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長編20
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最後の町とオハルちゃん

深夜番組の旅の放送でまさかあの写真の町の住所が分かるとは思いもよらなかった

偶然ではなく必然的だと私は感じている

今までの出来事は誰かの導きによって現象が起きてると今回の写真の件で私は確信した

では一体だれが導いているのかというとまだ漠然として分からない

オハルちゃんなのかオアキちゃんなのかそれともお狐様なのか・・・・

そして餓鬼を操っているのは一体誰なのか・・・・

なかなか黒幕の正体がわからず対処ができない

今のところはすべてなんとか回避してきてはいる

今回は私・S君・オヤジ・楓・葵の5人がオハルちゃんが最後のたらい回しにされていた町へ訪れて調査するという目的なのだがもう100年以上も過ぎてしまっている

果たして手掛かりなどあるのかどうか・・・

それと写真に写っている3人はいったい誰なのか?

これも解決したいなと思っている

不思議なことにはじめは3人が写っていたのだが和尚様に送ったメールに添付した写真では3人が消えていたのだ

さらに驚くことに和尚様からまた私宛にメールに添付された写真では3人が写っていたのである

これは一体どういうことなのか・・・もう信じられない気持ちなのだ

小学校の時からS君とカメラを持ってあちこちの場所へ行って写真を写してきたが

今回のは本当に説明のしようがない

オヤジは「小細工したんだろう」と横やりを入れてきたが一切加工はしていない

では合理的に説明しろと言われてもできないというのが実情だ

どちらにしろ何かの暗示だと思ってはいるが単になにも関係ないのかもしれない

金曜日の夜にS君とF子が東京から帰ってきた

忙しいのにほんとうに済まないと思っている

「なんか・・・いろいろと分かってきてるようだけど・・・まぁ・・・あの写真の風景の住所がわかっただけでもめっけもんだよな」

「たしかに・・・まさか・・TV放送で写真と同じ風景が出てくるとは思っていなかった

偶然ではなくこれは必然的だと俺は感じたよ」

「俺もだ、今までの出来ことは偶然に起きてるんじゃない、なにかを訴えるために事を起こしてるんだと俺は思ってるよ」

「たしかに・・S君と同じ意見だよ、誰かが訴えてるんだよ

きっとこの世にすごい未練を残してるんじゃないかと・・・」

「そのとおりだとおもう、じゃなければこんなに異常な出来事を起こすわけがない

いまのところはなんとか回避できてるんだけどこれから先は果たして無事に逃げ切れるかどうか怪しいもんだ」

「俺もそう感じてる、今まではなんとか逃げ切ってきた。でも・・・今回・・・いや・・・今後はもしかしたら・・・と思うと背筋がゾッとする」

「大事な家族だからな・・・ひとりでも・・・」

少しまじめな話を1時間ほどしていた

「おっちーー!!パパたちすごい真剣な顔をして話をしてるけど

今回は・・・ちょっと私も心配・・・本当は私やF子ちゃんも一緒に行きたいんだけどね

今回は匠君や仁君の面等を見るよ、どうもうちのほうでも何か起きそうな気がするんだよね

F子ちゃんもそういう予感がしてすこし怖がってるんだよ」

「そっか・・・まぁ・・・おふくろがいるし・・・2重の結界もあるし大丈夫だとは思うけれど・・・

もし何かあったらすぐに逃げれるように準備だけはしてたほうがいいよな

あとでおふくろに話しておくからな」

「ママ(おふくろ)の実家へ行けるように準備はしておかないとね・・・」

「そういうことだな・・・実家のほうから車をまわしてもらおう

警備として5~6人ほど人を貸してもらおうかな」

「今夜中に避難できるように荷物などまとめておくといいぞ、S子」

「アニキ、そうするよ、荷物をまとめるよ」

そう言いながらS子は子供たちに荷物をまとめるように指示していた

「F!、実家の方から車と警備として一応7人来るように連絡しておいたからね

あんまし家の外に人を配置するのはよくはないね・・・

裏庭と入口の門の所と中庭あたりに配置させようと思う

とにかく子供たちを守るからね」

「う・・・ん、そうだな・・・この家にいても仕方ないだろ・・・

実家から車の手配ができたらもうそのままおふくろの実家へ行ってほしい

それなら余計な人数もいらないし・・・・」

「そうしようかね・・・そのほうがいいね!

