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これは男友達隆章くんの話です。
隆章くんとは飲み仲間のひとりでよく隆章くんのアパートにもお邪魔していました。
そんなある日引っ越しをしたから遊びに来れば?と連絡を貰いました。
それが恐怖の幕開けでした。
隆章くんが好きなお酒を持って行くと飲み仲間がもう集まっていました。
それからはどんちゃん騒ぎです。
気が付くと私はリビングで寝ていて何人かはその場に居なかったので帰ったようでした。
部屋の電気は消されておりもう1度寝ようとした時でした。
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部屋の中にひとり佇む隆章くんがいました。
「どうしたの?」
声を掛けても動こうとしません。
私も起き上がり隆章くんの傍に行こうとすると隆章くんが部屋を出て行く所でした。
私は隆章くんを追い掛けました。
「ねぇ、どうしたの?」
玄関に続く廊下をゆっくり歩く隆章くんはまるで操り人形のようでした。
隆章くんの腕を掴むとボソボソと何か言っていました。
『サ…シマ…グ…リ…』
その言葉の意味が分かりませんでした。
そしてひとしきり意味があるかどうか分からない言葉を呟くと隆章くんはその場に倒れてしまいました。何とか引きずって隆章くんをリビングに運ぶと…
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そこには髪を床まで垂らした女がズルズルとリビングをまるで何かを探すように歩いていたのです。
私は腰を抜かしてしまい床に座り込んでしまいました。何とか起きて貰いたいと隣に寝ている隆章くんを揺らしますが起きる気配はありません。
リビングにはまだ寝ている飲み仲間も居ます。
私はジリッとリビングに入る事を試みました。
何故なら私のカバンには馴染みの神社から貰ったお清めの塩が入っていたからです。
それをあの女に掛ければ何とかなる!!そう思い私はリビングに潜入しました。
女はリビングをぐるぐると下を向きながら歩いています。…何かを呟きながら。
私は必死で鞄に手を伸ばしました。
そして鞄に手が届いた時でした。
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『サカシマノメグリヲタヤスナァアアアアァアアァ』
女はそう言って私に向かい走ってきたのです。
私は塩に手をかけながら座り込みました。
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気が付くとリビングに倒れていて外は明るくなっていました。私は飲み仲間を見送った後その場に残り昨夜起きた出来事を隆章くんに話しました。
隆章くんは怪訝そうな顔で聞いていましたが話して行くうちに段々顔が青ざめていきました。
そして心当たりがあるとすれば…と話をしてくれたのです。
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3日前、悪ノリでお酒を飲んだ後地元の先輩・後輩と心霊スポット巡りをしたんだそうです。しかし怪現象など起こらずつまらなさそうにしているとお酒を飲んでいなかった後輩の誠也くんは少し離れた場所に住んでいた事がありその土地で有名な最強の心霊スポットがあると連れていってくれたんだそうです。それが【O神社】(現在も実在しております)でした。O神社は薄暗い森の中にあり不気味なため、地元でも不良はおろか誰ひとりO神社に近付かなかったそうです。O神社の噂のひとつに祠がありその回りを三周回ると願いが叶うと言われていたそうです。隆章くん達は神社に着くと祠を探しました。
本当にO神社は薄暗い森の中にありその日はスーパームーンで月明かり増し増しだと言うのに全て木々に覆われ闇の中をただただ歩いている感じでした。
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しばらくすると“祠”が姿を現しました。
「これか」
罰当たりにも祠の扉を開けたり、祠に手を掛けたりしたのだそうです。ひとしきり祠を探るとひとり目の先輩が祠の回りを回りました。しかし何も起こらず…ふたり目の誠也くんが祠の回りを回りましたが何も起こらず隆章くんは痺れを切らし「だったら逆に回ってやる」と逆に回りだしたのです。
誠也くんはそれを止めようとしました。しかしそれを振りほどききっちり3周隆章くんは回ってしまったのだそうです。誠也くんは明らかに怯えていたそうです。
「で?逆に回っちゃうとなんだって言うの?」
「その土地では“逆しま巡り”って呼ばれていて死者や悪霊を呼び覚ます意味があるって」
私はようやくその時気付いたのです。
「あの女…左に回ってた…」
私があの夜目にした女はぐるぐるとリビングを左に回っていたのです。
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実はあれから隆章くんには会っていません。
何故なら連絡が取れなくなってしまったからです。
作者稲荷