長編9
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砂場の宇宙人

みなさんは、「ひとりかくれんぼ」を知っていますか?

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僕も詳しい事はわからないのですが、ネットによると、降霊術の一種で、ぬいぐるみに、米や塩水などを入れ、人形とかくれんぼをするという降霊術です。

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この話は、私が小学校高学年くらいの時に体験した話です。

あれ以来、いろんな情報を集めたのですが、どうやら、「ひとりかくれんぼ」になにか関係のある話だと思います。

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当時、僕は学校が終わり、近所の友達の家に遊びに行き、ゲームをして遊んでいました。

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その日はゲームが盛り上がり、気づいたら夜の7時になっていました。

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さすがに友達のお母さんも、そろそろ帰りなさいというので、友達の家を出ました。

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僕は、もっと早く友達の家を出ればよかった、と後悔しました。

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というのも、僕の家に帰るには、帰り道の途中にある公園を横切らなくてはならなくて、その公園には、不気味な噂が流れていました。

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「あそこの砂場に幽霊が出る・・・」

「夜な夜な子供たちが砂場で遊んでいる・・・」

他にも色々あったと思いますが、このような噂が流れていました。

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公園がだんだんと近づいてきます。

僕は、なんとなく街頭の光や、住宅の窓から漏れる光を見て、少し恐怖心が薄れていたので、何も心配することはないだろうと自分に言い聞かせていました。

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公園が前方に見えてきて、何もいないことを確認しようと、一応、遠目で砂場を確認しました。

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すると砂場に、“何か ”がいました。

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全身が灰色で、身長は普通の大人位の大きさで、人の形をしていて、明らかに僕の方を見て立っていました。

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僕は、遠目で見ていた視線をすぐにそらし、びっくりした声を喉の奥に押し込み、あたかも、何も見えておらず、“何か ”の存在に気づいていないフリをして、公園に向かっていきました。

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振り返って逃げようとも思いました。

しかし、あいつを見つけた瞬間、逃げたら追いかけてくると思い、逃げれませんでした。

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あいつを視界に入れずに歩き進み、公園の入り口まで歩きました。

しかし、どうしても気になるので、バレないよう少し横目で砂場を見ました。

すると、“何か ”がいないことに気づきました。

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僕は思わず足を止めました。

「なんだ・・・、いないじゃないか」

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この時の僕は、きっとさっき見たのは僕の恐怖心が作り出した幻だったのだろう、と思い、拍子抜けしました。

僕は、好奇心から足を砂場に向けていました。

砂場に着き、何をするわけではなく立っていました。

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「そういえば、変な噂が広まってから、この公園で遊ぶ人も少なくなったなー。」

と思っていた時、頭上から何かが降ってきました。

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それは汚い米でした。

「わっ!」と悲鳴を上げ、上を向くと、さっきの灰色の顔が僕を見下ろしていました。

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遠目で見たときはわかりませんでしたが、頭でっかちで頭皮はツルツルしていて、目がやたらと大きいのです。

それは完全に「リトルグレイ」でした。

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僕は砂場に尻もちをつき、恐怖で身動きが取れませんでした。

リトルグレイは、僕が怖がっている姿をじっと見つめています。

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僕が高校生になった今でも1番怖かったのはリトルグレイの目です。

人間の目のように、白目と黒目がしっかりあり、それがより一層、恐怖を感じさせます。

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そしてリトルグレイは何かを僕に言いました。

「目・・・あと目だけなんだ・・・」

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リトルグレイの声は、若いお兄さんの声でした。

リトルグレイは細長い腕を、座り込んでいる僕の顔に近づけてきました。

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「目を取られる」と、瞬時に判断した僕は、目をグッと閉め、その場から逃げようと思い、立ち上がろうとしました。

しかし、砂場で足に踏ん張りが効かず、その場にうつ伏せに転んでしまいました。

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僕はリトルグレイが、後ろから迫っている気配を感じ、もう助からないと思い、子供ながらにして死ぬことを決意しました。