車の手配をさせるわね」

今夜中には実家からお迎えが来るはず

私たちもそのまま出発しよう

夜も10時を過ぎた

私とS君で出発の準備を終えた

忘れ物はないか荷物のチェックをしてレンタカーに荷物を入れた

娘たちは眠そうな顔をしていた

「眠そうだね、車に乗ったらそのまま寝てもいいよ」

「うん、もう眠くて仕方ないよ、パパ」

「あたちも・・・眠いんだぞ」

おふくろの実家からお迎えが来た

お迎えの車を見送り

私たちも出発する準備をした

「ばあちゃんたち行っちゃったね、パパ」

「仕方ないよ、何か起きてからじゃ遅いからね、楓」

「うん・・・兄ちゃんたち無事に着いてほしいな」

「あたち・・兄ちゃんたちも一緒についてきてほしかったんだぞ」

「ごめんね、葵・・・今回は楓と葵だけ・・・まぁオヤジがいるからね」

「うん・・・じっちゃがいるもん」

子供たちを乗せ私たちは出発した

楓と葵はよほど眠かったんだろう、乗ってしばらくしてから寝てしまった

車内はほんと静かだ

オヤジを真ん中にして娘たちはオヤジの手を握りながら寝ている

「オヤジ、たまに外の様子も見ててくれよな」

「おうよ、わかったぜ」

S君は今回は一番後ろの席に座ってもらった

「S君は後ろから様子を見ててくれ」

「わかってるさ・・・こうも車内が静かだと不気味だよな」

「たしかにな、子供たちが寝てるからな」

何事もなく無事に高速を降りた

まずは和尚様のお寺へ

一般のお客さんも泊っているので静かに仏間へ案内された

「ご無事で・・・よかったですわい・・・今回の件はわしゃも胸騒ぎがしますわい

あの写真の3人は何かの暗示だと思うんですわい

まぁとにかく朝までは時間がありますわい

ゆっくりと部屋でくつろいでくだされ」

「はい、そうさせてもらいます」

あまり大きな声も出せない状況だが

無事についてホッとしている

オハルちゃんがたらいまわしにされた最後の町

3代前の住職が夢を見て急いでオハルちゃんやオアキちゃんを探してきた

これも偶然ではない

まさしく必然だ

兄弟と両親を亡くした姉妹

どれだけ孤独で寂しかったか

いくら親戚でも邪魔者扱い

どこの家に行っても暴力と暴言の地獄を見てきたのだ

それでもこの姉妹は我慢をしてきたのだ

そして・・・やっと光が差したのだ

やっとこの姉妹にも幸せが来た

もし住職が夢の中のお告げを無視していたら私たち子孫は存在していない

この話を聞いて私たち家族は大いに泣いた

特に葵と楓は大粒の涙を流しながら泣いていた

葵はオハルちゃんの生まれ変わり

楓はオアキちゃんの生まれ変わり

なのかもしれない・・・・

さて・・・夜明けも近い

少し仮眠を取ってあの町へ行こうかな・・・

朝8時ごろに目が覚めた

お寺では一般の宿泊客が本堂で朝の食事をしていた

また少し離れたところでは仏様にお祈りをしている人もいた

私たちは仏間でお寺名物の朝の食事を食べさせてもらった

決して贅沢なメニューではない

しかし、おいしい

一般のお客さんも同じメニューを食べているはずだ

これは評判になるはずだ

このお寺の宿泊が半年先も予約でいっぱいなのだ

それも家族連れが多いと聞いた

子供たちから見ればもっとほかの場所

ディズニーランドとかに行きたいはずなのだが

宿泊した子供たちからの反応が良くもう1度あのお寺に泊まりたいと感謝のメールや手紙などが来るそうだ

和尚様も言っていたのだが決して派手な遊び場所はないしどちらかといえば子供達には退屈な場所なのだが・・・

ただ言えることは静寂なのだ

とにかく静か

とくに都心部から来る家族連れはこの静けさに驚くのだそうだ

たしかに言われれば静かだ

特に深夜になるとシーンとして下手をすれば底知れぬ恐怖を感じることがある

まぁ・・・夏はカエルや虫の声の大合唱なのだが・・・決して騒音には聞こえない不思議さがある

私たち家族もお盆とお正月には特別に仏間を貸してもらっている

一般のお客には絶対に貸せない特別な部屋だ

それもすべてオハル・オアキちゃんの子孫であるがゆえに貸してもらえている

朝の食事も終わり出発まで時間がある

「楓、葵、こっちへおいでこれからオアキ・オハルちゃんのお墓へ行こうか」

「うん、行く」

「あたちも行く」

出発前に何事も起きないようにと安全を願いにお墓参りをしよう

オハル・オアキちゃんには水ようかんとジュース

両親にはお酒とごはん

兄弟たちにはジュースとお菓子をそれぞれ置いた

<<大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃん!!ありがとう!!!

トトさま、カカさまも大喜びしてるよ!!!

