警官の芳川さんが関わった事件。
駅のホームに滑り込んでくる電車を待機中、突然背中から線路へ押され死亡した男性がいた。
加害者は、国名は伏せるが外国の人間である。互いに面識はなく、前後にトラブルもなかった。
動機については《着ていたシャツ》だと答えた。
被害者は外国の言葉がたくさんプリントされたシャツを身に付けていたのだが、その意味は加害者の信仰していた宗教を侮辱するような文面だったのだ。
さらに《地獄に堕ちた者》として人名も並んでいたのだが、その中に亡くなったばかりの母親と一致する名前が偶然あったのだという。
加害者がそれを理解していたかどうかは不明だ。
事件は許されることではないが、
《この国の人間はあまりにも外国の言葉の扱い、信仰に対して無神経である》
と芳川さんは言った。
そのシャツは個人製作のものらしく、現在もネット等で販売中であることが確認できている。製作者へ連絡を試みたものの繋がらず、未だに返答はないそうだ。
作者退会会員