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短編2
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雨傘

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学校で嫌なことがあった。

クラスの友達にひどく責められた。

もう友達ではなくなった。

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家に帰ると誰もいなくて、

リビングでポツンと座り宿題を広げる。

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霧だった外が次第に雨に変わり窓から雨音が聞こえてくる。

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雨音に混じり人の声が聞こえた気がした。

数人の話し声のようだ。

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立ち上がり窓に近づくと僕の心拍数は急激に上がり始めた。

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庭に五人のおじさんが立っている。

やけに身長が小さくて皆似たような顔つきだ。

傘もささずに。

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おじさんたちは遠い目で僕を見ている。

頭が混乱し、真っ白になった。

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次の瞬間、

背後に冷たい気配を感じ振り向くと、

リビングに1人男が立っていた。

傘をさしている。

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男は酷くびしょ濡れで、滴る水が僕の宿題を濡らす。

 

男が言う。

「君は雨が嫌いかい?」

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先ほどからの奇天烈な現実に言葉を失っている僕に男はさらに、話しかける。

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「私は雨が嫌いでね。

こう、メガネが濡れるといつまでも泣いているみたいだろ?」

と。

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何を言っているのかわからない僕は恐怖で、怖くて怖くて部屋の隅でうずくまるように体を丸め耳を塞いだ。

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どれくらい経っただろう、勇気を出して耳から手を離すと、

何も聞こえない。雨音も止んだようだ。

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部屋の男は消え、立ち上がり庭に目をやると

晴れた庭に五人のおじさんが立っていた。

まだ。

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すぐにその場を逃げだしたい衝動に駆られたが、違和感に気づいた。

おじさんたちは何かを言っている。口が動いている。

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ぼんやりとおじさんたちを見ていると頭の中に声が聞こえてきた。

「君は傘が嫌いかい」

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連続する不可解な現象に僕はパニックを起こしそうになりながらもこの場から逃げることを考えた。

振り向くと部屋に、

先程の男が立っていた。

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男は手に持っている傘を僕に渡そうとしている。

「明日も学校行きなさい」

そういうと薄くぼやけて消えていった。

手に残った傘だけを残して。

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翌日学校に行くと一度は嫌いになった友達も気さくに話しかけてくれた。

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父親のいない僕は心の隅で少し明るさを感じた

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