タロウ・ジロウ兄ちゃんもおいしいおいしいとお菓子を食べてるよ

本当に私たち家族を守ってくれてありがとう!!!>>

「え?今、オハルちゃんの声が聞こえたね」

「私も聞こえたよ「ありがとう」って聞こえたよ」

「あたちもだぞ」

「おう!おう!ここにいたか」

チンピラオヤジが来た

「あっ!じっちゃ!!」

「俺も手を合わせるぜ」

「お前たち、うまく逃げてくれたか・・・俺は・・・俺は元の世界へ帰ってきてしまったよ・・・すまん・・・」

「オヤジ・・・どういうことだ?」

「いや・・・ほら・・・例の・・・俺がいなくなった時があったろ

その間、俺は「天国」とやらにいたようだ

しばらく歩いてるとなぜか遠くに懐かしい建物が見えてきたんだよ

そうクソ坊主の寺だ

俺は走ってその寺へ着いたんだが・・・・

クソ坊主の寺じゃなかった・・・

荒れ果てて・・・今にも倒れそうな廃寺だった・・・

俺はそこでしばらく休憩をしていたんだが・・・

本堂の方からなにか物音が聞こえたんだよ

それでその物音がする方へ行ってみたんだよ

そしたら見覚えのあるガキんちょ4人がいたんだよ

隠れていたんだよ

餓鬼たちがあちこち暴れまわっていたからな

その中の一番チビの女の子が泣きながら俺に抱きついてきたんだよ

「オハルちゃんかい?」と言うと

「うん、そうだよ、大きなお兄ちゃんのトト様!!」

そしたら3人のガキんちょが

「トト様!!」といいながら寄ってきたんだ

しばらくはそこの廃寺で隠れていたんだが・・・

ガキんちょたちが「お家へ帰りたい」と言い出してな

俺はこの寺から出るのは危ないから駄目だと言ったんだが・・・

やはり帰りたい気持ちが大きかったんだろう

それに両親のことも心配してたしな・・・

仕方ないからその廃寺から出たんだ

そしたら・・・奴ら・・・餓鬼たちがいたんだよ

俺はちびっ子二人の手をつないであと男の子は全力で走れ、と言いながら

逃げ回ったんだ

なんとか・・・オハルちゃんたちの家まで辿り着いたんだが・・・

もう両親は・・・家の中で息を引き取っていた・・・

餓鬼たちにやられたんだろうな・・・

4人のガキんちょは大いに泣いていたな・・・

しばらくは・・・動けなかったよ・・・

しかしな・・・この4人はもう死んでるんだよな・・・

俺さ・・・そういう事実を知っていてもな・・・目の前にいる4人は紛れもなく幽霊じゃなかった・・・まさしく生きてる人間そのものに見えたんだよ

手を握ったときの手の温かさは楓ちゃんや葵ちゃんの手を握った時と同じだったよ

そうか・・・そういうことか・・・葵ちゃんや楓ちゃんがよく俺の手を握ってくるが・・・

オハル・オアキちゃんの生まれ変わりなら納得ができる

逃げ回っていた時のあの感触だ」

「じっちゃ・・・」

オヤジは例の失踪時に「天国」とやらに行っていたようだ

「しばらくして・・・俺は・・・なんだが知らんが・・・「帰りたい」という気持ちが強くなったんだ

おチビちゃんたちに「俺、そろそろ元の世界へ帰るわ」と言ったら

「えええ!!!トト様、ずっとここにいてほしい」

「トト様、俺たち4人では生きていけれないよ、ここにいてくれよ」

俺はどうしようか迷った

このおチビちゃんたちはもう死んでるし・・・俺がいなくても大丈夫なはずだと思ってな・・

でもおチビちゃんたちの悲しそうな顔を見てたら・・・しかし・・・

俺は決心した

「帰るんだ」と

心を鬼にした

子供たちが手を握って「帰らないで!!僕たちを見捨てないで、トト様!!」と言われて

俺は生まれてはじめて人の情けというか慈悲を感じたよ

でも・・・俺は子供たちが握ってた手を離してその場から走って逃げたんだ・・・

走りながら「すまん!すまん!」と言いながらその場から逃げたんだ

この俺が大粒の涙を流したんだよ

ありえん話だろ」

「じいちゃ・・・」

あのチンピラオヤジが泣いた!!!

やっと人間らしい心を持った瞬間だと私は思った(自分から言うのは・・・いいにくいが・・今までは人間としての行動とかマナーとか全然なかった

自分勝手なオヤジだと思ってた)

