『駄々っ子垂仁』
~国技の誕生と永遠の命~
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いろいろあった垂仁天皇は、暇つぶしにケンカを見るのが好きでした。
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その辺は、現在の格闘技を観戦する感じと変わりません。
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当時の大和(やまと=倭は国全体を指し、大和は今の奈良県あたりを指す)で無敗を誇っていたのは、
當麻蹴速(たいまのけはや 以下、蹴速)というゴリラみたいなゴリラ(語弊)…ではなく、人間でした。
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大和のヒクソン・グレイシーこと、蹴速がその圧倒的な強さから、
蹴速「どうせなら、命を賭けた勝負がしたいでごわす!」
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なんて調子こいたことを言ったのを憎らしく思った垂仁天皇は、
蹴速打倒のためにあちこちから強者を呼び寄せます。
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蹴速自身には何の怨みもないのにです。
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そんな中で招かれた挑戦者は、出雲の人食い虎(勝手なイメージ)こと、野見宿禰(のみのすくね 以下、宿禰)です。
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垂仁天皇「宿禰さん!殺っちゃってくださいよ!」
宿禰「いいんですか?マジで殺しちゃいますよ?」
垂仁天皇「いいからいいから♪」
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かくして、大和のヒクソンvs出雲の人食い虎の闘いのゴングが鳴りました。
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実況「さぁ、始まってしまいました世紀の一戦!
会場のこちら、大和コロシアム特設リングは熱気と興奮に包まれております!
解説の陛下!いかがでしょうか?」
垂仁天皇「そうですねぇ……
蹴速選手の強さは大和では知らない者はいませんが、
噂の宿禰選手の強さは未知ですからねぇ……。
ここは挑戦者に是非とも期待したいところです」
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この闘いを『すまひ』と言い、国技『相撲』の語源とされていますが、
今の相撲ような、相手を投げたり、転ばせたり、枠から出したり、
まわしを脱がせたりしたら優勝!
なんて生易しいものではなく、
例えるなら、キックボクシングに近いものでした。
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両者蹴り合いの中、勝負を制したのは野見宿禰。
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決まり手は脇腹を蹴っ飛ばし、倒れた蹴速の腰骨を踏み折る
『腰椎粉砕骨折』です。
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宿禰は相手の蹴速を宣言通り、蹴り殺してしまう剛脚をまざまざと見せつけてやりました。
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優勝した宿禰には、賞金と副賞として、死んだ蹴速の全財産が贈られたそうです。
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ちなみに宿禰はアメノホヒという高天原出身の神様の子孫です。
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アメノホヒは先述の大国主の国譲りの際、最初にアマテラスが差し向けた使者で、
大国主にまんまと手なずけられ、そのまま出雲に住んじゃったアマテラスの次男坊だったりします。
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また、ある日の垂仁天皇は唐突に
「あ~……死にたくねぇ」
と、漠然としたワガママを言い出します。
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このバカげたワガママを叶えるべく、真面目な部下たちが奔走し、
「常世(とこよ)の国には不死の実でお馴染みの『登岐士玖能迦玖能木実(ときじくのかくのこのみ)』が、たわわに実っている」
というマユツバな噂を耳にします。
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それを本気にした垂仁天皇は、すぐに
「誰か取ってきて」
と、これまた無茶な勅令を出します。
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そんな無茶ぶりに名乗りを挙げたのが、多遅摩毛理(タジマモリ、並び替えるとマジタモリ)です。
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タジマモリは一回聞いただけでは覚えられない名前の伝説のフルーツ『フシフシの実』的な果実を
何処にあるかもわからない常世の国に取りに出かけました。
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タジマモリが出発して数年後、いい奥さん日本一の皇后のヒバスヒメが亡くなります。
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垂仁天皇「ビバズぢゃ~ん!!
何で死んじゃっだんだよぉ!!
嫁のヒバスもいてない こんな世の中はポイズン♪だよぅ!!」
宿禰「ちょっと何言ってるのかマジでわかんないですね」
垂仁天皇「もうボク朕、永遠の命なんて要らない!」
宿禰「いや、タジマモリの苦労わぇ!!」
垂仁天皇「そう言えば、そんなのもいたね……最近見ないけど、アイツ今、何してる?」
宿禰「あんたが不死の実を取らせに常世の国へ行かせとるんやろがぇ!!」
垂仁天皇「そんな時代もあったね」
宿禰「いい加減にしろよマジで?……蹴り殺すぞ?」
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そして、ヒバスヒメの陵(みささぎ=天皇、皇后のお墓)を作らせている時、
建設工事を観察していた垂仁天皇の目に、何人もの人が生きたまま埋められそうになっている現場が映りました。
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垂仁天皇「ちょいちょい!
何してんの?!」
現場監督「何ってオメェ……人柱だで」
垂仁天皇「もうボク朕の目の前で誰かが死ぬのなんか見たくない!
すぐにやめろ!!直ちにだ!!」
現場監督「そったらごど言われだって、それが決まりだんべよ?」
垂仁天皇「宿禰!アイツを蹴り殺せ!」
宿禰「あんた、カッコいいこと言った舌の根も乾かない内に、目の前で人を殺せってか?」
垂仁天皇「じゃあ、何とかしてよぅ!宿えも~ん!!」
宿禰「コイツ、めんどくせぇな!!」
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ここで宿禰は、人間の代わりに土でこしらえた人形の『埴輪(はにわ)』を一緒に埋葬することを提案しました。
宿禰の機転のお陰で、ヒバスヒメの古墳以降、人柱という悪しき風習はなくなったのだそうです。
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肝心の垂仁天皇ですが、タジマモリが常世の国を探し出して不死の実を携えて帰ってくる10年の間に、
しれっと崩御(ほうぎょ=天皇が黄泉の国へ逝ってしまうこと)されました。
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散々苦労したかいもなかったタジマモリは、実のついた枝8本、葉のついた枝8本の半分ずつを垂仁天皇とヒバスヒメの陵に備えると、
悲しみの咆哮を上げ、その場で亡くなりました。
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ちなみに、垂仁天皇の崩御の時の年齢は御年153歳でした。
充分生き過ぎです。
続く?
作者ろっこめ
間に合った!!
(自分で勝手に締切を決めていくスタイル)
これにて、垂仁天皇の時代は終わりになります。
長かった……。
次回は皆さんご存知、あの方の登場です!!
中巻もだいぶ進みました♪
これも一重に読んでくださっている皆さまのおかげです!!
読んでくださるだけでもありがたいのに、ポイントや感想コメントまでいただけて、わたしのモチベーションの支えになっております!!
この場をお借りして、厚く御礼申し上げます!!
これからもよろしくお願いいたします!!