中編3
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トイレの蛇口

これは僕が短大生だった頃の話。

(前の投稿の怖話の続き?のようなものです)

短大1年の夏、学期末試験も無事終え、夏休みが始まった。

勉強会をした甲斐あってか、勉強会に参加した皆は追試や欠点などはなかった。

ある日、女友達のMからLINEがきた。

M「せっかくテストも終わったし、夏休みだし、みんなでお泊まり会しよう!」

唐突な誘いだったが、喜んで了承した。

メンバーも着々と集まり、当日にMの家にてお泊まり会が開かれた。

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夕方ごろ、Mの両親が

「晩御飯はせっかくやしバーベキューにしよか。ほな今の間に先にお風呂済ませてきぃな。M、案内して車で温泉まで連れてったり」

と話してきた。

どうやら、車で20分くらいのところに温泉があるらしい。

メンバーは今回の発案者であるM、その女友達のA、H、Kと、僕、そして男友達のPの6人だった。

女性が4人、男が2人ということで、Mの車に女友達全員、僕の車にPが乗るということになった。

Mの車を追いかけながら、道を進んでいく。

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ふと、Pが口を開いた。

P「そういや僕くん、この前変なことゆーてたな」

僕「変なことって?」

P「ほら、車で電話してたら女の子の声がどうとかってやつ」

僕「あー、そうなんよ」

聞くと、実はPの彼女がかなりの霊体質らしく、デート先にも気を遣わなければいけないレベルだそう。

そしてその彼氏であるPも、それなりに感じ取ることはできるとのことだった。

P「でな、なんとなくしかわからへんけどな、多分…僕くんの後ろにおるんよ、後部座席に」

僕「…」

車内が何とも言えない雰囲気に包まれる。

最近バイト終わりに後部座席に誰かいる気がしてならないくらいあの女の子の声に怯えていた僕としては、その言葉はかなり精神的にクるものがあった。

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P「まぁ、なんとなくやでさ!ほんまにおるかもわからへんし、とりあえず今日は楽しもうや!」

Pが僕を励ます。

確かに、せっかくの温泉をお通夜ムードで過ごすなんて勿体無い。

そこで考えることをやめ、運転を続けた。

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温泉に着き、女友達は女湯へ、僕達は男湯へ向かった。

P「あ、僕くん。俺ちょっとトイレ行ってくるで先に行っといて!」

僕「はいよー」

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脱衣所で入浴の準備をしていると、Pがやってきた。

心なしか、表情が暗い。

僕「どうした?」

P「…僕くん。俺多分つかれとるわ…」

ため息混じりにPが言った。

僕「えっと…お疲れ様…?まぁテストも終わったばっかやしな、温泉で疲れ取ろうや」

P「いや、ちゃうねん。そうやないねん」

僕「何、どしたん?」

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P「いやな、俺さっきトイレ行ったやんか。入った途端蛇口から水出てるんよ。まぁすぐ止まってんけどな。多分アレ、センサー式の手洗い場やと思ったんよ。アレ、自動洗浄機能みたいなので人おらんくても勝手に流れることあるらしいでさ」

僕「うん」

P「でな、まぁ普通に用を足して、手を洗おうって思って蛇口ひねって水出して手洗ったんよ」

僕「うん」

P「おかしない?」

僕「何が?」

P「センサー式やなかったんよ」

僕「それがどしたん」

P「いや…じゃあさ。何で勝手に水出てて、勝手に水止まったん?そこそこ勢い出てたで?」

僕「あっ…」

そうだ。

センサー式でなければ自動洗浄機能なんてものはない。

だとすると、勝手に水が出ることも、止まることもない。

P「だからさ、もしかしたらよ。俺、憑かれとるわ」

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その後は、何事もなく温泉に浸かって過ごした。

しかしあの蛇口の謎は未だに解けていない。

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