「オヤジ・・・いい体験したよな・・・」

「たしかに・・・でもな・・・俺は逃げたんだ・・・あの4人を見捨てた

たまに夢にも見るようになった」

「オヤジ・・・あんまし気にするな・・・オハルちゃんたちは許してるよ」

「そうならいいが・・・」

「わしゃも仏の慈悲としてオヤジ様の慈悲としてオハルちゃんたちは許しているはずですわい」

和尚様も来た

子供たちは静かにオヤジの話を聞いていた

「じっちゃ、あたち、じっちゃの気持ちがよく分かったんだぞ、あたちからオハルちゃんに会ったらじいちゃのことを許してもらえるようにお願いしてあげるんだぞ

じっちゃは葵が守るんだぞ」

「葵ちゃん、ありがとう・・・」

おいおい・・・・

「オヤジ殿、いい孫娘を持ちましたなぁ・・・うらやましいですわい」

寒い朝だが空は快晴

さてとそろそろ出発の時間だ

「もうそろそろ・・・行きましょう」

「わしゃもお供しますわい」

「クソ坊主が来てくれるなら安心だぜ」

和尚様も加わり出発の準備ができた

車内は一気に賑やかになった

あそこの町まではおよそ10Km

ゆっくり行きましょう

「この写真・・・なんとなく・・・変だな

この3人の位置が微妙に移動してるような気がするんだけどな

目の錯覚かな・・・」

とS君は例の写真を見ながら気になることを言い出した

「え?・・・移動してるの?マジかよ・・・」

確かに最初に見たときはS君に似たおじさんは確かお店の前だったはず

それがなぜかお店から少し離れた場所になってる

ほんとうにほんの少しだけ動いたような気がする

人間の記憶ほどアテにならないけどね

2人の女の子も少し微妙だな・・・

というのも後ろを向いてた女の子の顔が少し右へまわったような気がする

「おじさん・・・あたちにも見せて・・・

ああ!!!パパ!!!大変!!!この女の子!!顔がこっちへ向きかけてるんだぞ

この前は完全に後ろ向いてたのに!!!なんで?」

「やっぱそうだよな・・・微妙に動いてるぞ、F!!!」

なんだ・・・この写真は・・・生きてるのか・・・

時間がたつほど写真の人物たちは少しずつ動いてる

まるで超スローコマ送りみたいだ

「なんかなぁ・・・気持ち悪いな・・・」

一瞬にして賑やかだった車内が静まり返ってしまった

「おじさん・・・この写真って・・・この写し方って・・・もしかして・・・

おじさんが写したんじゃないの!!!」

「おぇえ!!!いやいや・・・冗談じゃない!!!俺は明治生まれじゃないぞ

楓ちゃんのパパと同じ年だよ・・・」

「なんか・・・あやしい・・・こんな変なの写すのはおじさんしかいないよ」

「ひどいな・・・楓ちゃん!!」

車内は一瞬に笑いの渦になった

「いやはや・・・楓ちゃんのツッコミはするどいですわい

さすがモデルの卵ですわい・・・S君、楓ちゃんを写すときはきちんと写さないといろいろとツッコミをされますわい」

「わぁ!ひどいな、和尚様まで!!!」

「おじさん!!わたしはF子おねえちゃんのような優しい子じゃないからね!!!」

「ヒェーー、楓ちゃんにはかなわないな・・・」

「面白い家族ですわい」

和気あいあいのうちに写真に写っていたあたりまで来た

「このあたりだとおもうけどな・・・だいぶ変わってる・・・」

「そりゃそうだよ、100年は過ぎてるんだから・・・さ」

「どこか安全な場所に車を停めて歩いて探そう」

道端に沿って車を停め歩いて写真の風景に似た場所を探した

なかなかみつからない

住所はあってはいるが・・・

なにせ100年以上もたっている、環境が変わっているのは当然

あちこち歩きまわって少し疲れてきた

公園があったのでそこで休憩をした

「なかなか見つからないな・・・」

