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中編3
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パチンコ店 殺人事件

当時、僕は25歳。

自分でも認めているほどのギャンブル依存性であった。仕事は正職に就かずフリーターで暇さえあれば毎日の様に家の近くのパチ屋に通っていた。

パチンコ依存性の朝は早い、お目当ての台などがあると2時間前位から並ぶのはザラ。

今日も支度をして、ケータイで機種情報を調べ、いつも通りに並びに向かった。

この生活を1年ほど続けているが、僕は一番乗りで開店を迎えた事がなかった。

というのも、朝6時位から毎日必ず並んでいる鈴木さんというオヤジがいたからだった。

鈴木さんは、見た目は浮浪者じゃないかという感じで、服、靴はボロボロ、歯はガタガタ。

煙草を吹かし、いかにも近寄りたくない存在であった。

「今日もいるだろうな……。」

呟きながら、店に向かう。

遠目から見ても分かる。街ゆく人はチラチラと見て、避けるように歩く。

いつも通り店の前で酒を飲み、煙草を吹かしてだらしない格好で座っていた。

「よう!また来たなお前!お前もこんな出ない店でよく並ぶよな!グヘヘヘヘ」

「鈴木さんこそ毎日じゃないですか?笑」

このように朝の挨拶が行われる。

正直、日常生活の中でこのような人と関わるのは気が引ける。だが、パチ屋に並んだことのある方は分かると思うが、開店までの暇潰しという事で並んでいる同士で会話をする事がよくある事だった。

「2時間前じゃおせえな。おれあ4時間前から並んでるんだ!」

というのも理由があり鈴木さんはお目当ての台がありその台を朝から閉店まで毎日回し続けていた。

もちろん低レート。生活保護の金でギャンブルをするなと思いつつも話しを合わせていた。

「今日もあの台は1日俺が座るから悪いがよろしくな。」

決まり文句であった。

僕だけならともかく、並んでいる見ず知らずの全員に言うもんだから、正直異常者として常連からは扱いを受けていた。

そんな生活が長く続き、念願の正社員として小さい会社に採用された。

これを機に引っ越す事になり、仲良くなった常連と別れの挨拶をし、勿論その中に鈴木さんも入っていた。

「ライバルが1人減るからありがてえ、正直お前がいると台を取られるんじゃないかと心配だったんだ」

相変わらずの異常者ぶりで最後の別れの挨拶がこれだった。

月日が立ち、引っ越し先、新しい職場でも慣れてきたころ、ネットでとあるニュースが目に入ってきた。

~~県~~市 パチンコ店にて背後から包丁で刺す

え?と思い。タップする。

悪い予感が当たり、あの通い詰めていたパチ屋であった。

~~県~~市のパチンコ店 パーラー〇〇において、背後から包丁で刺す事件があった。

無職 鈴木一男容疑者(68)は営業中に突如暴れだし、持っていた包丁で、店員、客を刺し、店員は意識不明の重体。客は病院に搬送されたが傷が深く死亡した。

警察の調べによると鈴木容疑者は「おれの台を取られて腹が立った」と供述し、警察は詳しい現場の状況を調べている。

目を疑った。

昨日のように記憶が蘇ってくる。

そういえば言っていた気がした。

「おれの台は誰にも触らせない。座る奴がいたらそいつを殺してやる」

ニヤニヤ汚い歯を覗かして笑って言ったのを、鮮明に思い出した。

Concrete
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