊まりに行った。

 お父さんは休みが不規則でなかなかまとまった休みはとれず、どこかに出かけるのもおろか、実家に遊びに行くことも稀だったという。

 ともかく、奥さんの祖父、祖母は久しぶりに会う孫を歓迎し、楽しく夕食を食べた。

 で、夜。寝る場所を決める時に、客間では三人で寝るには少し狭いとのことでお父さん一人だけ仏間に寝ることになった。

 それで奥さんが普通に寝ているとふすまを開ける音がして目が覚めた。

 隣を見るとお母さんも起きたようだ。

 音の方向を見るとお父さんが立っていた。

 何事かと声をかけながらお母さんが電気を付けると、

 お父さんが真っ青な顔をして震えている。

 とりあえずお父さんを座らせて落ち着かせ、話を聞くことにした。

 お父さんの体験談。

 仏間で寝ることになり少し心細くはあったが何事もなく普通に寝ることができたそうだ。

 だが、しばらくすると地面が揺れている感覚で目を覚ました。

 

 地震か? と思い体を起こそうとするが手がピクリとも動かない。

 いわゆる金縛りの状態。

 そのまま何とか体を動かそうと奮闘していると、部屋の中を何かが動き回っている気配を突然感じたという。

 自分を中心としてぐるぐると何かが動いている。

 直感で、これは見てはいけないと思い視線をそれから反らした(視線だけは動かせた)。

 そのままいなくなってくれ、と願っていたが、気配はどんどん円の範囲を狭めているようだった。もっというとこちらに近づいてくる。

 お父さんは怖くて怖くてたまらない。

 その恐怖感が頂点に達したところで、

「もし、隣で休ませて頂いてもよろしいでしょうか」

 と耳元で囁くような声が聞こえたという。

 心臓が止まるかと思ったそうだ。

 その後、急に体が動くようになり急いで奥さんのいる部屋に来たらしい。

 普段は幽霊なんて、と馬鹿にするお父さんが震えている姿に母娘は爆笑したらしい。お父さんには可哀そうだが。

 どんな感じの声だった、と奥さんが聞くと、

「公家、みたいな女の人…」

 と真っ青な顔で答えたそうだ。

 

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