皆さん狐が怖いとかお思いでしょう。
妖狐とか九尾の狐とか聞いたことがあると思います。
特に玉藻前の伝説は聞いた事が有るでしょう。
古来、狐は墳墓に住み着き、その住居から異様な世界の生き物と考えらてきました。
でも、伝承と違う世界があったのです。
実話を交えてお話します。
霊感とかは無いが、昔からあと少しの所で死んでいたと言われる事はよくありました。
バイクと車の事故で、周りの人は巻き込まれたのに自分だけ避ける様に被害が無いとか。
旅行に行く日に熱が出て、行けなくなったらその宿が火事になり死傷者が出たとか。
そうだ、狐火は見たことがある。子供の頃、母の田舎に遊びに行った時に。
そうとう田舎で、することと言えば、裏の川で遊ぶくらいしかない所でした。
テレビもほとんどのチャンネルが見られないのでつまらなかった。
夜に縁側で外を見ていると、山に火が沢山見えた。
おばあちゃんがスイカを切って持って来てくれた時に「あの光は何?」って聞いたらおばあちゃんには見えないらしく、おじいちゃんを連れてきた。
おじいちゃんは「お前には火が見えるのかい。お前の曾おじいちゃんも見えたらしいよ。お狐様がお前を歓迎してくれてるんだよ。明日お参りに行こうね。」と言ってくれました。
次の日、おばあちゃんが作ってくれたお弁当を持っておじいちゃんと出かけました。
かなり山を歩いて行くと、古い鳥居がありました。そこには、狐ではなく、狛犬でもなく、オオカミのような像が2匹座っている石像がありました。
おじいちゃんが「祭ったお稲荷さんだよ。」と言って手を合わせたので真似をして「勉強が出来ますように」とお祈りしました。
おじいちゃんが「お前を守ってくれる神様だから解くお願いしなさい」と言う言葉は覚えています。
おじいちゃんに、「でもあれは狐じゃないよ」と両脇にある石でできた同を指差すと、「あれは野干様だよ。この国には野干様が居られないのでお狐様が代わりをなされているんだよ。」
それから十数年経ち私が大学生になった時に大好きなおじいさんが亡くなりました。おじいちゃんの葬式の時にその神社に一人でお参りしました。
途中で大きな犬に会ったのですが、野良犬なのに吠えもせず、僕の行く方向に先導するかのように歩き始めました。
神社にてお参りをしている時も隣で座っていました。
叔父さんが、なの犬は何だいと聞くので、事の顛末を話しました。
叔父さんは「爺さん跡取りに何にも話してないんだ。」と言って、話し始めました。
「お前は歴史の事がわかるかい?」と聞くので「日本史は得意です。」と答えると、「それは話が速い。天慶の乱は知ってるか?」と聞くので「藤原純友が瀬戸内海で起こした乱でしょ」と答えると「それを平定したのは誰?」と聞かれました。
「小野好古」と答えると「その小野好古の子孫がこの地に住み着き、あの神社を作ったのさ。」
叔父は「さすが我甥だ。賢いわ。」と言ってビールを飲み干し、母にお代わりを催促しました。
話は続きます。
叔父は「その一族がこの地に住み着きあの神社をつく他のさ。」「お前のご先祖様だわ。」と言ってまた飲み干しました。
「代々あの神社は、この家が守ってきてこの家の守り神様なんだよ。」
「死んだ爺さんだって南の島に戦争に行くとき、曾爺さんが武運長久だと言ってあの神社にお願いしたお札を持たせたら、生きて帰ってきたもの。」
「親父がよく言ってたよ。死ぬと覚悟した時には必ず活路を思いつき、その様にすると必ず好転したってね。」「それとお札を戦友の皆に持たせたかった。」と・・・。
その叔父も亡くなり、その話を知っているのは私だけとなりました。
あの社にも母の実家にも行っていません。
母の実家も従弟が継ぎ、行く事もありません。
でも、何かにつけ決断を迫られる時には、必ずお稲荷さんにお参りします。
すると必ず解決するんです。
今度、子供達を連れてお参りしたいと思っています。
子供達の幸せを願います。
きっと聞き入れてくれるでしょう。
我が家の守り神ですから。
作者釣瓶落とし
怖くなく不思議な実話です。