「だな・・住所はここらへんであってるんだけどね」

「パパたち・・・少し疲れたよ、ここで休憩をしようよ」

「そうするつもりだよ、楓」

この公園で休憩をしよう

子供たちは手に持っていたおやつとジュースを口に入れ始めた

「水ようかんおいしいね、葵」

「うん、楓姉ちゃん、おいしいんだぞ」

2人は水ようかんやお菓子を食べながらおしゃべりをしていた

「うーーん・・・おかしいよな・・・これだけ歩いて見つからないとはね

これだけ周りが変わってるんじゃ見つけることできないような気がするな」

「まぁ・・・まだ時間はあるから・・・根気よく探そうよ、ここに来たということは絶対に必然だから・・・」

「わしゃも根気よく探したほうがいいと思いますわい

時間がかかっても絶対に見つけないといけないような気がしますわい

宿泊はわしゃのお寺で泊ればいいですわい」

「ありがとうございます、何とか見つけます」

1時間ほど休憩をしてまた探し始めた

少し雑木林が前方にひろがっていた

そこを通りぬけて大通りに出た

「ああ!!!ここじゃない?」

「おおお、たしかに・・・この道・・・」

まわりはもうお店などなかったのだが前方50メートルあたりに古ぼけた民家が見えた

写真にも遠方にこの家のような建物が写っていた

全員この古ぼけた民家に歩いて行った

いまにも朽ち落ちそうなボロボロの家というか屋敷だった

写真と比較してもよく似ている

「似てるよな・・・ここだとおもうけどな」

「ここだろうな・・・写真と比べるとこの屋敷以外全然残っていないよね」

「ここら辺にオハルちゃんが最後の養女として生活していた家があったんだろうね」

「やっとオハルちゃんにも幸せの光が見えてきたんだよな」

「パパ・・・あたち・・・なんとなくここを知ってるような気がするんだぞ

なんだろう・・・この懐かしさ・・・」

「え!葵、マジか?」

「うん、パパ、なんとなく・・・覚えてるような・・・」

しばらく周辺を見回していた

すると屋敷から一人の老人が出てきた

「あんたら・・・家の前で何をしてますの?」

「いや・・・その・・・」

「じいさん、この写真を見てここまで来たんだよ

もう100年以上前になるかな・・・ここら辺のお家にオハルという養女がいたんだが・・・そのことで今調べてるんだよ」

チンピラ親父が老人に説明をした

「どれどれ・・・おおおお!!!これは!!!懐かしいなぁ・・・

これはわしがまだ小さいときに見たのとそっくりじゃ

ここのお店にようお使いに出されたんじゃ・・・

でもなぁ・・・戦後・・・このお店はなくなってしもうた

オハル・・・はて・・・どこかで聞いたような名前じゃな・・・

んん・・・あ!!!・・あぁぁ・・・・思い出した・・・

たしかに・・・わしのじいさんから聞いた・・・

「すまんことをした」とわしのじいさんから聞いたよ

わしからすればひいばあさんにあたる人が養女?かな・・

相当なことをしたと聞いたよ

わしのじいさんもそうとう意地の悪いことをしてしまったと涙を流しながら話してくれた

ある日、どこかの坊さんが訪ねてきてその養女を引き取っていったとか・・・

その後じゃ・・わしの家系のもんは不幸の連続だったよ

でも・・・あんたら・・・もしや・・・オハルさんとやらの・・・」

「そうです、オハルの一族のものです」

私は今までの経緯をこの老人に話をした

「なんと・・・縁というもんは恐ろしいものじゃ・・・そうじゃったが・・・

さぁ・・・ここでは風邪をひくから・・・家へ入ってくだされ」

私たちは老人の言うとおりに屋敷に入った

すごく広い

和尚様のお寺の敷地の2倍はある

大きな部屋に案内された

仏壇がありその上あたりに一族だろうと思うが肖像画があった

