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今年も暑い夏がやってきました。
そう、丁度このぐらいの時期。
私には決して忘れる事のない、忘れられない出来事があるのです。
前述にて私は小学生の頃『幽霊が見える、気持ち悪い奴』といじめられていました。
実は…もうひとりいじめられている男の子が居ました。
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彼の名前は中村昇くん(仮名ですが同姓同名の方がいらっしゃったら申し訳ありません)。
私がいじめられるよりも前からからかわれたり、上履きを隠されたりされていました。
昇くんがいじめを受けている原因は家庭事情にありました。昇くんの家はシングルマザー。女手ひとつで昇くんのお母さんは昇くんを育てていました。
その為には夜の仕事も厭わずやっていたそうです。
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しかしその話がどこからか漏れてしまい、昇くんは水商売をしている女の子供というレッテルを貼られてしまい次第に教室の隅へと追いやられていったのです。しかし昇くんは何を言われても、何をされても普通にしていました。
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そんなある日何でかは忘れてしまいましたが、授業が3時間目までしかない日があり昼前には学校を出た日がありました。
帰路に着こうと歩いていると校庭の隅に昇くんが座っているのが見えました。
その時私は何故か昇くんが気になって校庭の隅で座っている昇くんに近寄って行きました。
「そこでなにしてるの?」
昇くんは何も返さずただただ何か作業を続けていました。声を掛けたのにも関わらず無視をされたのに怒りを感じその時私は昇くんに酷い事を言ってしまったのです。
「ねぇ?何してるの?無視しないでよ。そんなんだからいじめられるんだよ」
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昇くんは大きな石で服を土で汚しながらも穴を掘っていました。そしてその傍らには身も丸々と太った蛇が横たわっていました。
「ひっ!!!」
その蛇はぐったりとしていて生きていないようでした。それでもとても生々しく気持ち悪かったのを覚えています。
そしてもうひとつ覚えている事があります。
それはその丸々とした蛇の体に刻まれた【◯木・山◯・◯野・田◯】という文字。
特に昇くんをいじめていたグループのメンバーでした。
「4人分の名前を書けるだけの蛇を見つけるの苦労したんだよ?」
昇くんは嬉しそうに笑って言っていました。
そんな笑顔に私は不気味さを感じ鳥肌が立ってしまいました。
「ねぇ、稲荷ちゃん…蛇ってね、“しゅうちゃく”の象徴なんだよ?だから僕はいずれこの蛇になってこの穴から出て体に刻んだ4人をコロシテヤルンダ」
そう言って昇くんは蛇を穴の中に落とすと穴を埋め最後に穴を掘った石をそこに置いた。
すれ違い様私の耳元で昇くんが囁きました。
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「稲荷ちゃんも香◯ちゃんと夏◯ちゃんにいじめられてるよね?僕がコロシテアゲルカラ…ね?」
そう言って昇くんはその場から去ってしまいました。ただひとり残された広い校庭で私は恐怖と戦っていました。
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実は…まだあの昇くんが作った蛇のお墓あるんです。母校では有名な話でだいぶそのエピソードはねじ曲げられてはいますが【昇くんのお墓】と呼ばれているそうです。
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そうそう。忘れていました。つい先日お葬式に出て来たんですよ。夏◯ちゃんのお葬式に…。
現在、昇くんが何をしているのか…行方が分かっていません。
作者稲荷