性風俗店で働いている友人Rから聞いた話です。
性風俗店というのはいわゆるいかがわしいお店ですが、
オバケ的なものにかなり遭遇しやすい場所だそうです。
勝手に水が出たり(店舗型の店の場合、接客する部屋にはお風呂やシャワーがついている)、テレビの電源がついたり、物がひとりでに動く、
ということは日常茶飯事で、慣れてしまえばたいして驚くこともないそうですが、お店や部屋によってはその程度ではすまないこともあるようです。
ちなみに友人Rは霊感はなく、風俗の仕事をはじめるまで霊的な体験をしたこともありませんでした。
・
①
Rが連れ出し型のお店(女の子たちがいる部屋を客がマジックミラーごしに見て、気に入った女の子を食事などに誘うタイプの店)で働いていた時のこと。
指名客から
「さっきの部屋さ、実はマジックミラーじゃなくてこっち側見えてんの?」
と聞かれた。
女の子の部屋と客の部屋の境目は確かにマジックミラーで女の子から客側のエリアは見えない。物音でなんとなく女の子を物色している客がいるのがわかることもあるが、あまり気にしない。
そのように客に答えると
「ずっとこっち見てる女の子いたんだよね。目があったし。他の女の子は雑誌読んだり携帯さわったりしてるのに。三つ編みの気持ち悪い子。」
そもそも三つ編みの女の子などその店で見たことがなかった。
・
同じことを言う客がもう一人いて、気持ち悪くてその店は辞めたらしい。
・
②
店舗型の店では、朝早くから勤務の場合は前日の夜から接客用の部屋に泊まることも可能なので、
Rが店のベッドで寝ていたところ、どこからか赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
最初は訳アリの同僚が子供を連れてきているのだろう、と思っていたが、
いつまでも泣き止まないので、店員に文句を言いに行ったところ、
その日は店員一人と女の子4人が泊まっていたが、子連れの者はいなかった。
店員も泣き声を確認し、女の子達を起こして泣き声の発生源を探すことになり、
Rの隣の部屋に入ると、その部屋の女の子が金縛りにあって動けなくなっていた。
「どうしたの?」
と問いかけても返事はなく、目から涙を流し、目だけは動くので視線は合うが、
目以外が動かせず全身硬直していた。
目で何かを伝えようとして必死に視線を動かしているが、何を伝えたいのかわからない。
Rがその女の子を抱き起こすと金縛りが解けて、声を上げて泣き出し、同時に赤ちゃんの泣き声は止まった。
・
その女の子によると、
ベッドで横になっていたところ(眠ってはいない)突然金縛りにあい、目だけしか動かなくなった、
体を冷たいものに触られている感覚があり、心の中で「やめて!どっかいって!」
と叫ぶと赤ちゃんの泣き声が始まり、天井の一部から髪の毛のような黒い毛の束がゆっくり垂れ下がってきて、
重力に従ってまっすぐ下に垂れるのではなく、その女の子の方に斜めに向かってきていたので
すごく怖かったが、その時店員とRが部屋に入ってきた、
髪の毛の事を伝えようとしたが声が出なかった、
金縛りが解ける時に髪の毛は、ヒュッと天井にひっこみ、赤ちゃんの泣き声が止まった。
・
Rには天井から垂れる髪の毛は見えなかったが一緒にいた店員には見えていたらしく、その店員と金縛りの女の子はその日で店を辞めてしまったそうです。
過去にその店で赤ちゃん関連の何かがあった、などは特にないらしい。
・
③
Rと仲のいい先輩風俗嬢が体験した話。
客がいない時間は、待機、といって部屋で一人自由にしているが、
待機中にドアをコンコンとノックする音があり、客が来た場合は必ず事前に受付から電話連絡があるので、
店員が来たのかと思いドアを開けたら誰もいなかった。
気のせいかと思ったが、それから誰かに見られているような気持ち悪い感じがするようになり、
怖かったので母親に電話して話していたところ電話ごしの母親から
「なんかアンタの声、いつもと違うね、モザイクの声みたい」
と言われた(テレビでモザイクをかけられている人の変音した声)。
床板がきしむようなパキパキといった音もしてきて
さらに怖くなったが、ちょうどその時に客から指名が入ったと受付から連絡があり、客が入ってきた。
客は品の良いおじいさんだったが、部屋に入るなり部屋全体を見まわして
「あ、、、あぁ。これは、あかんやつや」
と言って、入口から部屋の中に入ってこない。その客は霊感のあるおじいさんだったらしく、それまでの経緯を話すと
「いま2体死霊がいてんねん、ここ」
と言い残し、何もせずに帰ってしまった。
見えたものの詳細は話してくれなかった。
彼女も慌てて部屋から逃げ出し店員に事情を説明したところ、その部屋はそういうことが頻繁に起こる部屋で、数日前に別の風俗嬢がその部屋で待機中に、急に死にたくなってリストカットしたらしい(死んではいない)。
風俗業界では嬢の自傷行為は珍しくないが、その女の子はベテランで、もともとそういう行動をする女の子ではなく、お店でやる、というのも滅多にないことらしい。
・
生きてる人間の怖い話もたくさんあるそうだが、ここではオバケ系のもののみ記す。
作者OD