古いが格式のある屋敷だ

「わしでこの家系も終わりになってしもうた・・・・

子供たちが次々と流行り病で死んでしもうた

家内もな・・・

今この屋敷におるのはわしだけじゃ」

「ええ・・・それは・・・・」

「まぁ・・・まさか・・・わしのじいさんもわしのおやじも口々に「祟りじゃで・・・オハルという幼子の祟りでこのうちは呪われておる・・・おまえもいずれ・・・意味が分かる時が来るじゃろ」と言われてたんだよ

それが本当に現実的に起こってしもうた

うちの家系はなぜか女子が全然生まれなかった

男子もな・・・おやじとわしだけが生き残っただけじゃ

その原因が・・・わしのじいさんから理由を聞いたんじゃ

「それはな・・わしのおふくろが養女に対してそりゃひどい仕打ちをしてたんじゃ

わしも・・・その養女に対してひどい仕打ちをした・・・あの子はわしと同じ年ごろで

ある日にわしのおやじがどこから連れてきたのかわからんけど女の子を連れてきたんじゃ

わしのおふくろはてっきりおやじの隠し子かと疑っていたんじゃ

そりゃもうすごい仕打ちをほぼ毎日していた・・・

「痛いーー痛いよーー」と泣いていても、おふくろは頭や背中などにゲンコツで叩いていたんじゃ

わしもな・・・その子を叩いたり罵声を浴びせたりしてた・・・」とわしのじいさんは

涙を流しながら話してくれたんじゃ

わしもそれを聞いて「なんでひどいことを・・・」と思わずじいさんの前で責めたんじゃ

じいさんは「いまはすごく後悔している・・・」と涙ながらに後悔の念で泣きながら謝ってたな」

「オハルちゃん・・・あたち・・・オハルちゃんがかわいそう」

「お嬢ちゃん・・・すまんかったのぉ・・・すまんかった」とじいさんは涙を流した

「いやいや・・・あなたさまには何の罪はござらんですわい・・・」

「そうですかのぉ・・・そのオハルちゃんは相当わしら一族を恨んでいるんじゃろ」

私たちは話を聞いて誰一人答えることができなかった

「あたち・・・オハルちゃんにあったら・・・あたちから許してもらえるように言うよ」

「ええ?お嬢ちゃんが?」

私はこのご老体に私たち一族の話をした

ご老体はもうびっくり仰天していた

「なんと・・・このお嬢ちゃんが・・・オハルちゃんの生まれ変わりじゃとな

縁とは不思議で恐ろしゅうですのぉ・・・

わしは信じますのぉ・・・間違いなくこのお嬢ちゃんはオハルちゃんの生まれ変わりでしょうな」

ご老体が話し終えた時に仏壇の上にあった肖像画がすべて床に落ちた

全員びっくり

「なんと・・・肖像画・・・これは相当怒ってるんでしょうかのぉ・・・」

「いや・・・これは・・・」

「パパ、これはオハルちゃんじゃないよ」

「そう思う・・・まさか・・・和尚様!!!」

「うむ、間違いないですわい、餓鬼ですわい

ご老体・・この祟りはオハルちゃんじゃないですわい

ご老体の一族を苦しめてきたものは餓鬼という地獄の化け物ですわい

これはあかんですわい・・・早速お清めのお経をしますわい」

和尚様はすぐに仏壇の前に座りお経をあげ始めた

私は予備のお守りをご老体に渡した

およそ1時間ほどお経をあげた

なんとなく部屋の空気が軽くなったような気がした

この部屋に入ったときに空気が重いと感じていた

それが徐々に軽くなっていったような気がしたのだ

供養のお経が終わった

「ふうぅーーー、これで餓鬼たちはこの家に対して悪さをしないでしょう

もう安心していいですわい

一族の方たちもすべて成仏しましたわい」

「ありがたいのぉ・・・誤解してたんですな・・・でも・・・もう子供たちは戻ってこない・・・・」

「たしかにのぉ・・・死者が生き返ることは絶対にないですからのぉ」

「じいちゃま・・・あ!そうだ!

