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中編5
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勉強会の帰り道

これは僕が短大生だった時の話。

僕が通っていた短大は地元ではなく、S県にある片道1時間半ほどの小さな学校だった。

ある時、男友達のTが、「学期末テストも近いし、俺の家で勉強会せんか?」と言い出した。

僕は生まれてこのかた、テスト勉強ということをしたことがなかったこともあり、その誘いは喜んで受けた。

(もちろん今までは勉強してこなかったため、いい点数を取れたことなんて小学生の時くらいだ)

せっかくなら人数を集めて、問題を出し合いながらやろうという話になり、当時の僕の彼女であるKと、Tの彼女だったM、そしてまた別の友人カップルの女Aと男Nを誘い、テストに向けた勉強会が開かれることになった。

当日、テスト勉強会は予定通りのメンバーで行われた。

しかし1〜2時間も勉強をしているとやはりみんな疲れが溜まってきた。

女A「ねー、飽きた!ちょっと休憩しようやぁ!」

男N「せやな、息抜きしたいな」

T「息抜きっつったってな、何すんねん」

すると女Aが僕の方を向いて言った。

女A「そういえば僕くんて車買ってんやろ?僕くん身体大きいから絶対車も大きいやん?まだ乗せてもろたことないし、僕くんの車でドライブしよや!」

僕「謎理論やけど、まぁそれなりにでかいな。俺はええけど、みんなええんか?」

みんな疲れていたこともありあっさり了承。

全員車に乗り込んだ。

しかし5人定員の車に6人はやはり乗り切らず、2人はトランクに乗ることになった。

(車は日産のエクストレイルなので、トランクもかなり広い。しかしトランクに人を乗せるのは違反なのでやめましょう)

僕「目的地は?」

女A「こっからちょっと走ったとこに滝のある公園があるらしいんよ!そこ行こや!」

ナビで検索をして、公園とやらに向かう。

しかし名前を打ち込んでも公園が出てこない。

僕「出てこんやんけ」

女A「ほたら、この公園の住所打ちこも!その住所目的地にしたらええやん!」

なるほど、と住所を打ち込み、ナビ設定した。

道がかなり少ない山の中にあるらしい。

本当にあるのか?なんて気持ちもありつつ、僕は運転を開始した。

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ナビ通りに運転していくと、どんどん山の中に入っていった。

夏だというのに深い木々の森に入ったせいで徐々に辺りは薄暗くなっていった。

僕「ほんまに大丈夫なんかこれ」

女A「大丈夫なんちゃう?ナビ通りにいけば」

不安もそこそこに、ナビ通りにいけばたどり着くだろうと自分に言い聞かせ、運転を続けた。

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山道を走っていると、トンネルが現れた。

ふと、Tが口を開いた。

T「あー、僕くん。ここちょっと、あんまええ噂聞かんとこやわ」

僕「何や、ヤンキーの溜まり場になっとるとかそんなとこか?」

T「いや、霊的な意味でな、ええ噂ないねん」

無心で運転していたため、特に気にも留めずトンネルに入った。

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入ってみると確かに薄暗く、いかにもな雰囲気ではあったが、何事もなくトンネルを抜けた。

(なんにもないやん)

そんなことを思いながら走り続けた。

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2〜30分ほど走っただろうか。

目的地まであと5分くらいだというナビの表示が出たが、どう考えても山奥すぎる。

対向車も一切走っておらず、むしろ対向車が来たらすれ違えないのではないかというくらい道が細くなっていた。

そこで急に、彼女のKが叫んだ。

shake

K「あぁっ!!」

全員驚いて、「どうした!?」と聞くと

K「忘れとった、今日私バイトある!」

時間を聞くと、結構ピンチらしい。

どうにか道幅が少し広い場所でUターンし、来た道を急いで戻った。

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そして、また例のトンネルにたどり着いた。

霊的な何かとか、そんなことを考えている時間の余裕もなかったので、急いで抜けた。

トンネルの中を走ってる最中、トランクの方でKやMが何やら話していたが、その時は気にも留めなかった。

どうにか時間ぎりぎり、Kがバイトに間に合う時間にTの家にたどり着くことができた。

Kが帰るということもあり、勉強会はその場で解散となった。

みんなS県のそれぞれ地元民なのですぐ帰れるが、僕だけ県外民なので1人、1時間半の帰路についた。

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家へ帰る道の途中でもやはり田舎道は多く、山道を通ることもあった。

勉強で疲れていて眠気もそこそこにあったので、勉強会メンバーとはまた別の友人とスピーカーでLINE電話をしながら帰っていた。

電話の向こうでは、別の友人らが学校でテスト勉強会をしていたらしく、賑やかな声も聞こえてきた。

くだらない話や、テスト勉強の話などをしながら帰っていると、ふと電話の向こうからこんなことを聞かれた。

電「ところで僕くん、今誰乗せて運転しとんの?Kちゃん?」

何を言ってるんだ?と思った。

僕だけ県外民なので、家に帰る際に他の誰かを乗せる理由はない。

更にKはバイトで今頃シャキシャキ労働に勤しんでいることだろう。

僕「いや、誰も乗せてないで。家帰るんやもん、1人に決まってるやん」

電「えー嘘やあ乗せてるやろ?(笑)しかも僕くんどんな運転してんの(笑)」

意味がわからなかった。

普通に、1人で、運転をしているだけなのだ。

僕「いや…乗せてへんて。嘘つく意味ないやん」

電「いやいやええてそんな嘘、乗せてんやろ?(笑)」

僕「嘘やないて、ちょっとしつこいぞ」

少しイラっとしたため語気を強めると、急に電話の向こうの声が弱々しくなった。

電「えっ…だって、嘘やん…」

僕「いや…じゃあ何で?何で嘘や思うん?」

すると少し間をおいて

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電「だって、さっきからずっと女の子が『止めて止めて止めて』ってゆーてたやんか…やから僕くんが荒い運転をして、Kちゃんが怖がってんのかと思ったのに…」

しばらく言葉が、出なかった。

こいつは何を言ってるんだと。

でもトーンからして、冗談ではなかった。

そして電話の向こうにいる友人何人かがその声を聞いているという。

僕「いや…本当に?僕、誰も乗せてないねんで…」

電「いや、ちょ、やめてや、怖いやん…」

僕「いやいや、1人山道運転しながらそんなこと言われた僕の方が怖いわ!」

僕は何かから逃げるように、急いで家に帰った。

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後日談だが、帰り道のトンネル内でKとMが何やら話していた(騒いでいた?)のは、トンネルに入った途端、Kが気持ち悪い、苦しいと体調不良を訴えたためのようだった。

その時のKは顔色も悪く、Mが本気で心配をするくらいだったという。

しかし、トンネルを抜けると急に顔色も良くなり、気持ち悪さなどもなくなったそうだ。

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もしかしたら、あのトンネル。

霊的な意味で良い噂を聞かないという、あのトンネル。

本当に何かがいたのかもしれない。

そして、僕の車にその「何か」が、ついてきてしまったのかもしれない。

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