music:4
僕のお母さんはやさしい
やさしいやさしいお母さん
すごく大好きだった
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好きだっていってくれた
僕はずっと
お母さんがすきだった
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お母さんが僕のすべてで
お母さんも僕だけをみていた
この小さな世界で
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お母さんはいつも僕に
笑いかけてくれて
いつもやさしくしてくれた
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この世界はお母さんと僕しかいないと
お母さんはいっていた
だから僕はお母さんを待つ
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いつまでも、いつまでも
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ある日戸棚の影から
小さなフクロウが出てきて
僕にこういった
「ここは君の世界だよ」
って
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でも僕は
「違うよここは
お母さんの世界だよ」
っていった
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するとフクロウはいった
「君は愚かだな」って
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また次の日
フクロウはうさぎをつれて
戸棚の影からやってきた
「今日はなにをした?」
フクロウはいった
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「今日はこの小さな世界から
でかける、そんな夢をみたよ」
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「君は?
君はなにをしたの?」
僕は聞き返す
「僕はずっと君と一緒にいるよ」
そういってフクロウは笑った
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うさぎはいった
「お母さんは今日も帰ってこないよ」と
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ガタン。
物音がして振り返ると
そこには小さな女の子がたっていた
「お外に出ればきっといい方向にむかうわ
お外に行きましょう」
真剣な目で彼女は言った
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「いいよ、今日も僕はお母さんを待たなきゃいけないから」
そう僕が言うと彼女は
僕の手を引っ張って外にだした
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外は静かで
僕と女の子だけしかいなかった
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ふと、部屋においてきた
うさぎとフクロウが心配になった
「やっぱり僕かえるよ」
そういって振り返ると
彼女はもういなかった
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ひとりで家に帰ろうと歩き出す
足元に赤いカケラが落ちていた
どうやらそのカケラは
家まで続いているらしい
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そのカケラを拾い上げながら
僕は家についた
家につくとお母さんの声がした
「帰ってきたんだ!」
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急いで玄関のドアを開けた
そこには僕がいた
お母さんに殴られる僕がいた
泣いていた、僕は悲しそうに
ただ泣いていた
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お母さんは悲しそうに
僕を蹴った
怖くなった
僕は目をつぶった
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目をあけると僕は部屋の中心で
フクロウとうさぎの
ぬいぐるみを抱きしめ泣いていた
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そこには殴られる僕も
お母さんもいなかった、
ふと手に生暖かさをおぼえた
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僕の手は真っ赤にそまっていた
「……血?」
でも誰の血?、僕の体をみても
めだつ傷はなかった
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フクロウは僕のそばにきて
ただ僕の目を見つめた
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ふと目線をあげるとそこには
お母さんがいた
真っ赤に染まったお母さんがいた
涙のように血が流れ出ていた
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ああ、そうか、、もうお母さんは………
だから帰ってこなかったのか
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僕はなぜかお母さんに触れた
「あたたかい」
お母さんのまだ生暖かい血が
とてもやさしい暖かさで……
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きずくと僕は泣いていた
僕は右手にもっていた包丁を
もう一度強く握り締めた
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まだお母さんの暖かさが
忘れられない右手で僕はそっと
自分の首に……
end
作者前頭葉。
彼の世界は寂しく暖かい
忘れていた思い出の欠片を集めながら彼はきっと……
読んでくれてありがとうございます!
また読んでくれるとうれしいです!