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その時でした。

公園の柵の向こうの道路からおじさんとおばさんが走ってくるのが見えました。

おじさんは、柵を飛び越え、おばさんは入り口から走って僕の方に向かってきました。

おじさんは、うつ伏せになっている僕の横を通り過ぎ、リトルグレイを追い払いました。

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しかし、おじさんは、

「くそっ!」

と、つぶやいて、息を切らして、地面に膝をつきました。

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この時僕は恐怖心でいっぱいで目を閉じでいたので、状況がわかりませんでしたが、

恐らく、リトルグレイを逃がしてしまったのではないと思います。

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おばさんは僕のすぐ横について、体を起こしてくれました。

「大丈夫?」

と言ってくれました。

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おばさんの優しい笑顔のおかげで、僕は気持ちが落ち着きました。

おじさんも心配してくれている様子で、とても嬉しかったです。

するとおばさんが僕に目線を合わせるようにしゃがみ、こんなことを聞いてきました。

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「どんな幽霊を 見たの?」

ぼくはありのままをつたえました。

「全身灰色の宇宙人を見ました」

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おばさんは、

「どんな顔だった?」

と聞いてきたので、

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「顔が大きくて、頭もツルツルしている感じだった」と答えました。

おばさんは、妙にこの状況の飲み込みが早くて、おばさんがあの宇宙人について何か知っているのは、なんとなくわかりました。

「他には?」

質問は止まらない。

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「後は・・・鼻の穴しかない感じで・・、あと唇もなくて・・・」

ここまで言うとおばさんは食い気味に質問してきました。

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「目は?」

僕はおばさんが怖くなりました。 

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「目は大きかったけど普通の目でした。白目があって黒目があって・・・」

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するとおばさんは、おじさんと目をあわせ、お互いしゃべらなくても、何かを理解しあっているような感じで、おじさんにこう言いました。

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「前までは、まだ顔は普通だったのに・・・」

おばさんは、不可解な事をつぶやいていたのを、今でも覚えています。

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おばさんは僕の服についた汚れを落としてくれ、立ち上がりました。

おじさんとおばさんは、僕に、気をつけて帰りなさいと言い、公園から出で行きました。

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二人の後ろ姿が見えなくなり、辺りが急に静かになった気がして、

僕は、早くこの場所から離れたいと思い、家まで全力で走りました。

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走り続け、家が見えてきて、玄関の扉を勢いよく開け、なんとか家に着きました。

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台所に立っている母親に「ただいま!」と言うと、母親は、

「こら!何して遊んできたの!何考えてんのよ!」

と本気で怒鳴ってきました。

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僕が、なにが?と聞くと、母親は、後ろを見なさい、と言うので、振り向くと、玄関から台所にかけての廊下に、砂場で見た汚い米と塩が散らばっていました。

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すぐに服を確認すると、服にも米と塩がついていました。

頭の毛と毛の間にも挟まっていました。

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僕はこの日、どう言い訳して言い逃れたか覚えていませんが、こっぴどく母親に怒られました。

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数日後、母親のほとぼりも冷め、僕はあの公園で何があったのか、母親に訪ねてみました。

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母親も、詳しい話を知らないとのことで、僕もこの話を聞いたのは、5年ぐらい前なので、少し欠落している部分もありますが、事の真相は、以下の通りです。

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(数年前、僕が通っている小学校の生徒数人が、同じ日に急死したらしい。

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同じ日に亡くることは偶然ではないと判断した学校は、原因の調査を警察と一緒に始めたらしいのです。

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調査の結果、どうやら亡くなった生徒達は全員、急死する前、公園で遊んでいたらしいのです。

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そして、公園の設備の調査を始めると、砂場の底から、男性の変死死体が上がったそうです。

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その変死死体に付着していた菌が、子供達が知らない間に体に入り込み、死にまで至った)らしいです。

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母親は、テーブルでお茶を飲みながら話終わると、何かに気づいたように、急にすごい険相に変わり、僕にこう言いました。

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「あんたなんでそんな事聞くの?まさかあの時なんかあったんじゃないでしょうね?正直に言いなさい!」

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母親からしたら、自分の子供が遅い時間に米と塩を体中につけて帰ってきて、急に公園の事件の話をしだしたので、母親には僕があの日に何かあったのだとわかったのだと思います。

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母親に見事に言い当てられた僕は、あの日、公園で起きたことをすべて話しました。

