10年程前、私が中学校3年生の頃の話し。
当時、受験シーズンで、どうしても行きたい高校がありました。
しかし、偏差値が高く、今の私じゃ行けないため、母親に頼んで塾に通わせてもらえるようになりました。
学校が終わって帰宅し、少し休憩してから塾通い、18時〜21時までが塾で、通学に自転車で20分くらいかかるため、帰る時にはまあまあの時間になってしまっていました。
中学3年生になると、もうそこまで恐怖心はなく、いつもの知ってる道で、自転車でゆっくり帰宅していました。
その生活が続いて、ある日の事。
いつも通り塾が終わり、自転車に乗って帰路についていました。
帰り道というのが、ずーっと長い一直線の道を2キロほど走り、突き当たりを左に500mほど行くと家に着く道のりでした。
そこまでの田舎道ではないのですが、車は少なく、歩行者はほぼゼロで街頭も少ない道でした。
自転車をシャーッと飛ばしてると、何か違和感を感じます。まだ遠いのですが前方に何か見慣れない物があるのです。
通り慣れてる道、不思議な物で少しの変化が違和感に感じられました。
その違和感というのが、はるか前方に白い球体の塊らしきものがフワフワと浮いているように見えました。
「なんだあれ?新しい標識か?でも動いてるぞ」心の中で独り言をいいながら、段々と距離が近くなってきます。
いよいよ、100m程近くまで来てもまだ分からない。想像力を働かせても、あり得ない光景で、まったく何かがわからない。
とうとう、すれ違うほどまで来て、すれ違う瞬間、「うわぁぁぁぁーーー!!」
声に出して驚きました。
すれ違う際やっとわかったのですが、多数の人の手と足の塊で、うじゃうじゃしていて、目玉が何個も付いている白い球体の浮遊物、しかもかなり大きい。
あまりの衝撃に自転車で転びそうになりながらも「なんだあれ、なんだあれ、やばいものみちまった」
必死に自転車を漕いでいました。
後ろをチラっと見てみると、動いてる、着いて来てるんです、自転車と同スピードで。
「ヒッ」と声をあげ懸命に自転車を漕ぎながらも、なぜか考えは冷静でした。
「このまま、家まで着いてこられたら、家を特定される!それだけはやだ!」
そう思った私は、長い一本道の突き当たりの角にコンビニがある事を思いつきました。
「そうだ。コンビニに一回逃げて、隠れよう、明るい所だから大丈夫だろ!」
そんな考えでした。
長い一本道も結構走り、角にあるコンビニの看板も見えてきました。
後ろを見ると少し近づいてるような感じで
スーッと滑るように追いかけて来てるのが分かります。
コンビニに着き自転車を投げ捨てるようにしてコンビニに転がり込みました。
あまりの血相変えた汗だくの少年が凄い勢いで入ってきたため、店員、立ち読み客、など全員に、なんだ!?って目でみられたのを覚えています。
それどころではない私は、外を確認。
あのペースならもうコンビニ手前まで来ててもおかしくないため、勇気を振り絞り外を見ました。
すると、あの物体は姿を消しており、客もいて、店内も明るかったため、少し落ち着きを取り戻していました。
店員「お兄ちゃん。どうしたの?何かあった?」
「いや、、なんか、変な人?に追いかけられて、コンビニに避難させてもらいました」人ではないか?と思いつつもその時は恥ずかしくて嘘をついた記憶があります。
店員「え、不審者?警察呼ぼうか?」
「いえ、大丈夫です。家もすぐそこなので、最悪母親に迎えに来てもらいます。」
こんな感じで店員と話しをしてました。
店内「そっか。気をつけなよ、ところで、後ろの方は知り合い?」
えっ?と思って振り返った瞬間
例の物体が目の前にありました。
「いぎゃーーーーーっっ」
声にならないような悲鳴をあげ、その物体からは数本の手が伸びて来て、私の目をえぐり返すようにまさぐってきました。
必死に抵抗しましたが、痛さと、目玉が取れる感覚などがあり、目の前が真っ暗になりそのまま気を失いました。
どのくらい時間が経ったか分かりませんが、ふっと気付くと。
見慣れた天井で、自分の部屋で寝ていました。時間は午前5時。辺りはうっすら明るくなっていました。
「あ、、、、、うわーー。悪夢か…。リアルな夢だったなー…。」
全身汗だくで、恥ずかしい話し少し失禁もしてたと思います。
肝心の目も無事で、明るい事もあり、恐怖心も薄れていたため、水分補給をしようと
家の目の前にある自販機にコーラを買いに行こうと準備をしていました。
ふう…とため息をつき家を出た瞬間。
背筋が凍りました。
自転車がない。
「う、うそだろ」
いつもの止めてある所に自転車がないのです。
「やっぱり、夢じゃなかったのか…。」
震えていました。
しかし、もう一つ希望の考えがありました。私は自転車に鍵をかけるのを良く忘れて家に置いていても、酔っ払いなどに盗まれた事があったのです。
それを信じ、確認に行かない訳にはいかないので、恐る恐る、コンビニまで歩いて見に行く事にしました。
「あるなよ。あるなよ。」
そう懇願して見にいくと。
ある。自転車がある。
あまりの衝撃にまた気を失いそうになりました。
ただ、昨日の記憶とは違う所があり、放り投げたはずの自転車がキレイに止めてある。止めてる場所が違う。
ただ、ボー然と突っ立って、色々考えていたその時、コンビニから母親が卵とパンをビニール袋に入れて、私の自転車のカゴに放り込み、跨ろうとしてる姿が目に飛び込んできたのです。
なんだと。
そういう事か。
よくあったのです母親が私の自転車を勝手に使い買い物に行く事が。
母「あ、あんな何してんのこんな朝っぱらから」
「いやこっちのセリフだよ笑」
一気に安心感が出て泣きそうでした。
ただ、一つ疑問に思う事を母に聞きます。
「あのさ、昨日の夜、俺どういう風に帰ってきた?どういう風てか何時に帰ってきた?なんかさ、記憶にないんだけど?
母「昨日?あんた塾だったじゃん。いつも通り21時過ぎには帰ってきたよ」
よかった。やっぱり夢だったんだ。
そう思った。
「そっか。なんか俺に変わった所なかった?」
母「変わったところ…? そういえばあんた目は大丈夫なの?」
「え?」
母「塾から帰ってきてすぐ左目が痛い言って食欲もないっていうから晩御飯も食べずそのまま寝たじゃん。病院行こうか聞いても大丈夫っていうから。」
ゾッとした。
その以降の事はあまり覚えていません。
それから数年後、視力が悪くなり、眼科に行った所、左目の黒目に傷が付いている、視力はもう上がらないけど、失明する程ではないと医者から説明を受けた。
確かに今まで気づかなかったが左目の黒目に稲妻のような傷がある。
母親曰く、子供の頃はなかったと。
現在は特に問題はないが偶に疼く気がする。
作者ブラックスピネル