当たり付きのアイス棒。
当たったことありますか?
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なんて書いてありました?
当たり? もう一本?
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僕のアイス棒には
「ひがしえ」
と書いてありました。
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ひがしえ? 東へ? ひかし絵? higashie?
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翌朝、学校にその棒を持って行きました。
ふと、友だちがスマホで方角を表示させました。
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なぜか北と南、西がなく画面いっぱいに 東 と表示されていました。
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他の人もスマホを確認すると、東しか表示されませんでした。
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僕も自分のスマホを確認すると、
僕のは東西南北きちんと表示されました。
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どうやら
クラスの全員の方角が東以外消えたようです。
クラスが騒がしくなってきたので
面倒になる前に教室を出ました。
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僕はとりあえず東へ歩いてみることにしました。
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スマホの方角を東へ向け歩いていると、
うまい具合に校舎から出れました。
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そのまま外へ出て東へ進みました。
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1時間くらい歩いたでしょうか。
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一件のぼろいアパートの前につきました。
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そのまま進むと、
ある部屋の前に来ました。302号室
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僕の誕生日が3月2日なのでやけに印象的でした。
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中から人の声がしました。
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生活音が聞こえました。
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取り付けの悪いドアノブがガチャと回され人が出てきました。
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幼いときに死別した お父さん が出てきました。
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お父さんはにこにこして僕を迎えてくれました。
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部屋に入ると中は小奇麗にしてあり、
僕は適当に座るようにうながされ、
丸テーブルの下の座布団を引っ張り、そこに座りました。
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お父さんがコップとペットボトルのウーロン茶をもってきて、
近くに座りました。
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僕の目をしっかり見ながら
「元気にやってるか?」
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お父さんがぼんやり薄くなっていくと、
視界が切れそうになり。
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部屋の上のほうに飾ってあった表彰状
幼稚園で使った劇の道具
暖かい光
意識がプツンと途切れ、
次の瞬間、
教室の机で寝てました。
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数学の時間でした。
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コッと下に何かが落ちました。
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アイス棒です。
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あの文字は消え、
「ありがとう」と
書いてありました。
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幼いころに見た、癖のある字体のようで懐かしくなりました。
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今でもそのアイス棒はきちんと大事にしています。
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もちろんこれからも僕の宝物です。
#### end ####
作者やんたけ