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母親は、あの時僕が米と塩まみれになって帰ってきて、変な言い逃れをして、部屋に閉じこもっていた僕を、相当怪しく思っていたらしく、それと同時にとても心配してくれていたそうです。

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「とりあえず、お父さんが帰って来るまで待ってなさい。話はそっからよ」

その日は父親の帰りが待ち、帰って来ると、家族3人で話し合い、日曜日にお祓いし

もらうことになりました。

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家族で話し合っている途中の、僕を助けてくれた、おじさんとおばさんにの見た目を説明すると、母親は、

「ああ、あそこの家のご夫婦ね・・・」と二人を知っている様子でした。

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お祓いに行く何日か前に、学校が終わると、母親と一緒に二人の家に行き、お礼をしに行きました。

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どうやら、公園で見つかった男性の死体とは、この夫婦の息子にあたる人だったそうです。

僕は子供ながらに、なんだか悲しい気持ちになりました。そして、よく考えると、おかしな点に気づきました。

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「あのリトルグレイと、亡くなった息子さんは、関係あるのか・・・?」

このことは、心の奥に閉じ込めておきました。

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僕は高校生になりました。

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通っていた中学からは、結構距離のある高校に進学したので、中学の友達はほとんどおらず、まったく新しい友達ばかりできました。僕は、小学生の時にお祓いしてもらって以来、この一連の騒動が完全に解決し、もう2度と自分に被害はないと確信しており、小学校・中学校で、この事を話のネタにしていました。

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今年の6月ぐらいに、学校にも慣れてきて、さっそく新しい友達にこの話をしました。

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すると、その友達は、一回も笑わず、真剣にこの話を聞いてくれました。

話が終わると、友達から驚く一言が出ました。

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「その急死した子供の内の一人、俺のお兄ちゃんだったんだよね・・・」

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僕は、まさか友達が被害にあった親族だとは思わず、軽率にこの話をした事をすぐに謝りました。

しかし、友達は、少し笑ったように僕にいいました。

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「いいよ、いいよ。俺も何年か経つうちにネタにしちまってるし。」

「え?」

「いや、何でもない。忘れて。」

「・・・。」

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会話が途切れて、変な空気が流れ、沈黙が続きましたが、友達が口を開きました。

それは、友達のお兄さんが急死する数日前の話でした。

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(兄は急死する何日か前に、公園で遊んでいたら、ギタギタの宇宙人のようなぬいぐるみ

を持って、コッチを見てニヤニヤ笑っているお兄さんがいたそうです。

それが数日にわたり続いたので、次の日学校の先生に、不審者がいると伝えてほしい)と母親に相談しているのを、目撃したそうです。

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「でさ、そのニヤニヤ笑っていたお兄さんが、変死死体で見つかったらしいんだよね。」

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僕はこの話を聞いて、頭の中でこの一連の流れが繋がりかけていました。

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「なんかさ、俺の昔聞いたお兄ちゃんの話と、お前の経験したリトルグレイの話、つじつまはあってなくても、つながっていると思わない?」

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友達が冗談で言っているのか、真剣に言っているのか、わからない表情で言いました。

確かにつじつまは合わないが繋がっている部分はあります。

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公園でニヤニヤしていたお兄さんが、砂場で変死死体として見つかったこと。

そのお兄さんがもっていた宇宙人の人形と僕が見たリトルグレイ。

リトルグレイの声も、男性の声だった。

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あと、わからないのが、僕の服と髪の毛についていた、汚い米と塩の存在でした。

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「なんで砂場で変死して死んだのだろうか・・・。

誰が、砂場に埋めたのだろう・・・。まさか自ら・・・。」

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「お前、ひとりかくれんぼって知ってる?」

友達が言いました。

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「ぬいぐるみに、米や塩水などを入れて、人形とかくれんぼをするんだよ。

この米と塩って、なんか関係あるのかな?」

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はっきり言って僕には事の真相はわかりません。

みなさんも好奇心で危険な場所に行かないようにしてください。

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あとは、公園の砂場で人が亡くなっているのにも関わらず、この悲惨な事件をネタにしてしまっている僕と友達は、最低な人間です。皆さんも人の命を冒とくするような行為はやめましょう。絶対に。

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