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短編1
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風呂に関する短い話 五

信宏さんは、ある有名な廃病院へ肝試しにいったことがある。

数人で探索中、患者用の浴室へ足を踏み入れた。

いくつかある浴槽を懐中電灯で順に照らしていくと、たったひとつだけ黒々とした水が入ったままのものがある。

《なにか、恐ろしいものが沈んでいるのでは?》

信宏さん達は盛り上がった。

当然、水を抜き底に何があるか確認すべきだという話になり。

ジャンケンで負けた信宏さんが、手を入れ栓を抜く。

渦を巻いてみるみるうちに水位は減っていき、緊張しつつ見守った。

底には枯れ葉やタバコの吸殻、古雑誌などのゴミが沈んでいただけであった。

その後も探索を続けたが、何も特筆すべき現象は起きなかった。

肝試しを終え、帰宅した信宏さんは驚愕する。

六畳の自室が、水浸しなのだ。

雨漏りでもなければ、上階からの浸水でもない。

ただの水ではなく、黒い泥やカビが混じったような汚水で、枯れ葉やタバコの吸殻が散乱している。

机の上に放置していたコーヒーカップの中に三センチほど汚水が溜まっており、雑誌の切れ端のような紙片も入っていた。

《あの水》が天井から降り注いだとしか考えられなかった。

信宏さんはそれ以来、肝試しと名のつくものに参加していない。

Concrete
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