じいちゃま、月に2回ほど和尚様のお寺で過ごすといいと思うよ

和尚様とお話しすると面白いから

いいでしょ、和尚様!!」

「楓ちゃんの言う通りですわい

家に一人いても寂しいですわい

わしゃがお迎えに行きますのでお寺でゆっくりと過ごしたらいいですわい」

「いや・・・いいですかのぉ・・・あれだけひどい仕打ちをした一族の末裔ですぞ、わしは・・・」

「なんのなんの、ぜひぜひ、お寺へ来てくだされ

先にも話した通りご老体には何の罪はござらんですわい

それに家内と2人きりの生活で寂しいですわい

お寺でごゆるりとお過ごししたほうがいいですわい」

「ありがたいですのぉ・・それではお寺へ遊びに行かせてもらいましょうかのぉ

ありがとうのぉ!楓ちゃん」

「うん、よかったね。じいちゃん」

こういうことだったのか・・・オハルちゃんに導かれたんだ

餓鬼たちに囚われていたご老体のご先祖様たち

「救ってほしい」と私たちに頼ってきたのかな

やはり来てよかった

ひとつ解決したのかな・・・

ここの家主であるご老体と別れ一旦和尚様のお寺へ帰ることにした

「来てよかったね、パパ、あのおじいちゃんすごく喜んでたね」

「楓ちゃんたちを連れてきて正解だったな」

「さようですわい・・・一つ一つ時間をかけて解決していくしかないですわい」

お寺に到着した途端におふくろからの電話が来た

「F!!!大変!!!お屋敷が今燃えてるんだよ!!!

消防隊が全力で消火に当たってるんだけどね

古い屋敷の方は全焼だよ・・・そっちのほうは終わったのかい?」

「え?火事!!!まじかよ、おふくろ・・子供たちは大丈夫かい?」

「S子ちゃんやF子、匠君や仁君は大丈夫だよ・・・

ただ、屋敷の人間が数人負傷したけどね・・・・

今のところ古い屋敷が全焼しただけ・・・新しい屋敷の方はなんとか延焼を食い止めたよ

すまんけどあんたたち早急に私のところへ帰ってきておくれ

それと和尚様も一緒に連れてきてほしいんだけどね」

「そっか・・・無事かぁ・・・よかった

和尚様に話すよ

おふくろたちは絶対に今いるところから離れちゃだめだぞ

結界があるからそこにいれば安全だ

それと屋敷の人間は護衛の人間以外は屋敷から出した方がいいぞ

というか一旦それぞれの家へ帰してあげてくれ」

「わかったよ、護衛の人間以外は全員帰宅させるよ」

「そうしてくれ・・・それと護衛の人たちには部屋の外で交代で休憩をしてもらってくれ、屋敷の外にも護衛の人を立たせてくれ

数が足りなければ警官を配置してくれるようにおふくろから頼んでくれ」

「はいよ、わかったよ、今のところ・・・古い方の屋敷が燃えただけだよ

消防車や救急車のサイレンやパトカーのサイレンでこっちはすごいことになってるよ

はやく戻ってきておくれ」

「帰る準備をしたら戻るよ」

「大変だ!おふくろの実家が火事になった!!!幸いママやF子、お兄ちゃんたちは無事だぞ

おふくろもな!!!

今から早急に帰る準備をしてばあちゃんの家へ行くからね」

「うそぉーー、兄ちゃんたち大変だぁ!!!パパ、早く帰ろう!!」

わたしは和尚様に事の詳細を伝え来てもらえるように頼んだ

「わかりもうしたわい、おふくろさまの頼みなら快く承諾しますわい

わしゃも持っていくものを準備しますのでしばらく待っててくだされ」

私たちはあわてて帰る準備をした

忘れ物はないか確認して和尚様以外全員車に乗った

「すまんですのぉ・・・準備に時間がかかってしまいましたわい」

全員車に乗った

一路おふくろの実家へ・・・・

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